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Industry Eye 第27回 ライフサイエンス・ヘルスケア(医薬品業界)

ジェネリック医薬品業界の現状と将来展望

日本におけるジェネリック医薬品の数量シェアは2017年3月時点で66.4%であり、政府の後押しもあって医薬品市場におけるシェアは年々高まっています。他方、薬価制度に鑑みると、薬価改定が毎年実施される方針が出されており、ジェネリック医薬品の収益性は今後厳しくなることも想定されます。そこで本稿では、国内のジェネリック医薬品業界の現状と将来展望について解説します。

Ⅰ. はじめに

日本では少子高齢化、慢性疾患やがん患者の増加に伴い、医療費支出が増加の一途をたどっており、今後も増加傾向が続くと見られている。医療費を抑制するために、政府はジェネリック医薬品の普及を促進しており、日本におけるジェネリック医薬品の数量シェアは2017年3月時点で66.4%と医薬品市場全体におけるシェアは年々高まっている1

他方、医療費抑制の一環としては薬価改定も検討されており、2018年以降毎年薬価改定を実施するという方針が発表されている2。このような背景において、ジェネリック医薬品の収益性は今後厳しくなる状況も想定されるなか、本稿では日本のジェネリック医薬品業界の現状と動向について解説する。

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 日本ジェネリック製薬協会「平成28年度第3四半期ジェネリック医薬品シェア分析結果について」
日本経済新聞2016年12月20日「薬価改定を毎年実施 厚労相が改革基本方針」

 

II.日本のジェネリック医薬品市場動向

日本におけるジェネリック医薬品市場は、図表1に示すとおり2016年時点で107億米ドルとなっており、2017年以降は成長率2~3%で拡大し、2020年には120億米ドルの市場規模に達すると見込まれている。

市場が拡大する背景としては、政府がジェネリック医薬品使用促進を掲げており、2016年に発表されたMarket Lineレポートの分析(図表2)では2016年時点の数量シェアは49%と予測されていたが、実際には2017年3月には66.4%となっており前倒しで達成している。今後も、ジェネリック医薬品の数量シェアは拡大を続け、2020年には80%に達すると見込まれているが、政府は2018年度から2020年度末までのなるべく早い時期に80%以上にすることを目標としているため、ジェネリック医薬品のシェア拡大が加速する可能性が考えられる。

他方、金額シェアに注目してみると、図表2に示す通り2012年以降10%程度で推移しており、市場規模の拡大は見られていない。この状況を数量シェアが拡大していることと併せて考えると、一製品あたりの販売価格が下落していること、すなわち、収益性低下が進んでいることが示唆される。
 

図表1:国内ジェネリック医薬品市場規模の動向
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図表2:国内ジェネリック医薬品市場シェアの動向
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ジェネリック医薬品市場の成長ドライバーの一つは、新たに特許切れを迎える先発薬(長期収載医薬品)からの置き換えがどれだけ進むかということが挙げられる。しかし、2017年以降、図表3に示すように主要疾患であるオンコロジー、循環器、中枢神経系の領域において特許切れを迎える大型先発薬が減少する見込みである。すなわち、ジェネリック医薬品市場の成長ドライバーが少なくなり、市場成長が限定的になる可能性も考えられる。
 

図表3:特許切れを迎える主な先発薬
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また、2018年以降、毎年薬価改定を実施するという方針が出されており、2017年内に最終決定される見込みである。この方針では、市場実勢価格を把握するための調査は、大手医薬品卸を中心に実施するなど内容を簡素化し、薬価と実勢価格の乖離が大きい品目に限定して見直す方向で検討がなされている。この方針が決定されればという前提ではあるが、薬価と実勢価格の乖離を小さくすることによって、理論上は薬価改定を従来通り2年に1回に抑えることが可能となる。しかし、ジェネリック医薬品は価格が他社との差別化要素である場合も多く、実勢価格を下げて販売数量を確保するという価格競争が激しくなっている状況、すなわち、薬価と実勢価格の乖離が大きくなっている状況も窺える。従って、ジェネリック医薬品が毎年薬価改定の対象となる可能性は高く、今後ジェネリック医薬品の収益性確保のために業界全体として対応策を検討する必要があると考えられる。 

III. 医薬品業界再編、企業提携に関する見解

これまで述べたとおり、ジェネリック医薬品業界を取り巻く環境は、政府による政策によって数量ベースの市場は拡大するものの、金額ベースでの市場成長は停滞することが見込まれる。ジェネリック医薬品の製造には製造設備などの設備投資が必要であるが、工場稼働率を向上させることも含め「規模の経済」を生かすこと、収益性を確保するための効率的な事業展開を図る事業戦略をとる必要があり、今後企業提携や業界再編が進む可能性は考えられる。図表4に企業タイプ別の提携や再編に関する考え、提携による期待、留意点を整理した。大手企業や中堅企業は業界での勝ち組ポジションを獲得するべく、提携等を比較的積極的に検討しているものと推察される。ただし、大手企業はその対象が国内から海外にシフトしてきており、販路の拡大を図っているものと考えられる。その背景として、日本の医薬品市場は人口減少に伴っていずれ縮小傾向となることが想定され、人口では世界の2%弱に過ぎない日本市場のみを対象としていると将来先細りしていく懸念があるからである3。将来の持続的な成長を果たすためには世界最大の市場である米国、成長市場であるアジア諸国への参入、事業拡大が必要になると考えられる。このような大手企業との提携では、低コスト体制、生産体制の確立、および医薬品卸、薬局への交渉力強化が期待される。中堅企業との提携では、ニッチな領域におけるシェアの拡大や稼働に余裕がある製造設備の活用など、生産効率を向上させることが期待される。

他方、オーナー系小規模企業では、提携や再編に対する検討は現時点ではそれほど多くなされている状況ではないと推察されるが、事業を展開する拠点が近い地理的メリットを活用することなどによる提携効果が期待される。さらに、先発薬企業はジェネリック医薬品や長期収載医薬品の取り扱いについて事業整理を検討している企業もあると考えられる。先発薬メーカーとの提携効果は、ブランド力やMRの活用、品質や情報提供における高い信頼性の活用が挙げられる。

今後、企業提携や業界再編が進む可能性は十分に考えられ、薬価改定に伴うジェネリック医薬品の収益性の低下がそのトリガーの一つになり得ると推察される。

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3 日本ジェネリック製薬協会2017年「ジェネリック医薬品産業ビジョン」

 

図表4:企業連携・業界再編に対する各社の考え
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IV. ジェネリック医薬品に関する製薬会社の再編事例

ジェネリック医薬品業界では、大手企業を中心にグループ内再編や提携が行われており、図表5に大手ジェネリックメーカーのグループ内再編事例を紹介する 。このメーカーは長期収載医薬品(LLP)からジェネリック(GE)への切り替えが進むなか、研究開発の促進、供給体制の強化によりシェアの向上を目指している。そこで、まずはマイナス成長が進んでいるLLPを非連結子会社(子会社A)に移管し、収益性の改善を図っている。次に、生産体制の最適化、効率化を図るためにポートフォリオの変更を行っており、大量生産に適したGEを親会社から子会社Bに移管し、子会社Bは従来のLLPからGEにポートフォリオの変更を行っている。これらにより固定費比率3~5%の圧縮を計画しており、収益性改善を図っている。さらに、子会社Bを吸収合併することにより、生産効率のさらなる向上およびコスト削減による競争力強化を図ろうとしている。

これらの再編によって収益性を改善させ、研究開発費等の投資資金を捻出するとともに薬価改定に対する収益変動リスクに対応していく考えであると推察される。

 

図表5:大手ジェネリックメーカーのグループ内再編事例
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V. おわりに

以上のように、日本のジェネリック医薬品市場は数量シェアの拡大は見込まれるが、市場競争の激化や薬価改定の影響で金額シェアは10%程度で停滞するものと想定される。その結果、ジェネリック医薬品に係る収益性は厳しくなると推察され、収益性改善や新たな投資への資金捻出を目的とした企業再編、あるいはスケールメリットや効率性の追求を目的とした業界再編、企業提携が進む可能性があると考えられる。このような状況ではあるが、今後、国内ジェネリック医薬品企業の競争力がより高まり、国内外において種々の製品が供給され、多くの患者の治療に一層貢献することを期待したい。

執筆者


デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
ライフサイエンス・ヘルスケア担当
浦川慶史

(2017.6.23)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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