最新動向/市場予測

欧州におけるモビリティサービス動向

Automotive Newsletter Vol.31 (2018/08)

自動車産業が「100年に一度の大変革」を迎える中、自動車発祥の地である欧州も、米国や中国とは異なる形で変革を迎えている。 本稿では、欧州におけるモビリティサービスの成り立ちと近年のトレンドに焦点を当て、その中で日系企業がとるべき戦略を考察する。(Automotive Newsletter Vol.31)

はじめに

自動車産業が「100年に一度の大変革」を迎える中、自動車発祥の地である欧州でも、テクノロジー企業が変革を後押しする米国や、政府主導で電動化・AI開発を進める中国とは異なる形で、変革を迎えようとしている。

本稿では、欧州におけるモビリティサービスの成り立ちと近年のトレンドに焦点を当て、その中で日系企業がとるべき戦略を考察する。

 

欧州におけるモビリティの成り立ち 

欧州では従前より個人がクルマを「所有」せずに、「利用」するケースが多く見られる。企業においても同じであり、近年車両を「所有」せずにリースで従業員にモビリティを提供するケースが増加している。これにより、企業は大量の車両資産を保有することがなくなりキャッシュフローを改善することができ、中古車価格の下落による資産の減損を防ぎ、より安定した車両管理をすることが可能となった。また、資産としての車両管理にとどまらず、運用上の管理まで請け負うオペレーションリース企業が台頭するなど、クルマのコネクテッド化に伴う新たなビジネスモデルが生まれている。

 

モビリティサービスの進展とメーカー参入

2000年代から2010年代にかけ、他の先進国同様に欧州でもモビリティの多様化が起こった。従来型の移動手段に加え、カーシェアリング・ライドシェア・タクシー配車サービスなど人々の様々な移動ニーズに合わせたサービスが大・中規模都市を中心に開発・展開されてきた。近年、インフラ的側面もあるモビリティサービスは、国や都市による消費者ニーズ、事業者や行政の思惑も大きく異なり、結果として発展するモビリティも特徴あるものとなっている。

また、事業者の視点では、これまでのレンタカー、タクシーがモビリティの中心であった時代には車両の供給者に徹していた自動車メーカーが、新しいモビリティサービスに積極的に投資・事業運営に乗り出しているのである。

 

パワトレの変化とモビリティの影響

2016年に発覚した欧州メーカーによるディーゼル不正問題は、欧州のモビリティにも大きな影響を与えた。今後、多くの都市でディーゼル車の乗り入れ規制が実施される可能性がある。これまで資産と考えていたクルマがむしろ負債になってしまうことに人々が気付き始めているのである。これは「所有から利用」の流れを後押しするだろう。

 

自動運転とモビリティサービスの変化

モビリティサービスの将来を考える上で、欠かせない技術は自動運転だ。しかし、全てのクルマが全ての道路で自動運転可能となるのはまだ先の将来で、そこに辿り着くタイミングや、辿り着くまでにどのようなモビリティ体系を経るかは都市ごとに異なる。ヒトによる運転の難易度が高い道路構造は、自動運転にとっても実現の難易度が高くなる。欧州はクルマが発明される前からの歴史ある都市が多く、かつ城を中心に放射状に都市設計が行われた城塞都市であるため、道路が入り組み道路幅も一定でないことが多い。この道路事情により、欧州の完全自動運転化は米国に比べると遅いタイミングで実現するだろう。

このような環境下、欧州自動車メーカーはカーシェアリングサービスに投資を続け、自動運転時代に回収するしたたかな戦略を取っている。メーカー間で「協調領域」と「競争領域」を明確にしフレネミーの関係性を築いているのだ。

 

日系企業への示唆

自動車メーカー各社にとって、サービス業への変革は容易ではない。ましてや母国である日本や、日本車が高いシェアを誇る東南アジア・米国などとは異なり、プレゼンスの低い欧州となると、さらに壁が高くなる。しかし、欧州でのモビリティサービス事業への進出・参画に足踏みすることは想定以上のリスクを生みかねない。

 

欧州におけるモビリティサービス事業の覇権をめぐる戦いはまだ始まったばかりである。これまでの自動車製造・販売で築かれた各社のポジショニングを一変させる可能性を持ったビジネスの最前線である欧州で、日系企業の奮闘に期待したい。

 

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