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中小企業に対する優遇税制(法人税関係)の概要
〜平成28年度税制改正を受けて〜

Japan Tax Newsletter:2016年6月1日号

本ニュースレターでは、中小企業に対する優遇税制(法人税関係)のうち重要項目について、平成28年度税制改正と絡めて概要を解説する。なお、「中小法人等」・「中小企業者等」の判定および各制度の適用要件について、十分に規定を確認の上で適用の是否を検討されたい。(Japan Tax Newsletter:2016年6月1日号)

1 はじめに

本ニュースレターでは、中小企業に対する優遇税制(法人税関係)のうち重要項目について、平成28年度税制改正1と絡めて概要を解説する。なお、「中小法人等」・「中小企業者等」の判定および各制度の適用要件について、十分に規定を確認の上で適用の是否を検討されたい。

なお、本ニュースレターは、基本的に普通法人2である内国法人を前提として記載しているため、ご留意いただきたい。

中小企業に対する主な優遇税制は次のとおりである。

法人税法上の「中小法人等」に適用

租税特別措置法上の「中小企業者等」に適用

法人税率の軽減(法法66)

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入(措法67の5)

欠損金の繰越控除制度の特例(法法57)

試験研究費の税額控除の特例(中小企業技術基盤強化税制)(措法42の4)

欠損金の繰戻還付制度(法法80、措法66の13)

環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)(措法42の5)

交際費等の損金不算入制度の特例(措法61の4)

中小企業投資促進税制(措法42の6)

特定同族会社の留保金課税の適用除外(法法67)

雇用促進税制の特例(措法42の12)

貸倒引当金の適用(法法52)

商業・サービス業・農林水産業活性化税制
(措法42の12の3)

 

所得拡大促進税制の特例(措42の12の4)

生産性向上設備投資促進税制の特例(措法42の12の5)

新たな機械装置の投資に係る固定資産税の特例(地法附則15)3


1 所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号、平成28年3月31日公布)による税制改正。
2 公共法人、公益法人等、および協同組合等以外の法人をいう。
3「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」により地法附則15に規定され、中小企業者である法人および個人に適用される。平成28年5月24日国会可決・成立。

2 「中小法人等」、「中小企業者等」とは

中小企業に対する優遇税制の適用を検討するにあたっては、その対象企業に該当するかが重要であるため、その定義について確認する。以下のように、法人税法上の「中小法人等」と租税特別措置法上の「中小企業者等」とは定義が異なり、優遇税制の根拠法令により対象法人が異なるため、注意が必要である。

まず、法人税法上の「中小法人等」の定義は次のとおりである。(法法57)

  • 普通法人(投資法人、特定目的会社及び法法4の7に規定する受託法人を除く)のうち資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの(大法人との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人、普通法人との間に完全支配関係があるすべての大法人が有する株式及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれか一の法人と当該普通法人との間に当該いずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人を除く)又は資本若しくは出資を有しないもの(保険業法に規定する相互会社を除く)
  • 公益法人等又は協同組合等
  • 人格の無い社団等


つまり、普通法人で資本または出資を有する法人については、次のすべてを満たす法人が中小法人等に該当する。

  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下
  • 資本金の額または出資金の額が5億円以上である法人等(大法人)による完全支配関係がない
  • 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を直接または間接に保有されていない

一方、租税特別措置法上の「中小企業者」とは、以下のような法人であり、法人税法上の「中小法人等」とは必ずしも一致しない。(措法42の4、措令27の4)

資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人以下の法人とする。

  • その発行済株式又は出資の総数又は総額の二分の一以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が一億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)の所有に属している法人
  • その発行済株式又は出資の総数又は総額の三分の二以上が大規模法人の所有に属している法人

 

つまり、資本または出資を有する法人については、次のすべてを満たす法人が中小企業者に該当する。

  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下
  • 発行済株式の1/2以上が同一の大規模法人(資本金1億円超の法人または資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人)に所有されていない
  • 発行済株式の2/3以上が複数の大規模法人に所有されていない

この中で、特に中小企業者または農業協同組合等で青色申告書を提出するものは「中小企業者等」と定義されている。(措法42の4他)(以下「中小企業者等」)

以下において中小企業に対する優遇税制を解説していくが、それぞれ適用対象法人が異なるため、「中小法人等」や「中小企業者等」の要件を満たすかどうかについて確認を行い、適切に判断していく必要がある。

3 法人税法上の「中小法人等」に適用される優遇税制の概要と平成28年度税制改正

(1) 法人税率の軽減(法法66)

中小法人等の年800万円以下の所得については軽減税率(15%)が適用される。これについては平成28年度税制改正は行われておらず、平成29年3月31日までに開始する各事業年度について適用される。

なお、中小法人等の年800万円超の所得については特に優遇税制は存在せず、平成28年度税制改正による法人税率改正を受け、平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度については23.4%、平成30年4月1日以降開始する事業年度より23.2%が適用される。

以上の結果、中小法人等に適用される法人税率は次のとおりである。

区分

改正前

改正後

適用関係

平成27年度

平成28年度

平成30年度

年800万円以下の部分

15.0%

15.0%

19.0%

年800万円超の部分

23.9%

23.4%

23.2%


(2) 欠損金の繰越控除制度の特例(法法57)

青色申告書を提出する法人についての繰越欠損金の控除限度額は、大法人については所得に対する一定割合とされているところ、中小法人等については所得の全額とする特例が設けられており、この点については平成28年度税制改正は行われていない。なお、大法人の控除限度額については、平成27年度税制改正で講じられた繰越欠損金の控除限度額の引下げについて、平成28年度税制改正により段階的な引下げとする緩和措置が取られた。

また、平成27年度税制改正で講じられた欠損金の繰越期間を9年から10年に延長する措置については、その施行日を平成30年4月1日に1年延長し、同日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額から適用することとされた。この改正については適用対象が大法人に限定されないため、中小法人等についても適用される。

欠損金額が生じた事業年度

繰越期間

改正前

改正後

平成20年4月1日以後終了事業年度~
平成29年4月1日前開始事業年度

9年

9年

平成29年4月1日以後開始事業年度~
平成30年4月1日前開始事業年度

10年

9年

平成30年4月1日以後開始事業年度

10年

10年


(3) 欠損金の繰戻還付制度(法法80、措法66の13)

欠損金の繰戻還付制度は、青色申告書を提出する法人について欠損金が生じた場合に、前1年以内開始事業年度の分として納めた法人税から、欠損金相当分だけ還付を受けることができるものであるが、中小法人等以外の法人については基本的に適用が停止されている。

平成28年度税制改正においては、この中小法人等以外の法人の欠損金の繰戻還付の不適用措置について、適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までに終了する各事業年度とされた。

中小法人等については引き続き欠損金の繰戻還付を適用することができ、改正は無い。

(4) 交際費等の損金不算入制度の特例(措法61の4)

交際費等については基本的に損金不算入とされており、大法人については接待飲食費の50%の損金算入のみが認められているところ、中小法人等4については年800万円以下の交際費等の全額損金算入の特例も設けられており、どちらかが選択適用できる。

平成28年度税制改正においては、交際費等の損金不算入制度について適用期限が平成30年3月31日までに開始する各事業年度に2年延長された。中小法人等に係る損金算入の特例についても同様である。

(5) 特定同族会社の留保金課税の適用除外(法法67)

特定同族会社については一定の水準を超えて内部留保している金額についての課税が行われることとされているが、中小法人等についてはその適用除外となっている。

平成28年度税制改正は特に行われていない。

(6) 貸倒引当金の適用(法法52)

法人税法上の貸倒引当金については金融業を営む法人等を除いて廃止されているが、中小法人等については引き続き計上が可能となっている。

平成28年度税制改正は特に行われていない。

4 資本または出資を有しないものについては、貸借対照表上の簿価純資産額(当期利益は控除し当期欠損は加算する)の60%相当額が1億円以下の場合に、中小法人等として扱われる。

4 租税特別措置法上の「中小企業者等」に適用される優遇税制の概要と平成28年度税制改正

(1) 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入(措法67の5)

中小企業者等は、取得価額が30万円未満の減価償却資産(少額減価償却資産)について、即時に損金算入が可能とされている。平成28年度税制改正においては、この適用対象法人から、常時使用する従業員が1,000人を超える法人が除外された上で、適用期限が平成30年3月31日まで2年延長された。この改正は平成28年4月1日以降に取得した少額減価償却資産から適用される

(2) 試験研究費の税額控除の特例(中小企業技術基盤強化税制)(措法42の4)

試験研究費の税額控除について、試験研究費の総額に対する税額控除率が通常8~10%のところ、中小企業者等については12%に優遇されている。

平成28年度税制改正は行われていない。

(3) 環境関連投資促進税制の税額控除(措法42の5)

青色申告書を提出する法人が省エネ・低炭素設備等を導入した場合に特別償却が認められる制度であるが、中小企業者等については7%の税額控除との選択適用が認められている。

平成28年度税制改正においては、売電用の太陽光発電設備の除外等が行われた上で、適用期限を平成30年3月31日に2年延長された。

(4) 中小企業投資促進税制(措法42の6)

中小事業者等が一定の機械装置等を取得等して指定事業の用に供した場合に、特別償却または7%の税額控除を選択適用できるものである。また、生産性向上に資する一定の設備については、上乗せ措置として、即時償却または10%の税額控除の適用を受けることができる。

 

通常措置

上乗せ措置
(生産性向上に資する一定の設備)

特別償却

税額控除

特別償却

税額控除

資本金3000万円以下の法人

30%

7%

即時償却

10%

資本金3000万円超1億円以下の法人

30%

適用なし

即時償却

7%


当該税制は平成29年3月31日までに対象設備を取得等して指定事業の用に供した場合に適用されることとされており、上記の取扱いについては平成28年度税制改正による変更は無い。

(5) 雇用促進税制の特例(措法42の12)

青色申告書を提出する法人が雇用者を増加させるなど一定の要件を満たした場合に、増加雇用者数に応じた税額控除が受けられるものであり、中小企業者等については当期の控除前法人税額の20%を上限とする(その他の法人については10%を上限)措置が設けられている。

平成28年度税制改正においては、増加雇用者数について、対象地域・対象雇用者を限定し縮小した上で、適用期限が平成30年3月31日に2年延長され、所得拡大税制との重複適用が認められた。

(6) 商業・サービス業・農林水産業活性化税制(措法42の12の3)

中小企業者等またはこれに準ずる一定の法人で青色申告書を提出するものが、アドバイス機関(商業・サービス業・農林水産業に関連する一定の機関)から経営改善に関する指導および助言を受け、平成29年3月31日までに対象設備を取得等して指定事業の用に供した場合に、特別償却または税額控除が選択適用できる制度である。

平成28年度税制改正は行われていない。

(7) 所得拡大促進税制の特例(措42の12の4)

青色申告書を提出する法人が従業員への給与等の支給を増加し、一定の要件を満たす場合に、その増加額の10%相当分の税額控除ができる制度である。

中小企業者等については要件が緩和されており、給与等支給額増加割合の要件が平成28年度・29年度について3%とされている(その他の法人の場合は4%または5%)。また、これに加え、控除限度額について当期の控除前法人税額の20%を上限とする(その他の法人については10%を上限)措置が設けられている。

平成28年度税制改正においては、雇用促進税制との重複適用を認める改正が行われた。

(8) 生産性向上設備投資促進税制の特例(措法42の12の5)

生産性向上設備投資促進税制については、青色申告書を提出する法人が平成29年3月31日までに、一定の設備を取得等して事業供用した場合に即時償却や税額控除が適用できるものであるが、中小企業者等についてはその設備要件を緩和する特例5が設けられている。ただし、この税制は平成28年3月31日までで一部措置については適用が終了し、残る措置についても平成29年3月31日の適用期限をもって廃止される。

(9) 新たな機械装置の投資に係る固定資産税の特例(地法附則15)

平成28年5月24日に「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」(以下「当該法律」)が可決・成立し、地方税法附則により当該特例が設けられることが決定した。

中小企業者等が当該法律施行の日から平成31年3月31日までの期間内に、一定の認定経営力向上計画に基づき取得した一定の機械装置(経営力向上設備等)について、最初の3年間、固定資産税の課税標準を1/2に軽減する特例措置となっている。 

5 中小企業者等については、A類型(先端設備)の対象設備の範囲が広くなる、およびB類型(生産ラインやオペレーションの改善に資する設備)の認定要件が緩和される内容の特例がある。

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