ナレッジ

OECD贈賄防止条約

ビジネスキーワード:ファイナンシャルアドバイザリー

ファイナンシャルアドバイザリーに関する用語を分かり易く解説する「ビジネスキーワード」。本稿では「OECD贈賄防止条約」について概説します。

OECD贈賄防止条約の概要

OECD贈賄防止条約とは、正式には「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(OECD Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions)」といい、国際的に広範に見られる「贈賄」が国際商取引(貿易および投資を含む。)において深刻な道義的および政治的問題を引き起こし、良いガバナンスおよび経済発展を阻害し、国際的な競争的条件を歪めていることを考慮し、世界的に外国公務員への贈賄を抑止および防止するためにOECDが1999年に発効した条約である。OECD贈賄防止条約は、OECD加盟国以外の国・地域も条約に加入できることに特徴があり、2011年7月現在38ヵ国が締結している(図表1を参照)。

図表1:OECD贈賄条約締結国

OECD贈賄条約の主な内容

OECD贈賄防止条約は、全17条から構成されており、犯罪の構成要件、外国公務員の定義、制裁、裁判権等とともに、条約の効果的な運用のための司法共助、犯罪人引渡し、各国実施状況のフォローアップ等に関して規定している(下記を参照)。 特に、贈賄側に対してのみ焦点をあてた条約であることが特徴である。

I.  犯罪の構成要件

ある者が故意に、
国際商取引において、商取引又は他の不当な利益を取得し又は維持するために、
外国公務員に対し、
当該外国公務員が公務の遂行に関し行動し又は行動を差し控えることを目的として、
当該外国公務員又は第三者のために、不当な利益を直接に又は仲介者を通じて申し出、約束し又は供与すること

II.  外国公務員の定義

外国(外国の地方公共団体も含む)の立法、行政、司法の職にある者
外国の公的機関(公共の利益に関する特定の事務を行うために特別の法令によって設立された組織)の職員等外国のために公的な任務を遂行する者
公的な企業の職員等外国のために公的な任務を遂行する者
公的国際機関の職員又は事務受託者

III.  制裁

効果的で、均衡がとれたかつ抑止力のある刑罰
刑罰の範囲は、自国の公務員に対する贈賄罪と同程度
法人も処罰
賄賂及び贈賄を通じて得た収益の没収又は同等な効果を有する金銭的制裁
追加的な民事上又は行政上の制裁を科すことも考慮

IV. 裁判権

属地主義を原則として裁判権を設定
属人主義については、各国の法原則に従って、これを採用すべきか決定

V.  資金洗浄

自国の公務員に関する贈賄又は収賄と同一の条件で資金洗浄に係る法制を適用

VI. その他

上記以外に、条約の実効性を確保するため、会計、相互援助、犯罪人引渡し、各国の実施状況のフォローアップ等を合わせて実施


OECD贈賄防止条約の実効性の担保

(1) 贈賄作業部会

本条約の完全な実施を監視・促進するため、条約締約国は組織的な事後措置の計画を実行することに協力することが規定されており、条約締約国の代表者で構成される贈賄作業部会(Working Group on Bribery in International Business Transactions)により、各国の実施状況の監視が行われている。例えば、2006年に日本は、「OECD贈賄防止条約の締約国としての責務の一貫として、外国公務員への贈賄事件の調査・訴追により積極的に取り組むべきである」と指摘されており、産業構造審議会貿易経済協力分科会国際商取引関連企業行動小委員会での検討を踏まえ、2010年9月に「外国公務員贈賄防止指針」を改訂し、公表している。また、一方で日本が外国公務員への贈賄を撲滅するために行っている積極的取り組みとして、外国公務員への贈賄の課税控除を明示的に否認するための法人税法と所得税法の改正(2006年4月)や、自然人と法人の訴追に適用される出訴期限も3年から5年へと拡張したことが挙げられる。これらは、日本における外国公務員への贈賄罪の執行状況に関して最新の評価を実施できるようにするための情報提供に多大な努力を払ったとして、贈賄作業部会にて高く評価されている。

(2) トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)

腐敗との闘いをリードする市民社会組織である「トランスペアレンシー・インターナショナル(本部:ベルリン)」(以下、「TI」)による最新の報告書(2010 年7 月28 日)によれば、「外国公務員贈賄禁止のルールを実施している諸国の数は、過去6 年間で継続的な進展を示している(OECD贈賄防止条約加盟国)。しかしながら、これら加盟国の中で反汚職法の制定のための行動をほとんど起こしていないか、まったく何らの規制措置をも講じていない国がまだ20ヵ国以上もある。」として、外国公務員贈賄行為に対する抑制努力は依然不十分であるため、法執行の改善の必要性を示している。
 

最後に

困難な経済状況は、OECD 加盟国政府が外国公務員贈賄を阻止する集合的なコミットメントを無視することに対する口実にならないことは明白であり、外国公務員贈賄の根絶は、世界的な景気後退を克服するために必要な諸改革の重要な一部をなすとみなされなければならないであろう。TI は、OECD に対して、条約に参加していない国の条約参加を奨める現在の努力を促進するよう求めており、また、外国公務員贈賄に対する闘いにおいて現実的な進展を確保するために、OECD は、法執行の遅れている国に対して、高いレベルにおける政治的な圧力をかける必要があるとしている。

関連情報

フォレンジックサービスについて

企業が事業活動を遂行するにあたり、不適切な会計処理、資産横領、贈収賄、情報漏洩、不正アクセス、知的財産の侵害等の不正リスクが存在しますが、潜在的な不正リスクは広範囲に及びます。また、近年、企業間の紛争は増加傾向かつ複雑化しており、企業は係争・訴訟に関するスキルや経験が求められ、弁護士以外の財務やデータ収集の専門家の活用のニーズが着実に増加しています。デロイト トーマツ グループは、不正リスクに対してガバナンス、リスク評価、予防、発見、調査、再発防止の総合的なアプローチで企業の不正対応を支援します。

関連するサービス
■ 不正対応・係争サポート
■ 法規制遵守関連サービス(FCPA対応等)

おすすめの記事一覧
■ 基礎からのフォレンジック講座
お役に立ちましたか?