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ミドルマーケットのM&A事情 第3回 信頼できるファイナンシャルアドバイザーの探し方 

ファイナンシャルアドバイザーはM&Aというクライアントの重要意思決定事項の遂行を担う職業ですが、我が国では公的な資格は存在していません。本稿では、「自称・アドバイザー」に遭遇しないためのファイナンシャルアドバイザー選定のポイントと留意点について、事例を挙げて解説します。

“私、今日からファイナンシャルアドバイザー!?”

意外なことと感じられるかもしれないが、我が国においてはM&Aを担うフィナンシャルアドバイザーに、公的な資格は存在していない。ファイナンシャルアドバイザーを名乗る者は皆「自称」と言うことも可能であるし、「私、今日からアドバイザー」と3回唱えたらファイナンシャルアドバイザーであるという論証の組み立ても可能だろう。その一方で、「結局は人柄」が真実だとするならば、それこそ3回唱えてみる者が後を絶たないだろう。

一般的なイメージからすると、会計士、税理士といった公的資格を持っていれば、M&Aに対する知見が豊富ではないかと考えられがちだが、現実にはそうではないこともある。逆に、何ら公的な資格を持たないにもかかわらず、百戦錬磨のアドバイザーとして活躍している者も数多くいる。

クライアントの立場からすれば、事前にアドバイザーの評価をするには、一定の方法論が必要だろう。

 

“東京のおしゃれなカフェを買収します”

例えば、離島の漁村に事務所を構える老齢アドバイザーに「東京の若い女性が支持するおしゃれなカフェ3軒買収」といった依頼を投げたところで、適切な買収候補を探すことも、候補先を適正に評価することも厳しいのではないだろうか。こういった場合、直感的には、東京の流行に敏感な若手アドバイザーへの依頼を選択したいところである。もちろん、離島の漁村に事務所を構える老齢アドバイザーが東京の若い女性が支持するおしゃれなカフェに対して優れた知見を持つ可能性を否定するわけではないが、一般的には漁業関連の知見を期待すべきというところだろう。このように、依頼の内容によってアドバイザーには得手不得手が存在しうることを理解しておくべきである。

また、経験値という意味では、一人のファイナンシャルアドバイザーがカバーできる範囲はクライアントが期待するよりは広くないと感じる。実際のところ、年間で成立させられるディールの数はアドバイザーひとり当たり2件といったところであるため、経験値としては10年でだいたい20件が精いっぱいということになる。ファイナンシャルアドバイザーという職業の特性上、あらゆる産業、地域をカバーした知見を蓄積することは構造的に難しいものにならざるを得ない。

結局のところ、ファイナンシャルアドバイザーの評価は、その場面によって相対的にならざるを得ないのが現実である。

優れたアドバイザーほど、自身の得意分野を明確に説明することができるはずである。クライアントの立場からすれば、アドバイザーそれぞれの得意分野や専門性、地域性の見極めの中からアドバイザーを選択していくというのが、「自称・アドバイザー」に遭遇しないための、ひとつの方法となり得るだろう。

 

“御社のために最善を尽くします”

ファイナンシャルアドバイザーはM&Aというクライアントの重要意思決定事項の遂行を担う職業であるため、誠実性をもってクライアントに向き合い、困難に当たっては常に最善を尽くすべきであるが、なかにはクライアントの期待に達していないと感じられるM&A事業者に遭遇することもあるだろう。

クライアントの立場においても、M&A事業者のビジネスモデルの構造の違いからくる自身への影響を理解しておく必要がある。

M&Aの実務を担う事業者のビジネスモデルは2つに大別出来る。ひとつは「仲介」と呼ばれる形態であり、業界用語では「両手」とも呼ばれている。もうひとつは「代理」と呼ばれる形態であり、こちらは「片手」と呼ばれることもある。

「仲介」は端的に言えば、売手と買手の間に1つの事業者が立ち、M&Aを遂行するモデルである。事業者は中立的な立場で売手と買手に接し、両者間に発生する諸業務をこなすことになる。実際の実務としては、事業者は売手側の依頼が来た時に、買手側リストに照らし合わせて相手先を探すのが一般的である。

「仲介」の優れた点は、間に事業者が1つしか立っていないため、素早い取引の成立が期待できることである。また、事業者にとっても、売手、買手双方からの手数料収入が期待できるため、収益性が高い。

一方、「仲介」はクライアント側にとって、そのプロセスが分かりにくいという点がある。例えば、1つの売手に対し、複数の買い手候補があった場合、実際にどの買手にそれを提案するかは、まずは事業者自身の選択にかかっているが、その検討内容がクライアントにとって適正かどうかを確認する手段が現実的には存在しない。あらゆるビジネスがそうであるように、事業者内におけるしがらみの影響や、上得意客を優先するといった対応が存在する可能性に対して、クライアントは実行力のある対抗手段をもたない。これは売手と買手の間に一つの事業者しか立たないという構造に起因するものであるため、「仲介」において解消不可能なリスクであると考えられる。

このように、「仲介」における問題点は、事業者側の利益が、クライアントにとってのリスクとトレードオフの関係を生みやすいことにある。

「代理」は売手と買手の間に双方に担当する事業者が立ち、M&Aを遂行するモデルである。事業者は一方の立場で売手と買手に接し、事業者間で諸業務をこなすことになる。実際の実務としては、売手側からアプローチすることも、買手側からアプローチすることもありうる。

「代理」の優れた点は、必ずクライアントの立場に立った事業者が存在するため、公正な取引が実現しやすいことである。クライアントのメリットと事業者のメリットが基本的に一致するため、事業者はプロセスを開示することにためらう必要はない。

一方で、「代理」は片方の立場に立った事業者同士がお互いにクライアント側の価値を最大限に引き出そうとするため、、取引に時間がかかる傾向にある。また、事業者にとってはどちらか片方からの手数料収入しか期待できないことから収益性としては「仲介」に劣ることになる。

当社のようにポリシーとして「代理」しか認めない事業者もあれば、逆に「仲介」しか認めない事業者も多く、また、ケースバイケースで判断する事業者もある。

クライアント側は、事業者側のポリシーがどれほどの影響を与えうるかを考慮したうえで、事業者を選択することになる。

 

ファイナンシャルアドバイザーを選ぶためには

クライアント自身が、M&A事業者のビジネスモデルの構造の違いを理解したうえで、最適なアドバイザーを任意で選択し、自社の企業価値を最大限に引き出す公正なM&Aを実現できるようにすることが肝要である。

執筆者

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
M&Aプラス
シニアヴァイスプレジデント 清水 亮

(2018.6.12)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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