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最新動向/市場予測
MaaS参入への挑戦
Automotive Newsletter Vol.29 (2017/11)
MaaS(Mobility as a Service)は、従来のバリューチェーンに多大な影響を与え、近年では完成車メーカーを中心に自動車産業からの参入も相次いでいる。本稿では競合プレイヤーの参入動向や事業性を中心にしたマーケット概要に加え、MaaSに取組む意義など、後発の日系企業が取るべき戦略の方向性を考察する。(Automotive Newsletter Vol.29)
はじめに
ライドシェアリング事業の急速な普及拡大に伴いMaaS(Mobility as a Service)が注目されている。MaaSは新車販売を中心に従来のバリューチェーンに多大な影響を与えると見られ、近年では完成車メーカーを中心に自動車産業からの参入も相次いでいる。
本稿では、当該領域において後発の日系企業がいかにMaaSに関わっていくべきなのか、参入戦略に焦点を当て、競合プレイヤーの参入動向や事業性を中心にしたマーケット概要に加え、MaaSに取組む意義を明確にし、日系企業が取るべき戦略の方向性を考察する。
MaaSを取り巻く概況
近年、MaaS市場全体は急速に拡大している一方で、地域視点ではサービス展開状況はバラつきがある。また、“シェアリングサービス”と一言で括られがちなMaaSではあるが、そのサービス内容は多岐に渡る。日本では主流のカーシェアリングも、ASEANや南米、アフリカ等の新興国では現状ほぼ見られない。「移動」というその地域に根付くものを扱うが故、MaaSを読み解き参入をする際には地域視点は欠かすことが出来ない。
自動車業界への影響
自動車産業はヒトの生活の根幹たる「移動」の主だったが、昨今のMaaSの拡大により、クルマの所有を前提とした「移動」の多くを担っていた自動車産業の優位性がIT企業等の新興プレイヤーに奪われる可能性が出てきている。加えて、デジタルネイティブ層の増加により「クルマ離れ」と「移動離れ」が生じているのである。
世界的に環境が著しく変化し、企業の従来のビジネスモデルに変革が訪れる中、自動車産業はクルマの「ハードの価値」から「移動価値」の創出を主として手を打つ必要が出てきている。
各プレイヤーの参入動向
MaaS領域において、欧米自動車産業は日本に先駆け、M&Aや提携によるサービスラインナップの拡充・展開、自社ブランドの立上げ等に加え、専門組織を構築して従来とは異なる専門人材を獲得しMaaSを提供する基盤作りも進めている。
MaaSの事業性
新規収益源としてのMaaSの有望性
MaaSサービスの収益規模は非常に限定的であることから、本当に新規事業として取組む意義があるのかは今一度検討すべきであろう。既に大規模なビジネスモデルの中で動いている自動車産業としては短中期的な収益源としては取組み意義が薄いと言わざるを得ない。
MaaSのKSFと参入容易性
MaaSは都市に深く独占的な形で根差し、将来的には都市交通から街づくりの一端を担うプラットフォーム型のビジネスであるといえる。こうした背景を踏まえ、MaaS事業展開の要諦を考察する。
“稼げない”MaaS事業参入の取組み意義と戦略方向性
MaaS事業へ取組む意義
新規収益源としては簡単に見込めず、参入障壁も非常に高い中で、改めて自動車産業にとってのMaaS事業の取組み意義を整理する。
① 自社製品体験機会創出/顧客接点拡大
② MaaS向け展開による新規顧客獲得
③ SAV時代での将来的な新規収益源獲得
④ 自社の従来事業への波及効果を高める
MaaSの普及拡大に伴い、従来の自動車産業バリューチェーンに大きな変革が訪れていることは疑いの余地がなく、新規参入プレイヤーに覇権を握られるのを阻止するには、日本自動車産業としてMaaSと向き合わないわけにはいかない。しかし、その事業性と参入障壁の高さを踏まえると容易にビジネスチャンスが転がっている訳ではないのもまた事実である。