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「水素元年」からの挑戦

Automotive Newsletter Vol.22 (2015/3) 

新エネルギーとして注目を集める水素。今後日本では水素社会の成立に向けた取り組みが本格化していくだろう。「水素元年」である2015年を皮切りに、日本として水素社会の「拡大」と「進化」という容易ではないチャレンジにいかに取り組むべきか、そしてそのチャレンジがどのような実を結ぶことが期待できるのかを論及する。(Automotive Newsletter Vol.22 2015/3)

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2015年は日本の「水素元年」

新エネルギーとして注目を集める水素。様々な場所でつくられる水素が、様々な場所でエネルギーとして利用される「水素社会」。日本では、水素社会を構成するコア技術である水素・燃料電池について、1974 年のサンシャイン計画から現在に至るまで、産官学が連携しながら、研究開発・実証に取り組んできた。2015年には、「MIRAI」の納車が開始され、1月15日には首相官邸にてMIRAI納車式が実施された。2015年度には、本田技研工業もFCVの量産販売を開始する見通しだ。2014年を通じて各プレイヤーより打ち出された方針に基づき、2015年を「水素元年」として、今後日本では水素社会の成立に向けた取り組みが本格化していくことだろう。
今号では、「水素元年」である2015年を皮切りに、日本としていかなるチャレンジに取り組むべきか、そしてそのチャレンジがどのような実を結ぶことが期待できるかを論及する。

チャレンジの方向性

2015年を皮切りに日本として取り組むべきチャレンジには、水素社会の「拡大」と「進化」、2つの方向性がある。我々は、いずれかを優先するのではなく、2015年から同時並行で双方を追求していく必要があると考える。
水素社会の拡大に向けたチャレンジ
・普及拡大:水素供給網及び水素用途の幅広い普及
社会需要:地域住民を巻き込んだ社会全体での水素の受容
・量産効果:普及拡大を通じた水素供給~利用製品の量産によるコスト低減
水素社会の進化に向けたチャレンジ
・低炭素化:再生可能エネルギー由来のクリーンな水素の製造割合の増加
・マルチエネ供給:水素・電力・熱を活用する、エネルギー効率よく災害に強いモデルの確立
・経済性追求:(量産効果に加え)ビジネスモデルの工夫による、経済的な持続可能性の実現

水素社会の拡大と進化、同時追及の意義

水素社会の進化に向けたチャレンジは、容易なものではなく、未だ多くの不確定要素を多く含んでいる。拡大と進化を同時に遂げ、より高次な水素社会を早期に日本に根付かせることができれば、世界の低炭素化の動きをリードすること、世界各地のエネルギー社会を強化していくことが期待できる。

世界の低炭素化の動きをリード

産業革命前からの地球全体の平均気温上昇が2度を超えると、地球環境に壊滅的かつ不可逆的なダメージを与えるという「ティッピング・ポイント」にかかる認識は、世界のコンセンサスとなっている。国際社会は、CO2削減に向けて本格的に動き始めている。温暖化対策の実現策のひとつとして、水素に対する期待も高まりつつある。再生可能エネルギーとの連携を含め、低炭素化に寄与する水素社会モデルを日本でいち早く実現することができれば、そのモデルの横展開を通じて、今後本格化が予想される世界の低炭素化の動きを日本がリードすることが期待できる。

世界各地のエネルギー社会を強化

世界のエネルギー事情はそれぞれに課題やチャンスを抱えており、それらに対し、高次な水素社会はソリューションとなることが期待できる。日本の水素社会が環境にやさしく、頑強で、経済的にも自立可能な高次な水素社会として早期に進化を遂げ、世界に発信されれば、水素社会パッケージを輸出する新しい産業を日本に創出する機会となることが期待できる。

おわりに

拡大と進化の同時追求は、容易ではないチャレンジである。水素社会に関係するプレイヤーでも、多くがその非現実性を根拠に同時追求という方向性を否定することだろう。
2020年には、東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。世界中の人々から注目が集まるこのタイミングを“ショールーム”として、日本のすばらしい水素社会を世界に拡げるべく、東京はもちろん日本中の様々な地域で、水素社会の拡大と進化に向けた、産官学連携によるイノベーションが繰り広げられることが望まれる。
しかし、2020年はゴールではない。水素社会成立に向けた取り組みは、将来の持続的な社会と経済の両立と、日本企業・日本産業の持続的な成長というゴールに向けた、長い道のりとなる。

2015年「水素元年」を皮切りに、五輪そしてその先に向かい、水素への取り組みが継続的かつ活発に展開されることを期待したい。

 

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