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世界のM&A事情 ~欧州 第1回~

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社の駐在員より、現地のM&Aの状況・トレンドなどをご紹介する「世界のM&A事情」。今回はロンドン駐在員より欧州についてご紹介します。

欧州は世界で2番目にM&Aが活発な地域

M&AデータサイトMergermarket によれば、2014年のM&Aは世界全体で3兆USドルを超え対前年比で約1.5倍に増加しており、これは過去最大だった2007年に迫る勢いである。金額で最も多いのは米国、次いで欧州・アジア・中南米の順番であり、それぞれでM&Aが増加しており、クロスボーダーでの買収が特に増加している。

欧州のM&Aも増加傾向

欧州のM&A(Inbound・Outbound・In-in合計)はリーマンショック後の2009年を底に増加傾向が続いており、2014年は2013年対比で金額・件数ともに増加している。これはクロスボーダー取引、特に米国とのM&A(Inbound・Outboundとも)が活発だったこと、製薬業界・通信業界等での大型買収が多かったこと、PEファンド(Private Equity) to PEファンド案件が目立つ存在になるなど、PEファンドによる買収案件が活発になっていること、また入札形式を通じた買収希望企業同士の競争により買収金額の単価が増加傾向にあったことが理由として挙げられる。

これらの背景としては、世界的な金融緩和傾向を背景として、事業会社やPEファンドによる買収資金調達が比較的容易な環境にあること、中国・インド・ブラジルなど新興国経済の成長に落ち着きが見られ、安定的成長市場としての欧州市場に再び目が向けられるようになったことが挙げられ、地域としては英国・ドイツ・フランス・イタリア・ベネルクスを中心に、さらには北欧・中東欧でのディールが最近増えている。

日系企業による在欧企業の買収はほぼ横ばい

日系企業による全世界の海外企業の買収は増加傾向にあるが、在欧州企業の買収(Outbound)に限った場合には件数ベースで2011年からほぼ横ばいである。これは中国・インド・ブラジルのブームの後に欧州に目が向けられるようになったとはいえ、地理的・心理的に比較的近く参入し易い米国・アジアにより多くの投資が向かっていること、買い手の購入意欲や資金力を背景に入札案件での買収価格や各種条件が厳しくなり、円安も重なり日系企業が入札案件で勝てないケースが目立っていることなどが理由として挙げられる。

欧州での買収を成功させていくには売り案件が出てくるのを待つだけでなく、より積極的に優良企業の発掘・アプローチをして信頼関係を早期に構築していくことで相対取引に持ち込んでいくなどのアプローチも必要になってきているのかもしれません。

[豆知識]
相手と信頼関係を構築するためにランチや週末にスポーツ観戦を一緒にすることはロンドンでも良く見られる。ただこうした場で個別具体的なビジネスの話をすることはあまりなく、むしろ社交の場としての色彩が強いといえるだろう。

一つの国ではない欧州

米国とは異なり欧州は複数の国の集合体であり、成熟国と新興国とが混在している。また各国はそれぞれの政治体制・言語・文化・法規制(EU以外は独自通貨)を持っている。各国はEUとしてのつながりのほか、例えば中東欧は同じ言語圏としてドイツと密接に結びつきがある等、ビジネスをしていくにはそれぞれを個別に見ていく必要がある。

こうした複雑性から、巨大企業を除けば、1つの企業で欧州全体をカバーしているケースは少なく、これから新規参入を検討する企業にとっては多くの場合、各国のマーケットへの参入方法を個別に検討する必要がある。この意味で、欧州各国をカバーしそれぞれに知見をもつアドバイザーとして、会計事務所系がFAに起用されるケースも米国と比較して多くなっている。

最後に

日系企業の海外展開は今後も加速する中で欧州は引き続き重要な市場の一つであることは間違いなく、本稿が少しでもご参考となれば幸甚である

本文中の意見や見解に関わる部分は私見である点ご留意ください。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
ロンドン駐在員
横田 智史 ・ 米田 博雄

(2015.03.27)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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