ナレッジ

世界のM&A事情 ~オーストラリア(豪州)~

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の駐在員から、現地のM&Aの状況・トレンド、M&A交渉の際の留意点などをご紹介します。今回はオーストラリア(豪州)です。

オーストラリア(豪州)におけるM&Aの動向

出典:Thomson Reutersよりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

豪州企業を買収対象としたM&Aは、2005~2008年頃の年間2,000件程度の水準から、直近では1,300~1,400件程度と減少しているものの、金額ベースでは近年上昇傾向にあるなどM&Aマーケットは継続して活発な状況と言える。

この内、海外企業が買い手の案件は金額ベースで40~50%程度、件数ベースで30%強程度となっている。買い手が属する国としては、過去から北米や英国からの投資が多かったが、近年はシンガポール、香港、中国などのアジアからの投資も増えている。

業種別では、以前は資源関連が中心だったがそれ以外のインフラ、卸売・サービスやIT関連などの業種が増加傾向にある。
2015年に発表された大型案件としては、カナダのBrookfieldによる運輸・インフラ大手Ascianoの買収(約88億ドル)、ドイツ銀行、KKR等によるGEキャピタルの消費者金融事業の買収(約63億ドル)などがある。

日本-豪州間のM&Aの動向

出典:Thomson Reutersよりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

日系企業による豪州企業の買収案件は直近では年間約20~30件程度となっており、2000年代後半より漸次増加している。また、金額ベースでは大型案件の有無によって年度毎の変動が大きいものの、こちらも全体としては増加傾向にある。

歴史的に総合商社による買収案件が多く、案件全体の30%程度が総合商社によるものとなっている。業種別では、過去5年では鉱業、食品、サービスの順にM&Aの件数が多い業界となっていたが、近年はそれ以外のIT関連やサービス、金融関連などの案件が増加傾向にある。

近年の公表された大型案件の例としては、2009年キリンによるライオンネイサン完全子会社化(約2,600億円)、2010年の第一生命によるタワー・オーストラリア買収(約1,000億円)、2012年の三菱商事と三井物産の合弁会社ジャパン・オーストラリアLNGによるブラウズプロジェクトの権益取得(約1,600億円)、そして2015年には日本郵政によるトール・ホールディングス買収(約7,200億円)、日本生命によるナショナルオーストラリア銀行傘下の生命保険事業買収(約2,000億円)などがある。

また、買収ではないが、日系企業の不動産分野への進出・投資も増加しており、例えば積水ハウスは豪州において既に約1,300億円投資をしており、今後も更に不動産開発事業を進めていくことが報じられている。

豆情報「豪州における成長産業」

デロイト豪州のシンクタンクであるDeloitte Access Economicsの調査によれば、今後豪州で2013年から2033年までで同国のGDPの成長率を10%以上上回って成長が見込まれる業種として、「ガス」、「観光」、「アグリビジネス」、「医療福祉」、「国際教育」、「ウェルスマネジメント」の6業種が挙げられている。(詳細についてはDeloitte Australiaのサイトをご参照ください)

豪州市場の捉え方

日系企業が豪州企業をM&Aのターゲットとする際によく議論となる点のひとつに、なぜアジアや欧米の企業ではなく、豪州に投資するのか、という点がある。

さまざまな考え方はあるものの、豪州は先進国でありながらGDP、人口ともに長きに亘り安定して成長・増加しており、法制度やビジネス環境も整っており、政府も海外からの投資誘致に積極的なスタンスであり、日本との時差も少ない。また、日豪経済連携協定が2015年から発効しており、また直近で両国を含む環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が大筋合意に至るなど、今後両国間での貿易が更に活発化することが見込まれるなど、今まで以上に豪州は日系企業に魅力的な投資先となりつつあると言える。

豪州市場でのM&Aのポイント

豪州ではM&Aが一般的な手段と認識されているためM&Aが活発であり、特に一定規模以上の案件の場合、買い手候補を国内外に求めるグローバルでのオークションとなるケースが多い。このような場合、その日系企業はスピード感についていけない場合が見受けられる。(オークション案件の場合、簡易な情報を記載したティーザーが配布され、詳細な情報を含んだInformation Memorandumが配布可能な状況になってから概ね4週間程度で一次入札の期限となることが多い)

その観点から、日系企業が豪州においてM&Aを効果的・効率的に検討していくためには、事前にマーケット情報を入手し、自ら買収ターゲットを絞り込んで情報を取得するなどが肝要となる。能動的に検討を進めることは買収ターゲットを明確にするだけでなく、オークション案件になることを避け相対案件に持ち込むという意味でも有用な戦略の一つと考えられる。

最後に

日系企業の豪州におけるM&Aについては、今年に入ってから日本郵政による物流会社買収、リクルートによる人材関連会社買収、ガリバーインターナショナルによる自動車ディーラー買収、日本生命による生命保険事業買収など、今までにあまり事例のなかった業種への投資も増えてきており、今後は更に幅広い業種での日系企業からの投資が見込まれる。


文章中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
オーストラリア駐在
津富 暢

(2015.10.29)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

執筆者


こちらから記事全文[PDF]のダウンロードができます。
 

[PDF: 167KB]

Deloitte Australia について

オーストラリアは近年、先進国の中でも高い経済成長を達成してきました。制度面でも海外からの投資を促すための諸策が積極的に導入されたこともあり、日本企業の投資も、資源産業や食料品分野をはじめとして順調に増加してきています。

関連サービス
M&A:トップページ
 ・ M&Aアドバイザリー
 ・ 海外ビジネス支援 
 ・ オーストラリアでの日系企業向けサービス 
シリーズ記事一覧
 ・ 世界のM&A事情 


About Deloitte Australia

Deloitte is the brand under which thousands of professionals collaborate across a network of offices in Australia to provide audit, economics, financial advisory, human capital, tax and technology services.

The Australian partnership of Deloitte Touche Tohmatsu is committed to growth, client service and its people – 640 partners and more than 5400 people located in 14 offices across the country, plus offices in PNG, Timor-Leste and India.

お役に立ちましたか?