調査レポート

2016年アジアパシフィックにおける金融セクターディールの状況

金融セクターの2016 年のM&A取引件数は174件、取引金額は436億ドルと、2015年の取引金額703億ドルを大きく下回った。取引件数は10%減少、取引金額は38%減少した。

The biggest financial sector deals of the year, Asia Pacific – 2016 日本語版

マーケットアップデート

Mergermarketによると、公表された2016年のM&A取引件数は174件、取引金額は436億ドルと、2015年の取引金額703億ドルを大きく下回った。これは2015年と比較し、取引件数で21%、取引金額で43%の減少であった。アジアパシフィック全体においては、取引件数は2015年から減少したものの、M&A活動が最も盛んだった中国、韓国、タイの3ヵ国では2015年に比べて取引金額が増えた。

一方、日本における取引は、2015年の22件(総額98億ドル)から10件(総額2億4,900万ドル)に留まるなど、件数および金額がそれぞれ減少した。その背景としては、外国銀行の日本からの撤退や地銀同士の再編の一服、また、傘下のリース会社や保証会社等の子会社の再編案件数が前年と比べ減少したことが挙げられる。

2016年はマクロ環境が大きく変化したわけではなく、低いGDP成長率、低い借入コスト、企業のバランスシート上の余剰資金、内部成長よりも企業買収による成長への要求が持続している。M&Aが大幅に減少した理由は、“不確実性”であると考える。歴史的にみて、不確実性は例外なくM&Aに対してより慎重なアプローチをもたらしており、この不確実性が2016年に影響を及ぼしたと考えられる。

2016年は極端なボラティリティの年だった。中でも目を引いたのが、英国の欧州連合(EU)離脱(Brexit・ブレグジット)、南シナ海の領有権問題をめぐる仲裁裁判、北朝鮮によるミサイル発射実験、米国とフィリピンの大統領選挙、韓国での大統領弾劾訴追、首相の辞任(英国、ニュージーランド、イタリア)、ロシア・ウクライナ危機の継続、環太平洋経済連携協定(TPP)に垂れこめた暗雲、中国経済の減速の継続である。

こうしたボラティリティは世界の経済見通しにマイナスの影響を及ぼし、2015年に世界で4兆6,600億ドルを超えるM&A取引を承認した企業経営者の自信を削いでいるようだ。調査会社Dealogicによると、2016年のグローバルM&A取引総額は3兆8,400億ドルであり、前年比で18%減少している。

2017年は2016年同様、不安定な年となる可能性がある。欧州では英国がブレグジットの交渉を開始し、フランスとドイツでは総選挙が実施され、中東からの移民とテロの話題が尽きることはないと予想される。また、米国では、ドナルド・トランプ次期大統領の政策がより明確になり、米国のすべての貿易相手国、ひいては中国の貿易相手国に影響を及ぼす可能性がある。

アジアでは、不確実性によってボラティリティが引き起こされ、不確実性は予想外のイベントによって引き起こされる。当然ながらイベントを予測するのは難しい。とはいえ、北朝鮮、英国から中国に返還されて20周年の節目を迎える香港、南シナ海の領有権問題、そして言うまでもなく目下の中国の景気減速がボラティリティにつながる可能性がある。

上述のすべての要因が企業経営者の年初から向こう数ヵ月に対する自信の前に大きく立ちはだかっている。しかし、我々は、Deloitte APが発表したとおり2017年のアジアの経済観測は市場予測よりも良い年になると予想しており、2017年のディールフロー全体に関しても強気である。年末までには2015年にみられたM&Aのレベルに大きく近づくまでに回復すると予想している。

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The biggest financial sector deals of the year, Asia Pacific – 2016
~2016年アジアパシフィックにおける金融セクターディールの状況~
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