ナレッジ

ミドルマーケットのM&A事情 第1回 地域のM&Aの過去と現状

地方創生が叫ばれるなか、地域企業のオーナー経営者は早急な事業承継対応が迫られています。近年M&Aによる第三者承継が脚光を浴び、地域でも積極的にM&Aを検討する経営者が増加しています。本稿では、その要因について過去から現在の地域におけるM&Aの変化を振り返り考察します。

I.はじめに

現在日本では本格的な少子高齢化社会に突入し、人口減少が大きな社会問題となっている。特に地域(ここでは東京都都心以外と位置付ける)産業に与えるインパクトは非常に大きく、今後益々問題は表面化し、我々の経済活動にさまざまな影響を与えるものと推測される。

このような環境の変化に伴い、地域における事業承継の在り方も変化しており、とりわけM&Aに対するニーズおよび希求は非常に高いものとなっている。

過去日本は戦後の高度経済成長により景気拡大を長期間にわたり続けてきた歴史がある。その中で、企業は買収せずとも業績を拡大でき、新しい技術開発をする余裕があった。また子供が家業を継ぐ文化も根強く残っていたことから後継者問題も大きく取り上げられることもなかった。

しかし、バブル崩壊以降においては産業構造の変化のスピードが加速し、都心部への人口集中なども相まって地域の事業承継型のM&Aが活発に行われるようになった。その中でも特にここ10年~20年の地域におけるM&Aに対する考え方、意識の変化は非常に大きいと感じられる。

 

II.地域におけるM&Aの過去・現在・未来

1.地域におけるM&Aの過去

私は過去地域金融機関に勤務してきたこともあり、多くのオーナー経営者と接する機会があり、事業承継についてもディスカッションをしてきた。

地域のオーナー経営者は今から15年程前までは、後継者問題を口にすることなく、後継者は家族もしくは親戚がいるから大丈夫、もしくは子供が大きくなったら会社を継いでくれるから大丈夫と信じ、後継者問題に触れたり、M&Aの話題を出したりすることは実際タブーとなっていた。

図表1が示すように、後継者問題の相談相手は顧問税理士や同じ会社の役員、経営者仲間など、身近な人に相談をしていた様子がうかがえる。これは特に団塊の世代である経営者が承継問題を考え始め、まずは情報を社内もしくは同じ悩みを持つ人に相談をし始めた時期ではなかったかと想像する。

図表1 後継者問題の相談相手(複数回答)(n = 718)
※クリックして画像を拡大表示できます

また、当時は現在のように一部の都心部を除いては、M&A専業会社や事業引継ぎ支援センターなどの公の機関も情報宣伝活動をあまり行っておらず、特に地域においてM&A自体が市民権を得られていなかったため、第三者への株式譲渡や事業の譲渡を考える経営者が少なかったことからも相談しやすかった(相談することで情報が拡散されても、社内承継中心の話でありリスクが無かった)ものと推測される。

実はこの頃から地域においては潜在的なM&A(譲渡)ニーズが高まっており、現在のような活発なM&A市場の譲渡先予備軍となっていたと推測される。

このような状況下、M&Aニーズの高まりを感じ、特に地域金融機関ではM&A業務を行う銀行が出てくることになる。地域で圧倒的なシェア・情報量を持つ地域金融機関は、M&Aニーズが高まる可能性を察知して少しずつではあるがM&A業務を先駆け的に始めたのも今から15~20年前である。

ただし当時はまだまだ本格的にM&A業務に参入する金融機関は少なく、現在のようなM&Aの専門部署やチームを持つことになるのはそれから約10年経ってのこととなる。

つまり当時の事業承継は親族内への承継を中心に考えるものであり、まだまだM&Aが市民権を得ておらず、選択肢にもあまり登場しなかったものと思われる。

 

2.地域におけるM&Aの現在と今後

上記のような親族内の事業承継だけでなくM&Aによる第三者への承継が現在のような主要な事業承継対策となった要因は以下のとおりと考えられる。

  1. 子供が都心部へ就職し、地域に戻らない傾向が顕著となった。
  2. M&A専業会社、公の機関などがM&Aの必要性を全国に向けて積極的に宣伝した。
  3. 団塊の世代が65歳を超え、いよいよ本格的に承継を考え出した。

現在では地方創生対策の一環としての事業承継対策としてもM&Aが認知され、積極的に地域金融機関などがオーナー経営者にM&Aを説明するまでとなっている。M&A専業会社や全国にある事業引継ぎ支援センターなどもセミナーを開催するなどしてM&Aを積極的にオーナー経営者に情報提供するようになったことから、上記の要因とも重なってM&Aが一般的な承継対策の一つになった。

また、図表2のように経営者の平均年齢は全国的に大きく上昇している。特に地域によっては1990年に比して約7歳も平均年齢が上昇しているところもあり、世代交代が進んでいない現状がうかがえる。地域のオーナー経営者にとって事業承継問題は喫緊の課題であることは間違いなく、後継者不在企業が6割を超えるといわれる現在にあって、M&Aによる第三者承継は非常に有効な承継手段となっていることが理解できる。

図表2 都道府県別経営者の平均年齢
※クリックして画像を拡大表示できます

ただ、M&A専業会社のほとんどが都心部にあり、まだまだ地域のM&Aプレイヤーは地方銀行が中心となっている。M&Aの増加により専業会社・地方銀行共に現在プレイヤー不足と言われており、十分な対応が出来ない状況が今後しばらく続くものと思料する。今後そのような状況を解決し、中小・零細企業までが事業承継の選択肢としてM&Aを活用できるようになるには、インターネットなどによる人手をあまり介さないM&A業務・マッチング業務を整備していくことが必要とされていると感じる。

III. おわりに

地域のM&Aに対するニーズは非常に高く、特に団塊の世代がいよいよリタイアを迎える今、早急な対応が迫られている。M&Aにより廃業を免れたり、円滑な事業承継を叶えることは、地域における雇用の確保や事業所の継続にも繋がり、地域の衰退を食い止める有効な手段ともなる。

地方創生が叫ばれる今だからこそ、すべての事業承継に悩むオーナー経営者、地域に対応するM&A市場の整備が求められていると考える。

デロイト トーマツ グループでは、地域金融機関や証券会社、会計事務所等と連携し地域のM&Aに対応していくとともに、M&Aマッチングプラットフォーム「M&Aプラス」の開発などによりM&A市場の整備にも力をいれていく方針である。

執筆者

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
地域金融機関担当 
シニアヴァイスプレジデント 山本康之

(2018.2.15)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

記事全文[PDF]

こちらから記事全文[PDF]のダウンロードができます。

Download PDF : 347 KB

関連サービス

M&A、企業再生、知的財産に関する最新情報、解説記事、ナレッジ、サービス紹介は以下からお進みください。 

M&A:トップページ

 ■ M&Aアドバイザリー
  ・経営継承支援
 ■ 企業再生
 ■ 知的財産アドバイザリー

記事、サービスに関するお問合せ

>> 問い合わせはこちら(オンラインフォーム)から

※ 担当者よりメールにて順次回答致しますので、お待ち頂けますようお願い申し上げます。

お役に立ちましたか?