最新動向/市場予測

自動車部品メーカーのM&A動向

Automotive Newsletter Vol.21 (2015/2) 

2014年後半、独ZFによる米TRWの買収や、トヨタによるグループサプライヤーの再編が報道された。自動車産業を取り巻く環境は劇的な変化を続ける中、日系自動車部品メーカーの視点から近年のM&A動向を検証し、今後の産業全体の潮流を踏まえ生き残りに向けた示唆を提示する。(Automotive Newsletter Vol.21 2015/2)

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M&Aのすゝめ

昨今の自動車業界を取り巻く競争環境は劇的に変化し続けている。2014年後半には、独ZFによる米TRWの買収や、トヨタによるグループサプライヤーの再編が報道されている。本稿では、日系自動車部品メーカーの視点から、近年のM&A動向を検証した上で、今後の自動車産業全体の潮流を踏まえ、生き残りに向けた示唆を提示したい。

自動車部品業界におけるM&A動向

2005年~2014年の過去10年間、自動車部品メーカーが関わったM&A案件約3,600件について、「案件数」、「取引参加者」、「案件規模」の観点から動向を整理する。

M&A案件数の推移

グローバルでの自動車部品業界におけるM&Aは年間平均約372件であり、リーマンショック後に一旦落ち込んだものの、現在に至るまで回復・増加傾向にある。

取引参加者の内訳

欧米を中心とした先進国企業が自動車部品業界のM&Aを牽引している一方で、買い手、売り手、ターゲットのいずれにおいても新興国企業の占める割合が増加傾向にあり、自動車部品業界において新興国企業が競争力を増していることの証左と捉えられる。
取引参加者の内訳を業種別に見ると、部品メーカーが主役となるM&Aが全体の4割超を占めており、また増加率を見ても堅調に伸長していることから、自動車部品メーカーが異業種メーカーや部材メーカーにまで触手を伸ばし、自動車部品業界におけるM&A市場を牽引していると言える。

M&A案件の規模

案件規模は、超大型案件と小型案件で2極化している。自動車部品業界においてはM&Aが成熟しており、一部事業の買収や、特定の技術・新興国の成長企業の獲得を狙った小規模取引等が主流となっていることが推察される。

自動車部品業界のM&Aトレンド

近年の自動車部品業界におけるM&Aについて個別に事例を分析すると、いくつかの特徴的な案件が見られる。各案件の概要とその背景にあるトレンドを考察する。

(1) メガサプライヤー化
シェア拡大による製品のデファクトスタンダード化、事業規模拡大による開発投資余力の増強、生産規模拡大によるコスト競争力強化       

(2) 異業種企業の参入 
電機業界などの異業種企業が、自社技術を活かす成長分野として自動車部品産業に注目 

(3) 投資ファンドの関与
継続的な成長が見込まれ、複数の投資先の統合やイノベーションの活用等によるバリューアップの可能性も秘めている自動車部品業界を有望な投資先として注目 

日系自動車部品メーカーへの影響

これらのトレンドが日系自動車部品メーカーに及ぼすであろう影響を整理した。

(1) メガサプライヤー化の影響
今後の自動車メーカーによるモジュール化の推進に伴い、メガサプライヤーの競争力はさらに高まる一方で、従来の事業展開にとらわれている部品メーカ ーは市場のパイを奪われ、競争から取り残されるリスクがある。自社の目指すポジション確保に向け、企業戦略の明確化と一定レベルでの企業規模の確保が求められる。

(2) 異業種企業の参入の影響 
競合プレイヤーが増え技術革新も進む中で、自社が競争力を獲得・維持するためには、いち早く魅力的な製品領域に参入し、シェアを確保することが求められる。

(3) 投資ファンドの関与の影響
株式持合いや早期の身売りも含めて、投資ファンドによる「望まない被買収」を回避する方策を検討することが求められる。一方で、あらかじめ投資方針を定めている企業にとっては、自社の求める企業(事業)を適時適切な市場価値で手に入れるチャンスが増えると言える。

自動車部品業界の今後の潮流 

自動車部品業界における今後の潮流について、ユーザー(最終消費者)・市場、自動車メーカー(顧客)、自動車部品メーカー(自社・競合他社)の軸で整理した。自動車部品メーカー各社は自社の乗るべき潮流をしっかりと見定めた上で、限られた経営資源を集中投下することが、競争力を維持・強化していくための秘訣である。自社の目指すべき方向への歩みを加速し、「非連続な成長」を可能とするM&Aは、企業戦略上、極めて有効な選択肢の一つと言える。

ユーザー・市場を取り巻く4つの潮流
1. 新興国市場の急拡大
2. 次世代環境車普及に向けた兆し
3. 安全性能への社会的ニーズの高まり
4. コネクティビティへの消費者ニーズの高まり 

自動車メーカーを取り巻く4つの潮流
5. 新興国市場獲得競争の熾烈化
6. 次世代環境車開発・普及競争の本格化
7. 新しい都市型モビリティの本格普及
8. 自動運転・IoT技術の獲得に向けた新たなパートナーとの連携強化

自動車部品メーカーを取り巻く4つの潮流
9. 新興国サプライヤーとの競争本格化
10. モジュールサプライヤー化の更なる進展
11. メガサプライヤー化の更なる進展
12. 製品視点での企業戦略の再構築

『M&Aのすゝめ』

M&Aの効果は、事業領域や顧客網の拡大、技術や製品補完といった「目に見える」効果に留まらない。「時間を買う」ことによる機動的かつ大胆な企業運営は、今まで以上に重要となる。

日系メーカーが、自動車部品業界において今後も引き続きリーディングポジションを維持・獲得することを期待したい。

 

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