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世界のM&A事情 ~アメリカ~

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の駐在員から、現地のM&Aの状況・トレンド、M&A交渉の際の留意点などをご紹介します。今回はアメリカです。

2014年は金融危機後で最もM&Aが活発となり2015年もその傾向が続く

米国におけるM&Aは現在大変活発に行われており、2014年は2008年の金融危機以降では件数および金額ともに最大となった。2015年に入ってもその傾向は続き、H.J. Heinz によるKraft Foodsの買収(547億米ドル)などの大型買収もあり、前年と同水準もしくはそれ以上の水準で推移している。この傾向は、継続的な金融緩和に伴い資金調達が容易である点、米国の景気回復やそれに伴い株式市場を中心に企業価値が増加したことでプライベートエクイティファンドなどが過去に買収した会社の売却を目指す動きが加速している点も要因として挙げられている。米国内ではさまざまなセクターでのM&A活動が活発となっているが、その中でもライフサイエンスやTMT、エナジーやコンシューマー関連の案件が大きく見受けられる。

日本からのアウトバウンドも件数・金額ともに高水準が続く

日本企業による米国企業の買収も件数・金額ともに高水準となっている。2012年はソフトバンクによるSprint Nextelの買収(216億ドル)等の大型案件があり過去最高水準となったが、2014年は、サントリー・ホールディングスによるBeam Inc.の買収(157億ドル)をはじめとして、円安が進行する中においても数多くの買収が発表・成立した結果、M&Aの案件数および金額は2012年に次ぐ高水準となった。2015年に入ってもその傾向は継続しているものと見受けられる。

大型案件は規制当局の許可が下りない可能性も

日本企業による買収案件は、前述のソフトバンクやサントリー・ホールディングスの案件のように買収が1兆円を超える案件をはじめとして、買収金額が1,000億円を超える日経新聞の一面を飾るような大型の米国企業買収案件が近年多く見受けられるようになった。米国内においても日本企業の大型買収案件も注目を浴びるが、一方で米国ではそのような大型案件は頻繁に発表されており、米国におけるM&A活動の活発さとその経済規模には驚かされる。しかし、一方で最近はこのような大型M&Aが最終的に成立しないリスクも注目されている。通信業界ではSprintによるT -Mobileの買収、メディア業界ではComcast によるTime Warner買収、半導体装置業界ではApplied Materialと東京エレクトロンの統合といった超大型のM&A案件は最終的に独占禁止法の観点から規制当局の許可が下りず、多くの注目を集めたものの、結局は日の目を見ることはなかった。

日本企業の米国企業買収における調査アプローチ

米国においては企業の経営戦略の一環として頻繁にM&Aが行われてきた結果として、日本においてはある意味特殊技能とも捉えがちなM&Aに関連する概念・手法は、米国における人材の流動性と相俟って、より広範に普及・浸透している印象を受ける。各企業内において相応の経験を有する専門チームが自社のM&Aを先導し、価格および契約交渉の観点から必要な事項を我々アドバイザーに明確な業務範囲とともに依頼することが多い。大型案件であっても例えばデューデリジェンスにおける調査事項は限定的となることもある。

一方で、日本企業による米国買収案件の場合、社内においてM&Aプロセスに慣れていない方々も含めた中でボトムアップで調査事項が形成され、価格および契約交渉の観点とPMIの観点が混在した広範かつ詳細な調査内容となることが多い。このような詳細な調査事項は、米国内における売り手が想定している以上の内容となり、結果的に売り手との間での軋轢を生むことがある。M&Aにおける調査・交渉期間が限定的であるだけでなく、一般に日本企業は意思決定プロセスに時間がかかる傾向が多いことから、実質的に調査にかけられる期間が短くなる傾向があるため、調査事項により優先順位をつけて能動的に買収に望む姿勢も重要になってくるものと考えられる。

最後に

今後も日本企業が海外進出を加速させていく中において、米国が重要な投資先となる傾向は続くものと考えられる。また案件も大型化が進む中において、その買収の成否がより重要となることは明らかであり、本稿がその一助になれば幸いである。

本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
ニューヨーク駐在
岩崎 恭行

(2015.05.27)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

執筆者


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