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デジタルディスラプションを基点とした「変革のためのコスト削減」

デロイトによる2019年度グローバルコストサーベイ結果

コスト管理は依然として世界各国の企業において必要不可欠な取り組みです。企業の多くは、収益の成長に引き続き明るい期待を抱いており、成長に必要な原資を確保するためにコスト削減を行っています。一方で、急速にデジタル化が進む中、 企業はデジタルイノベーションへの投資等を行うことにより、自らの業務とケイパビリティの変革を行う必要性も認識しています。すなわち、「成長のためのコスト削減」から、「変革のためのコスト削減」という考え方にシフトしつつあります。

コストサーベイの結果から読み解く「コスト削減」「成長」「変革」「デジタル技術の統合 」

企業は、ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)、コグニティブ・テクノロジー、ビジネスインテリジェンス(BI)、クラウドベースのERP システムなどのデジタルイノベーションへの投資を行うことにより、より一層、自らの業務とケイパビリティを変革する必要性を認識しています。このようなデジタル技術とイノベーションは、競争力、業績、業務効率、コスト削減において劇的な改善をもたらす可能性を秘めています。

世界の主要な地域と業界を網羅する1,200名以上の経営幹部を対象とした、デロイトのサーベイ結果では、コスト削減は依然として世界各国の企業において必要不可欠であり、回答者の大多数(71 パーセント)が 今後24 カ月間にコスト削減に関する取り組みを行う予定であることが明らかになりました。

しかし経営幹部たちの間で、この主流であった考え方が変化しつつある、という興味深い結果も判明しました。以前は「成長のためのコスト削減」がコスト管理の基本的な考え方でしたが、現在は「変革のためのコスト削減」という考え方が浮上しつつあります。詳細は報告書を参照ください。

 

Deloitte’s second biennial global cost survey〔PDF, 16.4MB〕

デジタルディスラプションを基点とした「変革のためのコスト削減」

  • デジタルリスクがトップへと躍進。今日ではデジタルディスラプションは最大の外部リスクとして広く認識されており、今年度のサーベイでは全世界の回答者の61 パーセントがこれに言及しています(2017年のわずか6パーセントから上昇)。
  • デジタルディスラプションとイノベーションは技術導入を促進。数々のデジタル技術の導入が、今後24 カ月間で急激に増加すると予想されています。
  •  デジタルソリューションはコスト管理にも適応。コスト管理のアプローチは、時間とともに次第に洗練されたものになってきており、デジタルコストソリューションは成熟の過程にあるものの、最高レベルのコスト管理を可能にします。
  • 出現し始めた変革という焦点。デロイトの2017年のサーベイでは、世界中で多数の企業が、改善しつつある経済状況の中で、自らの成長戦略に投資するためにコスト削減を追求するという「成長のためのコスト削減」という考え方に基づいて、コスト管理を行っていることが明らかになりました。今年度のサーベイの結果は、「成長のためのコスト削減」という考え方が、「変革のためのコスト削減」という考え方に拡大されつつあることを示しています。
  • 自動化とその他のデジタル技術がコスト削減において主導的な役割を果たす。過去 24 カ月間で、RPAとコグニティブ(例えば、AIや機械学習)が、コスト削減のための最も一般的なデジタル技術として浮上してきています。

「変革のためのコスト削減」は、成長と防御の両方に寄与

  • デジタルディスラプションとイノベーションは、ビジネス環境を世界的に変えつつあり、その影響は増大するばかりです。
  • 企業は今日、自らのコスト構造を最適化し、持続可能なコスト削減を可能にするために、デジタル技術を変革のけん引役として利用する必要があります。 
  • このような変革は、企業が、不可避な景気サイクルの変動に備える一方、確実に成長目標を達成するための手段として必要不可欠となっています。また企業を、ディスラプトされる者(disrupted)ではなく、ディスラプトする者(disrupter)として、デジタルディスラプションを活用する立場に位置付けることとなります。

主なインサイト

コスト削減目標と結果

コスト削減目標は上昇。3分の2以上の回答者(68 パーセント)が10パーセント以上のコスト削減目標としており、これは前回2017年度調査の55パーセントから上昇しています。また3分の1近くの回答者(31 パーセント)が、20 パーセント以上のコスト削減目標としています。

失敗率もまた上昇。回答者の81パーセントは、自らのコスト削減目標を完全に達成できなかったとしています (2017年度調査から18ポイント悪化)。自らのコスト削減目標を完全に達成できなかった企業の3分の2近く(65 パーセント)は、25 パーセント以上の未達、すなわち自らのコスト削減目標の75 パーセント未満しか達成できていません。一方、自らのコスト削減目標を上回ったと回答したのは4パーセントのみでした。
 

最大の外部・内部リスク

デジタルリスクが外部リスクのトップに。2017年度調査ではマクロ経済の懸念が最大の外部リスクでした。しかし今回調査では、サイバーセキュリティとデジタルディスラプションという2つのデジタル関連のリスクにとって代わられています。デジタルディスラプションは、2017年度調査では米国以外ではかろうじて認識されるにすぎないものでしたが、今回調査では、中南米を除く全地域で、最大の外部リスクとして認識されています。

情報システムが最大の内部リスク。情報システムの信頼性と機能性が、全世界(とりわけ、米国と欧州)において最大の内部リスクとなっています。以下、内部リスクは僅差で人材の採用・研修・リテンション、次いでビジネスの継続性を確実にするガバナンス・プロセス・システムの欠如、と続きます。
 

期待、けん引役、焦点となる分野

成長期待は、引き続き非常に堅調に推移。回答者の86パーセントが過去24 カ月間で自社の収益が増加したと答えており、同数の企業が自社の収益が今後24 カ月間で増加すると予想しています。

成長のためのコスト削減は、変革のためのコスト削減へと発展。売上成長、製品の収益性、技術導入は、今後24 カ月間の戦略的最優先課題として同率回答となっています。技術導入のさらなる重点化は、変化のためのコスト管理という新たな目的を反映しています。

引き続き成長と競争が第一のけん引役であり続ける。今後24 カ月間におけるコスト管理のけん引役のトップ3は、成長分野への必要な投資、業界内の激しい競争への原資確保、国際的な成長機会の拡大であることが予想されています。

テクノロジーケイパビリティが主な焦点。コグニティブ・AI、ERP、そしてとりわけ、自動化に焦点を当てることで、自らのケイパビリティ向上を図ってきました。これら技術に焦点をあてることは、変革のためのコスト削減の考え方と一貫しており、企業はさらに多くの時間、お金、取り組みをデジタル変革に資するケイパビリティに投資しています。

最大のコスト削減対策は大部分が戦術的なものであったが、今後は戦略的対策が優勢になる見込み。過去24 カ月間における最も一般的なコスト削減対策は、ビジネスプロセスの合理化、次いで組織構造の合理化と規定遵守の改善でした。しかし今後24 カ月間で、戦略的なコスト削減対策が優勢になる見込みであり、戦術的対策と戦略的対策の組み合わせが、よりバランスの取れた状態になります。

障壁と得られた教訓。実行力の欠如、次いで効果的なERPの欠如と実行不可能な目標が、コスト削減を成功させるにあたっての最大の障壁です。今回得られた最大の教訓は、データの可用性、信頼性、意思決定を可能にする技術への投資を行うこと、信頼できる追跡・報告プロセスの設計を行うこと、実行にあたりその実態に適合した目標の設定・調整を行うこと、です。
 

コスト削減についてその他、明らかになったこと

コスト管理の成熟レベルに成長の余地がある。約3分の2の回答者(65 パーセント)は、高度に成熟したコスト管理手法を有していません。これに関しては、米国が一歩先を行っており、米国の回答企業の50 パーセントが効率性とベストプラクティスを実現するために、コスト管理のポリシーと手続きの継続的な見直し・調整を行っており成熟度は高いと回答しています。

コスト削減の取り組みに関する新CEOの影響。一般的に、新CEOの任命によりコスト削減が現実化すると認識されていますが、サーベイ結果によれば、これによるコスト削減が実現する可能性は1パーセント増加するにすぎず、またその結果は、地域により広くばらつきがあるということを明らかにしています。

コスト削減に対する取り組みに関するM&A活動の影響。新CEOと同様、一般的に企業は合併により効率性とコスト削減を追及するため、M&A活動によりコスト削減が現実化すると認識されていますが、サーベイ結果によれば、M&Aはコスト削減が実現する可能性を7パーセント増加させるにすぎないことを明らかにしています。
 

ケーススタディ:デジタル変革の活用による、利益率のさらなる改善と最先端企業のステータス拡大

あるフォーチュングローバル100のバイオ医薬品企業は、業務の効率性、人員配置の効率性、コスト構造、コンプライアンス/統制の実施など、多くの分野で最先端のリーダーでした。しかし伝統的な効率性改善手法による10年におよぶ大がかりなコスト削減に取り組んできたにも関わらず、さらなるコスト削減の圧力に直面したため同企業はデジタルコストソリューションを活用することにしました。

新たなコスト削減の目的は、ベストインクラス企業のとしてのリーダーシップを維持しつつ、「変革のためのコスト削減」と利益率のさらなる改善を行うことでした。利益率の改善戦略には、デジタルによって可能となる全社的なオペレーションの変革が含まれていました。

同戦略は、以下の要素から構成されていました。

  • フロントオフィスとバックオフィスの両方をつなぐ実践的なデジタル戦略を構築する。財務から開始し、臨床開発などの研究開発にまで拡大させる。
  • スケーラブルな、全社ガバナンスモデルを策定する。
  • 意欲的な変革指針を掲げ、実施する。
  • プロトタイプから実用可能なソリューションへの移行を推進するための組織として、エンタープライズ・ハブ(AI/コグニティブのセンターオブエクセレンス:CoE)を構築する。

変革の一環として、300名以上の上級リーダーがデジタル技術に関する教育を受けました。現在、同社は、世界最大級の変革プログラムを実行しています。同プログラムは300以上の自動化プログラムから成り、既に100以上の自動化が稼働しています。また、ブロックチェーン、コグニティブ、予測分析、その他新たなソリューションについて、機能性、成熟度、および適合性を理解すべく、かつこれらを自社の変革ロードマップに組み込むべく、試行導入を成功させています。

大規模なデジタル変革を達成・維持するために、同企業はより全社的な中核となる研究拠点(CoE)を設置するだけでなく、財務部内にもCoEを構築し、拡張しました。

全般的な影響

  • 利益率の改善—10-15パーセントのベースラインコストの削減。
  • グローバル規模での自動化—300以上のRPAによる自動化を試み、現在は100以上の自動化が稼働中
  • 新たなソリューションの成熟—新たに出現するデジタルソリューションに関する試行導入に成功(例:自然言語生成、ブロックチェーン)
  • ケイパビリティの構築—ロボティクスとAI/コグニティブに関するCoEを含む、同企業のケイパビリティの構築
  • 統制とコンプライアンス—現行の統制および内部/外部監査に対するRPAの影響を評価する枠組みの構築
  • デジタルインテグレーション—「未来の働き方」活動を通じた、日々の業務へのデジタル活用。これには職場におけるデジタル技術の導入、デジタルタレントの革新的な獲得を含む
  • デジタルM&A—将来のすべてのM&A取引に対するデジタルの統合
     

スポットライト:コスト管理に適用されるデジタル技術ソリューションの導入状況

スポットライト:コスト管理に適用されるデジタル技術ソリューションの導入状況
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さまざまな技術を導入する理由とその結果

クラウド

導入理由
• データセキュリティの強化と業務管理の改善(64 パーセント)
• コスト削減と生産性の向上(63 パーセント)
• 製品/サービスのケイパビリティの向上(48 パーセント)
• 収益増加(43 パーセント)

導入結果
• 56パーセントがクラウドは期待どおりと回答
• 29パーセントがクラウドは期待以上と回答

自動化/RPA

導入理由
• コスト削減と生産性の向上(80 パーセント)
• データセキュリティの強化と業務管理の改善(69 パーセント)
• 収益増加(57 パーセント)
• 製品/サービスのケイパビリティの向上(53 パーセント)

導入結果
• 41 パーセントがRPAは期待どおりと回答
• 35 パーセントがRPAは期待以上と回答

コグニティブ/AI

導入理由
• コスト削減と生産性の向上(76 パーセント)
• データセキュリティの強化と業務管理の改善(68 パーセント)
• 製品/サービスのケイパビリティの向上(59 パーセント)
• 収益増加(56 パーセント)

導入結果
• 36 パーセントがコグニティブ/AIは期待どおりと回答
• 47 パーセントがコグニティブ/AIは期待以上と回答

「デジタルリーダーが任命されている企業では、デジタル技術の実装は140パーセント高い。RPAは、デジタルリーダーの存在に最も大きな影響を受ける(実装で222パーセント増加)。」

 

今後のコスト管理:「変革のためのコスト削減」戦略

ビジネスを取り巻く環境が急速に変化する中、企業はビジネスモデルやオペレーション、顧客向け活動、サービスの品質、業務効率、人材の活用、および全般的なカスタマーエクスペリエンスまで、ビジネスのあらゆる側面を変革することが必要です。

「変革のためのコスト削減」は、こうした変革を進めるためのきっかけを作り出すとともに、変革の原資を捻出するものです。

「変革のためのコスト削減」は、コスト削減と収益成長の両方を推進することに加えて、より強力な、防御指向のコスト管理活動の基礎をもたらし、企業はデジタルディスラプションと景気減速に対する抵抗力を高めることができます。

企業は、引き続き好調な経済環境を活用しながら、「変革のためのコスト削減」の考え方を通じて、俊敏性を持ちつつ、将来の景気減速にも備えていくことが必要なのです。
 

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