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サイバー刑法

ビジネスキーワード:ファイナンシャルアドバイザリー

ファイナンシャルアドバイザリーに関する用語を分かり易く解説する「ビジネスキーワード」。本稿では「サイバー刑法」について概説します。

サイバー刑法

サイバー刑法(情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律、2011年6月24日法律第74号)とは、いわゆるサイバー犯罪への対応を目的とする、刑法を中心とした改正法の通称であり、2011年6月に可決し、同年7月に施行されている。これは、2001年に欧州評議会で採択された「サイバー犯罪に関する条約」(日本もオブザーバーとして参加。同条約に署名し、2004年に国会承認を経て同年7月1日より効力発生)を批准するために法整備が必要であったためである。主な改正は以下のとおりである(出典:法務省公表資料)。

【実態法の整備状況】

■不正指令電磁的記録(以下、「コンピュータ・ウイルス」)の作成・供用等の罪の新設(刑法168条の2、詳細は後述)

■わいせつ物頒布等の罪(刑法175条)の処罰対象の拡充

■電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)の未遂の処罰

【手続法の整備状況】

■接続サーバ保管の自己作成データ等の差押えの導入

■記録命令付差押えの新設

■電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法の整備

■電磁的記録に係る記録媒体の差押えを受ける者等への協力要請の規程の整備

■通信履歴の電磁的記録の保全要請の規程の整備

■電磁的記録の没収に関する規程の整備

【その他】

■組織的犯罪処罰法の一部改正

■第三者所有物没収手続応急措置法の一部改正

■国際捜査共助法の一部改正

■不正アクセス禁止法の一部改正

図表1:情報流出の概要

コンピュータ・ウイルス作成・供用等の罪

従前では、コンピュータ・ウイルスの作成・保管・提供などの行為を直接罪に問う法律は存在しなかった。しかしながら、本改正によりウイルス作成罪を新設し、コンピュータ・ウイルスやマルウェアなどを正当な理由なく、不正な指令を与える目的で作成・提供・供用等していた場合に、3年以下の懲役または50万円以下の罰金(コンピュータ・ウイルスの作成・提供行為)または、取得・保管行為には2年以下の懲役または30万円以下の罰金(コンピュータ・ウイルスの取得・保管行為)が科される等、処罰の対象とすることができるようになっている。ウイルス作成・提供罪は(1)正当な理由がないのに、(2)無断で他人のコンピュータにおいて実行させる目的で、ウイルスを作成・提供した場合に成立するとしており、ウイルス対策ソフト開発等の目的でウイルス的プログラムを作成する場合等は該当しない。また、同罪は故意犯であり、プログラミングの過程で誤ってバグを発生させても犯罪にはならない。一方、ウイルス取得・保管罪は「無断で他人のコンピュータにおいて実行させる目的で」保管した場合に成立するものであり、ウイルスをメールなどで送りつけられたユーザは該当しない。

• 作成・提供・供用:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

• 取得・保管:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

さいごに

サイバー刑法の施行は、サイバー犯罪の抑制効果が期待される一方で、「ウイルスを作成していないか調べるため、一般人のコンピュータが警察等に監視されるのではないか」という懸念があった。しかしながら、コンピュータの差押えや通信履歴の入手には、これまでどおり裁判官の令状が必要であり、直ちに監視を可能とするような特別な捜査手法が導入されるわけではない。

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