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「人を買う」M&Aの要諦~M&Aにおけるキー人材リテンションの重要性~

M&A人事 第8回

技術革新や、ビジネスのグローバル化の進展に伴い、企業経営や、事業運営の中核を担う人材に求められるスキルは多様化、かつ高度化している。世界では人材の獲得競争が激化し、優秀な人材の獲得のため、昨今では、アクハイヤー(Acqui-hire)といった、「人を買う」ことを主眼に置いた買収も増加傾向にあります。

人材を取り巻く環境の変化

昨今、多くの分野での技術革新や、ビジネスのグローバル化の進展に伴い、あらゆる産業において、企業経営や、事業運営の中核を担う人材に求められるスキルは多様化、かつ、高度化している。企業の成長を牽引する経営者にとっては、グローバルに適応するために、言語能力だけではなく、各国のビジネス環境の違い等を踏まえて事業を成長させる能力が求められ、また、研究開発部門や、各事業部門の中核人材においては、絶えず生まれる新たな技術やサービスに適応しつつ、より細分化された専門領域において、高い専門性を発揮し続けることが求められる。

しかしながら、そういった人材はいずれの国においても限られているため、世界のあらゆる場所において、人材の獲得競争が激化している。優秀な人材の獲得のため、昨今では、アクハイヤー(Acqui-hire)といった、「人を買う」ことを主眼に置いた買収も増加傾向にある。日系企業においても、典型的には、サイバーセキュリティ、AI等の領域において、このような買収を行うケースが出てきている。

人材の獲得競争が激化する中で、M&Aによって買収する企業あるいは事業の中核人材は、企業の成長を支えるために欠かせない存在である。買収を無事に完了させても、必要となる人材が外部へ流出すると、残った製品や技術を活用して事業を持続的に成長させることは難しい。M&Aを成功に導くためには他社との差別化の源泉となる人材をいかに繋ぎ止めるかが重要となる。

リテンションが重要となる背景

日系企業がクロスボーダーM&Aを行う際、買収対象となりやすい欧米企業では、雇用やビジネスを取り巻く環境が日本とは大きく異なり、日系企業が主導して事業を継続的に成長させていくことは難しく、そして、成長を牽引できる人材も少ない。また、買収企業と被買収企業の業態が異なる場合は、経営スタイルの違いがさらに顕著であることが多く、結果として、被買収企業の経営を、従来の経営幹部に引き続き委ねざるを得ない。このような状況下において、リテンション施策を検討する必要性は高いといえるが、さらに以下の5つの事情がその必要性をより顕著にする。

第一は、人材の流動性の高さである。欧米を中心とする諸外国においては、経営幹部のジョブマーケットが存在し、経営幹部層においても外部からの採用が一般的に行われているため、M&Aを機に、新たな企業の経営幹部として他社に転職することは容易に考えられる。デロイトUSのレポートによると、M&Aを契機とした経営幹部の離職率は、Day1以降、1年以内で、25%にも達し、その後2年目においても、15%となっている。これは、人材の流動性が高い米国においても、平時よりきわめて高い数値である。

第二は、取引を契機とした多額の報酬の支払の可能性である。チェンジインコントロール (CiC、経営権の移行)に伴う報酬の支払が雇用契約書に定められている(ゴールデンパラシュート)場合や、被買収企業の株式等を保有する経営幹部の場合、買収の際、多額の報酬、もしくは株式売却による現金を得ることとなる。アメリカでは、それを元手に会社を離職し、自ら新たなビジネスを始める幹部も多く存在する。このため、経営幹部やキー人材が、外部に流出しないよう、その意欲を抑制するための施策が必要となる。

第三は、プレスリリースを契機とした外部からの積極的な勧誘である。買収が公になった後、採用エージェントや競合他社等から、被買収企業の経営幹部やキー人材に対して、活発な勧誘が来ることも多い。被買収企業に引き続き残るという意思があまり強くない場合や、離職して不安定な環境に移るよりも、引き続き被買収企業に残った方が本人にメリットがあるという自信が持てない場合、人材が流出してしまうリスクは、非常に高い。

第四は、買収企業である日系企業と海外企業における企業文化、ビジネス環境の違いである。文化や環境の違いは、被買収企業の経営幹部に、買収前よりも事業運営が難しくなると捉えられることがあり、買収企業である日系企業に残ることに魅力を感じられないケースが多々ある。よくある例として、M&Aによって買収した企業に対しても、買収企業である日系企業が自ら設立した海外子会社と同様の権限を当てはめ、結果として、被買収企業の経営幹部が従来有していた予算決定権、人事権等を奪ってしまうケースがある。

第五は、今後のキャリアの展望の不透明さである。外国人経営幹部の日系企業本社への登用等が現状少ないという事実から、被買収企業の経営幹部にとっても、今後のキャリアの展望が見えづらいと感じる場合がある。

以上のような背景を理解した上で、被買収企業の人材に対するリテンション施策を検討する必要がある。

リテンション施策の検討

リテンション施策は、“誰に対して”、“どのような施策を実行するか”を検討するものである。リテンション施策を適用する必要のない人材に適用しても、買収目的を達成することにはつながらず、逆に間違ったリテンション施策を実行して、結局のところ、本人の考えと合わず、リテンション効果が望めないことがあり得る。そういった事態を避けるためにも、まず、リテンション対象者を検討、特定し、買収企業としての全体の方針を定めた上で、必要に応じて、対象者個別の施策へと落とし込むのが望ましい。以下、それぞれについて詳細に述べる。

1. 対象者の検討、特定

リテンション対象となる人材の分類によって、リテンション施策検討のポイントとなる点は異なる。以下、経営幹部、その他のキー人材、キー人材以外の一般従業員という分類でそれぞれのポイントを述べる。

  • 経営幹部
    買収企業側の人材のみで、買収後の被買収企業の経営を行うことが決定している場合以外においては、被買収企業の経営幹部は重要なリテンション対象となる。その中でも、CEOが多くの場合、もっとも重要なリテンション対象となる。それ以外の経営幹部については、全てをリテンション対象とするのか、一部とするのかをCEOと協議し、どの経営幹部(もしくは全て)をリテンション対象とするのかを決定し、個々の幹部ついて、個別にリテンション施策を検討していくのが望ましい。
    また、買収企業としても、CEOを含めた各経営幹部が、買収後の被買収企業に期待する事業成長に貢献するためにふさわしい人材なのか、経営を任せて問題がないか否か等を見極めることを目的として、バックグラウンドチェックや、インタビュー等を通じた簡易的なアセスメントを行う場合もある。ただし、アセスメントの実施が、被買収企業の経営幹部に感づかれると、経営幹部に「解雇されるかもしれない」という不安を抱かせ、外部流出リスクを高める危険性もある。実施にあたっては経営幹部の心情にも配慮しながら、慎重に進める必要がある。
  • その他のキー人材
    多くの場合においては、経営幹部以外にも、被買収企業におけるリテンション対象のキー人材が存在する可能性は高く、それらを特定した上で、必要なリテンション施策を検討する必要がある。キー人材としては、以下のような従業員が挙げられる。
    第一に、ビジネスの差別化につながる部門の主要な従業員である(例:研究開発部門、営業部門など、企業によってさまざま)。第二は、将来の事業成長を牽引していく人材、具体的には、被買収企業における主要ポジションの後任者、次世代リーダーとして認識されている人材である。第三は、長期的にはリテインする必要はないが、買収後一定期間は繋ぎ止めたい、短期的キー人材、例えば、オペレーションを担っているような人材である。この様な人材は、必ずしもマーケット価値が高い人材ではない点に留意する必要がある。
    デューデリジェンス(DD)の段階において、早期にキー人材を把握するため、例えば、以下の図表の左に示したような情報からキー人材を特定することが可能である。

 

経営幹部以外のキー人材の特定

※クリックして画像を拡大 

出所:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社作成

上記を踏まえ、買収企業としてのキー人材リスト素案を作成する。その上で、被買収企業のCEOへのインタビューや、場合によっては、非公式な場(会食等)での会話など、あらゆる場を活用し、被買収企業として認識しているキー人材は誰かを特定し、キー人材リストを最終化していく。

  •  一般従業員
    キー人材以外の一般従業員に対しても、買収企業とのエンゲージメントを高め、引き続きモチベーションを高くもって業務遂行してもらうために、コミュニケーションを中心としたリテンション施策を検討する必要がある。

 

2. 買収企業としてのリテンション施策に関する全体方針の策定

対象者を特定した後、買収企業として、リテンション対象者に対して、どのようなリテンション施策を実施するか、全体としての方針を定める必要がある。方針を定めるにあたっては、施策の組み合わせ、金銭的施策のレベル(水準)、リテンション期間といった観点から、詳細を検討することが望ましい。以下、それぞれについて詳細に述べる。

  • リテンション施策の組み合わせ
    リテンション施策には大きく分けて、金銭的施策、非金銭的施策、コミュニケーションの3つの分類がある。金銭的施策は文字通り、現状の報酬を引き上げる、固定報酬と変動報酬(賞与、長期インセンティブ等)の構成比率を変更する、中長期インセンティブ等の新たな報酬項目を導入するといった報酬に係る施策である。一方、非金銭的施策とは、具体的な金銭は伴わないが、リテンション対象者本人の志向等に合わせた施策を適用することである、例えば、より責任あるポジションへの登用を行う、買収に対する戦略的議論に積極的に参加してもらう、といった施策などが挙げられる。コミュニケーションとは、被買収企業の経営幹部や従業員に対し、適切かつ効果的なコミュニケーションを行うことである。例えば、経営幹部向けには、将来の統合に向けたビジョンを共有し、各経営幹部に今後期待することを明示することが考えられる。また、従業員向けには、タウンホールミーティング(全社会議)の場を活用するなどして、買収企業、被買収企業の幹部が揃って、従業員全体に対して買収による今後の明るい展望をキーメッセージとして伝える事が挙げられる。そもそも、人材の流出の主要項目の1つに将来の展望が挙げられることからすると、コミュニケーションがリテンションと強い関連性を有することは明らかである
    これらの施策のうち、どの施策を買収企業としてとり得るかを検討する必要があるが、実際は、これら3つを全て組み合わせて適用するが多い。
  • 金銭的施策のレベル(水準)
    3つのアプローチが採り得る。第一に同等性の維持、第二にマーケット水準に合わせた調整、第三にAdd-on施策の導入である。最低限のリテンション施策は、買収前の報酬、労働条件等の同等性の維持である。買収前よりも条件が悪くなるという事であれば、当然、被買収企業へ残って働き続けるモチベーションは低下し易くなり、流出リスクが高まる。同等以上の水準を提供する場合、大きく分けて、マーケットとの水準に合わせて調整する方法と、Add-onで施策を導入することの2つがある。以下で、それぞれの留意点について整理しておきたい。

    • 同等性の維持:
      報酬制度(基本給・賞与)については、特段の理由がない限りは同等性の維持に難しさはないが、特に福利厚生や、株式関連報酬等について、買収後、引き継げないものの見極めが重要となる。公的な福利厚生が他国に比べて充実していない米国等においては、民間の保険や年金プランが導入されているため、会社によって水準がまちまちである。手厚い福利厚生が買収前に適用されている場合、それを維持するだけでもリテンション効果があるケースがある。
    •  マーケットの水準に合わせる方法:
      まず、現状の報酬水準がマーケットに対して、高いか低いかを判断するために、リテンション対象者の報酬ベンチマークを実施するのが一般的である。ベンチマークの結果、現状の報酬水準がマーケットよりも低い場合には、報酬をマーケット水準まで引き上げる。また、現在の報酬水準に市場競争力がある場合、総報酬の水準自体は据え置きとする一方、インセンティブの上限額を引き上げることで、目標を上回る業績を達成した場合、買収前よりも高いインセンティブを得られる設計とする等の対応が考えられる。また、特定のキー人材においては、固定報酬と、業績連動報酬との報酬構成のバランスを見直し、固定報酬をマーケットの60%tile(上位40%)以上の金額にするといった方法を採用するケースもある。
    • Add-on施策の導入:
      新たな長期インセンティブプラン等を導入することや、親会社である買収企業の株式等の付与といった方法が考えられる。
  • リテンション期間
    対象者ごとにリテインしたい期間を見定めることも重要である。前述の短期的キー人材であれば、例えば、12か月後に、その時点における目標を設定し、それを達成した際に一括支給するといったインセンティブプランを導入することが考えられる。一方、長期的キー人材に対しては、3年後等中長期の目標を立て、それを達成した際に支給するインセンティブプランや、長期にリテンション効果を高めるために非金銭的施策も併せて検討することも考えられる。


 

3.個別施策への落とし込み

方針が明確になったら、次はリテンション対象者ごと、もしくはグループごとに個別の具体的な施策の設計に移る。個別施策の検討にあたっては、あらかじめ対象者ごとの詳細な情報を把握した上で、買収企業としてのリテンション目的等を踏まえて、適切な施策を検討、適用していく必要がある。  

  • リテンション対象者のプロフィール把握
    通常、DDにおいて報酬や労働条件等の情報を得られることは多い。しかしながら、リテンション施策の検討にあたっては、さらに踏み込んで、対象者の詳細な個人情報の把握が肝要である。個人情報には、家族構成や、転居の可能性を受け入れられるか、離職した場合の組織への影響度合い(部下を引き連れて離職するリスク等)といったものが挙げられる。このような情報を踏まえたうえで、個々のプロフィールに合わせたリテンション施策を検討することが効果的である。例えば、現在居住している地域からの転居が難しいリテンション対象者の場合、報酬水準を著しく高めるのではなく、転居がないことを確約することで、本人の継続勤務へのモチベーションを高めることに繋がる可能性が高い。
  • リテンション目的と合致した個別施策の検討
    個別施策を検討するにあたっては、各対象者に対する買収企業としてのリテンション目的や、上記で把握したプロフィールを踏まえた個別施策を検討することが望ましい。特に、Add-onのリテンション・ボーナスを付与する際に論点となるのが、期間に応じて支給する(ステイ・ボーナス)か、業績に連動させる(長期インセンティブプラン)か、という点である。欧米では、長期インセンティブプランを採用することが多いが、リテンションの目的によっては、ステイ・ボーナスも導入し得るオプションである。
    長期インセンティブプランを採用する主な目的としては、買収後の中長期の事業成長をリテンション対象者に牽引してもらうためである。支給の設定方法も、買収後の目的や、リテンション対象者の志向に合わせて多岐に渡る。例えば、支給カーブを業績に比例して一律にする、ある一定以上の業績を達成した場合は、カーブを引き上げる、といった形がある。また、設定された年度の最終年度(例:3年間の3年目)における達成度だけではなく、途中年度における達成度も加味した上で設定するなどが考えられる。
    一方、ステイ・ボーナスを採用する主な目的は、以下の2つが考えられる。1つ目は、業績よりも対象者の確実なリテンションを狙った場合である。業績のハードルを設けてしまうと、リテンションの効果が低くなるリスクがあるため、敢えて業績のハードルを外すことがある。2つ目としては、短期的キー人材の場合、すなわち、業績とは関係なく、オペレーションを安定させるための短期間のリテンション効果を望む場合である。支給の方法は、一定の在籍期間を経た後に均等に支給する方法や、当初年度は低めの支給率にし、最終年度に高い支給率のボーナスを支給するといった方法があり得る。

 

4.リテンションの進め方

リテンションに係る対象会社幹部との交渉を具体的にどのタイミングでどのように進めるべきかについては、ケースバイケースであると言わざるを得ない。理想的には、経営幹部を含むキー人材の情報を取得した上で、買収企業としてのリテンション施策を作成し、最終合意前から、被買収企業の幹部と協議を開始し、早期に契約を締結することが望ましい。
議論を進めるタイミングについては、案件スケジュール、上場の有無、被買収企業の所在する国、買収後の事業運営における重要性、人材流出リスクの度合いを踏まえて、案件ごとに個別に最適なリテンション施策検討のスケジュールを決定しているケースが多い。以下、各観点におけるポイントを述べる。

  • 案件スケジュール
    例えば、DDから最終合意までの期間が非常に短い場合などは、リテンションプランの最終化を行うのが難しいため、場合によってはDay1前後まで議論を継続することがある。一方、最終合意までの期間が長い場合においては、最終合意までに最終化してしまうケースもある。
  • 上場の有無
    被買収企業が上場しているか、否かによって、リテンションの進め方は大きく変わる。例えば、米国の上場企業であれば、プロキシーステートメントから、CEOや一部の経営幹部についての情報は把握できることも多く、早期から代替案の検討を開始することが可能である。但し、米国のみならず、上場企業については上場している証券取引所のルールが適用されるため、どこまで具体的な議論ができるかを事前に確認しておくことが望ましい。
    一方、非上場の場合は被買収企業からの情報提供に頼らざるを得ない部分も多く、また情報が整理されていない場合もあるため、買収企業としてのリテンション施策の素案の提示を早期に提示することは難しい。したがって、必要な情報を収集する前に、買収企業としての方針等、初期的な議論を被買収企業と開始し、並行して必要な情報を得ながら、リテンション施策を詳細化していくアプローチが採られる。
  • 被買収企業の所在する国
    被買収企業の所在する国によっては、特有の規制や慣行等に合わせた形で進める必要がある。例えば、イギリスの上場会社においては、テイクオーバー・コードの存在ゆえに、リテンションに関する議論をDay1前の実施は難しく、実際はDay1後のなるべく早いタイミングに早期に最終化していくことになる。一方、そういった規制や慣行がない場合は、最終合意前後に具体的な議論が可能となるケースも多い。
  • 買収後の事業運営における重要性
    リテンション対象者が、買収後の事業運営において非常に重要な人材(例えば経営幹部等)の場合、外部に流出した際に経営に与える影響は大きい。また、仮に外部に流出してしまった際の後任者を採用する際のコストや、不在となっている間の事業への影響も少なからず生じる。したがって、企業にとって替えのきかない人材である場合は、情報が完全にそろってない段階であっても、リテンション議論を進めることが望ましい。
  • 外部流出リスクの度合い
    被買収企業が所属する業界や、リテンション対象者が保有する専門性、また、リテンション対象者本人の志向によって、外部流出リスクの高低は異なる。業界、対象者のプロフィール、対象会社との議論等から対象者の流出リスクを判断し、リスクが大きいと考えられる場合は、早期に議論を進めていくことが望ましい。

まとめ

人材をリテインするためには、確実に成功する決まった方法はないものの、案件ごとに被買収企業の各キー人材の詳細を把握することで、効果的な施策の提示に繋げることが可能である。適切なタイミングで対象会社との議論に入るためには、DD段階から情報の収集やリテンションプランの初期的検討を進めることが必要となる。

しかしながら、クロスボーダーM&Aを行う日系企業において、体系的なリテンションプランの検討や、買収企業としての方針を定めているケースは多くない。被買収企業に対するリテンションを早期に進めるためにも、少なくとも、M&Aを検討する企業においては、自社のリテンション方針をあらかじめ策定しておき、それを踏まえた形で、案件ごとに最適なリテンション施策を検討していくことが望ましいと考える。

冒頭で述べたように、M&Aはキー人材が外部へ流出するひとつの大きな契機であり、買収企業としては、それを可能な限り食い止めることが買収目的を達成する上で重要な課題のひとつである。そういう意味では、被買収企業が持つ、製品・サービス・技術等のビジネスだけではなく、それを実行するために不可欠な「人」を買うという観点で、リテンションをM&Aにおける最重要検討事項の一つとして常に加えておくことをお勧めしたい。

 

本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。
 

執筆者

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ヒューマンキャピタル-M&A
マネジャー 谷口 裕也


(2016.08.29)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。 

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