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"空飛ぶクルマ"の誕生

Automotive Newsletter Vol.33 (2019/02)

「空の移動」が実現してから100年以上の時が経った今、近・中距離移動の選択肢のひとつとして、 “空飛ぶクルマ”が注目を浴びている。本稿では“空飛ぶクルマ”の実現に向けた技術的課題、社会的課題を分析し、その誕生による世の中の変化や新たに生まれるビジネスについて考察する。(Automotive Newsletter Vol.33)

はじめに

1903年ライト兄弟により誕生した固定翼機は、第一次世界大戦での実用化を経て1960年頃まで「より速く・より遠くへ」と改良が重ねられてきた。「空の移動」が実現してから100年以上の時が経った今、近・中距離移動の選択肢のひとつとして、 “空飛ぶクルマ”が注目を浴びている。従来限定された用途にのみ活用されていた「空の移動」が大衆化されると、生活者の近・中距離の移動の選択肢のひとつになることだろう。

本稿では“空飛ぶクルマ”の実現に向けた技術的課題、社会的課題を分析し、その誕生による世の中の変化や新たに生まれるビジネスについて考察する。

 

“空飛ぶクルマ”とは

現在開発されている“空飛ぶクルマ”は、空の移動の大衆化を阻む、高コスト、低効率性の2つの障壁を解決するポテンシャルを有していると考えられる。

 

空の移動の大衆化による人流/物流の変化

現在の移動は、ヒト・モノの移動量が多い“線”を中心に設計されており、そのため既存インフラへの集中により人流・物流の滞留が生まれ、駅や道路の混雑が現出してしまっている。また、離島等へ移動する際、目的地へ到達するためにいくつもの移動手段を経由しなければならない。“空飛ぶクルマ”が実現することで、出発地から目的地まで既存インフラに依存することなく移動が可能となり、移動はより直線的・シームレスなものになることが期待される。

 

“空飛ぶクルマ”実現の障壁

“空飛ぶクルマ”の実現は容易ではなく、多くの障壁が存在する。

① 技術的課題:電動化、自律化

② 制度的課題:製造/整備における耐空性保証、航空管制

③ パブリックアクセプタンス:特に日本における安全性への懸念の高さ

 

空の移動の大衆化による新たなビジネスの創成

ヒト・モノの流れが変化することにより、ヒトの価値観にも変化が現れる。“空飛ぶクルマ”は既存インフラに依存しないため、どこであっても交通利便性を確保することができる。現在価値が高いとされている鉄道駅周辺等の地域の価値が下がる可能性を秘めている一方で、鉄道駅から遠い、道路整備が追い付いていない等の価値が低いとされる地域がヒト・モノの集積地になる可能性すらある。“空飛ぶクルマ”が実現すれば、既存ビジネスが拡張されるだけでなく特有のビジネスも創出されるだろう。

 

“空飛ぶクルマ”の誕生は自動車産業が構築されて以来約100年振りの新しいモビリティの誕生となる。そして、これは人々の生活様態を大きく変革する。「どのようなビジネス」を展開し、「どのようにマネタイズ」していくか、始まっていないからこそ検討する価値があるのである。

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