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世界のM&A事情 ~台湾~

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の駐在員から、現地のM&Aの状況・トレンド、M&A交渉の際の留意点などをご紹介します。今回は台湾です。

台湾のM&A状況

日本の経済産業省にあたる台湾経済部(商業司)が公表するM&A市場の統計データによれば、国内のM&A(合併、買収、株式交換、会社分割を含む)は件数ベースで直近5年間は200件弱で推移している。一方、金額ベースでは2009年にリーマンショックの影響で急落したM&A市場は2011年には2008年のピーク時に近い水準まで回復したものの、その後再び減少傾向にある。ただし、当該データは届出ベースの統計値であり、かつ、クロスボーダー案件が含まれていないため、統計値として反映されていない案件も相当数あるものと考えられる。なお、Thomson社のデータベースから取得した2014年のクロスボーダー案件を含む台湾のM&A件数は288件であった。海外企業による台湾企業へのM&A(インバウンドM&A)では、米国からの投資件数が最も多く、日本と香港がそれに次ぐ状況であった。また、投資先企業を業種別でみると、半導体デバイス(13%)が最も多く、半導体デバイス、電子部品、および電子コンポーネントが全体の20%弱を占める結果となっており、スマートフォンやタブレット型端末の需要拡大などが寄与しているものと考えられる。

台湾M&A市場の動向

出典:経済部商業司公表データよりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

日本企業による台湾投資のトレンド

歴史的にも日本との繋がりが深く日本企業による台湾進出の歴史は古くは戦前まで遡ることができるが、1980年代以降の台湾投資を考察すると大きく3つの波に分けることができる。1つ目は1980年代後半のバブル経済やプラザ合意以降の円高を背景とした製造業を中心とした投資、2つ目は2000年代前半までの台湾ハイテク産業の発展に伴い増加した電子部材製造業、およびPC関連製造業による投資、そして3つ目は台湾を足がかりとしたアジア域内への展開を目指す小売・飲食業といったサービス産業の投資が足元でも続いている。日本企業による対台湾投資は2012年に件数ベースで619件と過去最高を記録し、2013年(直近統計値)も618件と前年度とほぼ同水準であった。2013年においても継続して飲食業やホテル・観光業といったサービス産業の投資の増加が目を引く状況である。こうしたサービス産業による投資増加は、日本市場の飽和や急増する中国大陸からの観光客(2007年にはゼロだった中国人観光客が2012年は258万人に急増。1位だった日本人観光客を抜き国別来台者数で首位)を取り込むメリットに加え、台湾をテストマーケティングの場として位置づけた投資の増加が要因となっており、この傾向は今後も継続するものと考えられる。

進む世代交代

同族オーナー系企業が非常に多いといわれる台湾企業において、世代交代が進んできている。前出のとおり、日本企業における台湾投資は1980年代後半、2000年代前半には投資ブームを経験したこともあり、中にはオーナー系台湾企業との合弁で設立された企業も多い。最近では、創業オーナーの高齢化や同族間での事業継承を背景に、このような合弁企業において合弁解消による持分売却や完全子会社化といった組織再編の動きが拡がっている。また、独立系のオーナー企業のなかでも、世代交代を契機として、既存事業の拡大や新規マーケットへの進出を目指し、外国企業との提携を模索する企業が増えていることから、日本企業との新たな提携ニーズの可能性が期待される。

税務トピック(豆情報)-検討すべき2つの免税・減税規定

多数の製造業が進出している台湾において日本企業が、(1)在台湾日系企業または台湾企業が日本企業に対して特許権等の使用に係るロイヤリティの支払を行っているケース、あるいは(2)日本から台湾の現地法人に対して請負工事や技術指導を行い、台湾の現地法人からサービスフィーを受け取っているケースについて、このどちらか(あるいは両方)に該当するケースは多いものと推察される。(1)については免税、(2)については減税(源泉徴収による場合:20%→3%)の対象となるため、適用許可をうけることにより税務メリットを享受できる可能性がある。上記ケースに該当する可能性がある場合、以下規定の許可申請を検討されたい。

  1. 外国営利事業の所有する特許権および商標権等の使用に係る技術ロイヤルティ等に関する免税申請(所得税法第4条第1項第21号)
  2.  請負工事や技術サービス提供に関する「みなし利益率(税率の低減)」の適用申請(所得税法第25条)
    なお、両規定ともに、遡及適用(1.は2011/1/1からの遡及適用、2.は該当する収入取得の期日から5ヵ年遡って申請)が認められているため、過去の取引についても適用可能である。

最後に

既に台湾で事業展開している多くの日本企業が中国大陸を含めたサプライチェーンを構築しているが、アジア域内での激しい事業環境の変化に対応するかたちで、日本企業による台湾の位置づけそのものが変化している。今後は台湾企業を経由した中国展開だけではなく、台湾企業を経由したアジア展開、台湾を含むアジア域内での組織再編など、多様なケースが出てくるものと考えられる。

本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
台湾駐在
堀越 隆

(2015.06.23)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

執筆者


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Deloitte 台湾 について

台湾では1980年代から技術志向と国際化が進み、液晶、半導体を中心とするハイテク高付加価値製品の生産地としての特色を強めてきました。日系企業にとっては中華圏ビジネスの手始めとして、台湾をテストマーケティングの市場として考えるケースも多く見受けられます。ここ数年、漸次台湾から中国への投資規制、取引規制も緩和され、中華圏ビジネスの要としてその存在価値は上昇していると見受けられます。

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