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インドネシア新政権が担う未来

Automotive Newsletter Vol.19 (2014/11)

2014年10月20日、インドネシアで10年ぶりに政権交代が行われ、ジョコ・ウィドド氏が新大統領に就任した。 スハルト独裁政権との繋がりがない初の大統領の指揮下、これまで著しい経済成長を成し遂げてきたインドネシアはこのまま成長路線を維持できるのか。 今後のインドネシア経済を展望し、自動車市場・産業の行方と日系企業がとるべき施策を考察する。(Automotive Newsletter Vol.19)

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新政権下のインドネシア自動車業界

2014年10月20日、インドネシアで10年ぶりに政権交代が行われジョコ・ウィドド氏が新大統領に就任した。スハルト独裁政権との繋がりがない初の大統領の指揮下、これまで著しい経済成長を成し遂げてきたインドネシアはこのまま成長路線を維持できるのか。今後のインドネシア経済を展望し、自動車市場・産業の行方と日系企業がとるべき施策を考察する。

インドネシア経済の概況

2004年から続いたユドヨノ前政権下で、インドネシア経済は目覚しい発展を遂げた。2013年のGDPは、8,680億ドルとなり、2009年に比べ1.6倍に成長した。これは、世界でも16番目に大きく、タイの約2.5倍の規模である。この経済成長を牽引するのは、中間層の拡大に伴う個人消費の増加である。
また、ここ数年間の急速な経済成長はFDIの増加にも表れており、2010年から2013年にかけ、インドネシアへのFDIは162億米ドルから286億米ドルまで76%増加している。特に、日本からの投資は同期間で約7倍になっており、2013年にはインドネシアへの最大投資国となっている。産業別に見ると、自動車産業や他輸送機器産業への投資が僅か4年間で10倍近くに拡大しており、経済の原動力が、従来の農産業や鉱業などの一次産業から、製造業を中心とする二次産業にシフトしていることが窺える。

自動車市場動向

自動車市場は、経済成長を上回る勢いの成長を見せている。2011年に、モータリゼーション到来の基準とされる一人当たりGDP3,000ドルを突破しており、二輪車から四輪車への乗り換え需要が市場拡大の起爆剤となっている。
商品動向
インドネシア政府は、2013年5月にLCGC(Low Cost Green Car)に対する税制優遇制度を打ち出し、政策発表に合わせて各社は相次ぎ新モデルを発表、自動車販売を加速させている。また、大家族世帯の多いインドネシアではMPVセグメントも市場を牽引している。
生産動向
好調な国内市場を背景に、日系メーカーが工場を増設したのに加え、欧米系メーカーも工場を新設している。また、OEM各社の能増に伴いサプライヤーも進出を加速、一次部品の現産化は拡大しつつある。今後、競争力のある生産・輸出拠点として成長していくためには、 低い水準に留まっている二次、三次部品の現調率を引き上げることが鍵となる。

新政権下の課題

新政権は、2019年までにGDP成長率7%を達成することを目標としており、今後の成長に強気な姿勢である。しかし、これまで先延ばしされてきた燃料補助金の削減やインフラ整備などの課題が、ボトルネックとして露呈し始めている。今後の経済成長の条件となる4つの課題について分析し、自動車市場・産業への影響を検証する。
1. 燃料補助金の削減
新大統領が就任後にまず取り組むと宣言している最重要課題が、燃料補助金の削減である。政府の補助金により、従来からガソリンとディーゼルが市場価格よりも大幅に低い値段で販売されてきたが、自動車保有台数の増加や国際石油価格の変動に伴い、補助金が維持できなくなっており燃料価格の値上げは不可避である。
2. 交通インフラ整備
自動車保有台数の増加により、世界で最もひどいとも言われるジャカルタの道路渋滞は悪化の一途を辿っている。これに対し、州知事時代にインフラ整備の実績があるジョコウィ大統領だけに、道路や公共交通機関の整備に注力すると見られる。その一方で、車両の通行規制や増税などの手段に頼らざるを得ないことも予想され、自動車販売の減速要因となることが懸念される。
3. ルピア相場の安定化
経済成長に伴う輸入の増加、輸出の大部分を占める資源価格の下落の影響により、ルピアは米ドルに対し2-3年前の水準から2-3割安くなっている。依然として多くの部品を輸入に頼っているインドネシア自動車産業において、今後ルピア安が進めばサプライヤーの経営が圧迫され、撤退を余儀なくされる可能性も拭いきれない。
4. 労務制度の近代化
ジャカルタやその近郊では、2012年から2013年にかけ最低賃金が最大50%以上引き上げられ、2014年には更に上昇している。新政権は、最低賃金の設定における中央政府の権限を強める他、非正規雇用者の採用条件などを明確化する方針と見られる。但し、重要な決定に先立ち、政府・民間・労働組合の三者間協議が徹底されなければ、賃金上昇や雇用制度の厳格化が自動車メーカー、特に中小サプライヤーの採算性リスク拡大に繋がる可能性も否定できない。

日系企業が取るべき施策

長期目線では自動車市場・産業の拡大が確実視される一方、直近では、新政権の政策運営次第で成長のスピードや達成度が変わってくるであろう。インドネシア事業の安定的な成長を実現するために、日系企業が取るべき三つの施策について考察する。
1. バリューチェーン事業の拡大
市場成長の鈍化と競争激化により、新車事業で利益を稼ぐことがより難しくなる中、メーカー各社は、バリューチェーン事業を拡大することにより、安定した収益を上げる仕組みを模索している。中でも注目を浴びているのが、中古車事業や補給部品・アフターサービス事業である。しかし、これらの事業領域には一部外資規制が設けられているため、日系メーカーは現地パートナーと協業し参入の仕方などを慎重に検討することが必要である。
2. 現地経営体質の強化
グローバル事業におけるインドネシアの重要性が増す中、現地のニーズに見合った商品開発や、現場の事情を十分に反映したオペレーション品質の向上などが求められている。そのためには、日本本社の事情にも精通した現地の経営者を育成することが重要である。また、日系メーカー目線で経営の現地化を図るためには、パートナー企業との協業体制を強化することも重要である。
3. 渉外機能の強化
政権交代に伴い政策の不透明感が増す中、各社のインドネシア事業がグローバルの収益や他国事業に与える影響は大きくなっており、企業や業界としての意見を政府に漏れなくインプットすることが益々重要視されている。つまり、自社の事業戦略に基づいたマネジメント層主導の能動的な渉外活動が必要となるため、影響力が大きい省庁に人を張り付け、最新の政策動向を随時キャッチできる仕組みを構築することが必要である。

おわりに

ジョコウィ大統領には、国内外から絶大な期待が寄せられているが、新政権が歩む道のりは、決して平坦なものでは無いだろう。日系企業にとっても、1万3千以上の島々から成り、文化的・宗教的にも極めて多様な市場を攻略することは一筋縄ではいかない。しかし40年以上も前から投資を続けてきたからこそ、現在の地位を築けていると言える。

欧米や韓国系企業もインドネシアでの活路を探る中、今後の勝ち残りをかけたメーカー間の攻防に注目したい。

 

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