ナレッジ

欠損法人の外形標準課税における所得拡大促進税制と税率改正に伴う軽減措置について

『国税速報』平成29年4月3日号

平成27年度および平成28年度の税制改正により外形標準課税が拡大され、所得割の税率は引き下げられたものの付加価値割・資本割の税率は段階的に引き上げられました。この改正により、一般的に「稼ぐ力」のある企業においては法人事業税が減税となる可能性がありますが、外形標準課税の割合が大きい企業や赤字企業においては法人事業税が増税となる場合があります。(『国税速報』平成 29年4月3日号)

【疑問相談】地方税

「欠損法人の外形標準課税における所得拡大促進税制と税率改正に伴う軽減措置について」

Question:
弊社は資本金5億円、12月決算の小売業を営む日本法人です。平成28年度は給与支払額は増加したのですが、欠損のため法人税における所得拡大促進税制の適用はありません。この場合でも、外形標準課税における所得拡大促進税制は適用できるのでしょうか?

また、欠損法人であっても、付加価値割・資本割の税率引上げに伴って法人事業税の負担は増えるのでしょうか?

Answer:
欠損のため法人税における所得拡大促進税制の特別控除がない法人であっても、一定の要件を満たす場合には外形標準課税における所得拡大促進税制の適用を受けることができます。

また、法人事業税の負担変動による影響を緩和するため、事業規模が一定以下の法人については、平成31年3月31日までに開始する事業年度において法人事業税の負担軽減措置が適用されます。

【解説】

1 税制改正による外形標準課税の拡大

平成27年度および平成28年度の税制改正により外形標準課税が拡大され、所得割の税率は引き下げられたものの付加価値割・資本割の税率は段階的に引き上げられました。この改正により、一般的に「稼ぐ力」のある企業においては法人事業税が減税となる可能性がありますが、外形標準課税の割合が大きい企業や赤字企業においては法人事業税が増税となる場合があります。

(表1)法人事業税の税率表(東京都の例)

開始事業年度

H27.4.1~H28.3.31

H28.4.1~H29.3.31



400万円以下

1.755%

0.395%

400万円超
800万円以下

2.53%

0.635%

800万円超

3.4%

0.88%

軽減税率
不適用法人

3.4%

0.88%

付加価値割

0.756%

1.26%

資本割

0.315%

0.525%


このように法人事業税の負担が増加する一定の法人に対しては、平成28年4月から3年間、税負担の変動の影響を緩和する措置がとられています。詳しくは下記4をご参照ください。

また、法人事業税付加価値割における所得拡大促進税制は、付加価値割の課税標準から給与等支給額の増加分を控除できる制度ですので、付加価値割の課税標準がゼロでない限りは適用可能です。詳しくは下記2をご参照ください。

2 法人事業税付加価値割における所得拡大促進税制

平成27年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において下記イとロを満たす場合に、増加促進割合(雇用者給与等支給増加額(地法附則9⑬⑭)の基準雇用者給与等支給額(措法42の12の4②四、68の15の5②四)に対する割合)が一定以上(下表参照)である法人は、その雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除することができます。

増加促進 割合
クリックすると大きな画像が開きます

開始事業
年度

H27.4.1

H28.3.31

H28.4.1

H29.3.31

H29.4.1

H30.3.31

増加促進
割合

3%

4%

5%


この要件については、法人税と同様です。次の3にて具体例を挙げて説明します。

3 所得拡大促進税制の適用例

ケース1     <28年12月決算>

単年度損益
(地法72の18)△100,000,000円A
報酬給与額
(地法72の15) 165,000,000円B
純支払利子
(地法72の16)     8,000,000円C
純支払賃借料
(地法72の17)   65,000,000円D
雇用者給与等支給額
         140,000,000円E
基準雇用者給与等支給額
         100,000,000円F
雇用者給与等支給増加額
       E-F=40,000,000円G
収益配分額
   B+C+D=238,000,000円H

増加促進割合が
G÷F=40.0%>3%なので
所得拡大促進税制の適用あり。


所得拡大促進税制を慮しない場合、付加価値割の課税標準(付加価値額)は、単年度損益Aと収益配分額Hの合計額(138百万円)になりますが、所得拡大促進税制を慮すると、上記の138百万円からGを引いた98百万円が課税標準(付加価値額)となります。このように、単年度損益と収益配分額の合計がゼロにならない限り、所得拡大促進税制は適用可能です(A+HがGよりも小さい場合には、所得拡大促進税制の適用額はGまでとなります。)。

<雇用安定控除がある場合>

雇用安定控除額がある法人については、雇用安定控除と所得拡大促進税制が重複しないよう調整されます。

ケース2     <28年12月決算>

単年度損益  △ 100,000,000円I
報酬給与額    200,000,000円J
純支払利子           8,000,000円K
純支払賃借料  30,000,000円L
雇用者給与等支給額
        140,000,000円M
基準雇用者給与等支給額
        100,000,000円N
雇用者給与等支給増加額
      M-N=40,000,000円O
収益配分額
  J+K+L=238,000,000円P

増加促進割合が
O÷N=40.0%>3%なので
所得拡大促進税制の適用あり。

 

この場合、J>P×70%=166,600,000円(Q)となり、J-Q=33,400,000円(R)が雇用安定控除額となります。

雇用者給与等支給増加額Oは収益配分額に対する雇用安定控除額の割合分だけ調整されます。

O×(P-R)÷ P=34,386,554円(S)→調整後の雇用者給与等支給増加額よって、この場合の付加価値割の課税標
準は、単年度損益Iと収益配分額Pの合計額(138百万円)からR とS を引いて70,213,000円となります。

4 法人事業税の負担変動の軽減措置

外形標準課税法人のうち調整後付加価値額が40億円未満の法人については、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する事業年度において、付加価値割額・資本割額・所得割額の合計額(基準法人事業税額)が旧税率(表3)を適用して計算した付加価値割額・資本割額・所得割額の合計額を超える場合に、その超過額の一定割合相当額を事業税額から控除する措置がとられています。

調整後付加価値額とは付加価値額に12を掛けて当該事業年度の月数で除した額です。上記3のケース1の場合で当該事業年度の月数を12とすると、調整後付加価値額は98,000,000円となります。

表1
クリックすると大きな画像が開きます

(表2) 各事業年度に適用される割合

開始事業年度

割合

H27.4.1~H28.3.31

1╱2

H28.4.1~H29.3.31

3╱4

H29.4.1~H30.3.31

1╱2

H30.4.1~H31.3.31

1╱4


(表3) 旧税率表(東京都の例)

開始事業年度

H27.4.1~H28.3.31

H28.4.1~H29.3.31

適用する旧税率

H27.3.31現在の税率

H28.3.31現在の税率



400万円以下

2.39%

1.755%

400万円超
800万円以下

3.475%

2.53%

800万円超および軽減税率
不適用法人

4.66%

3.4%

付加価値割

0.504%

0.756%

資本割

0.21%

0.315%

地方法人特別税

93.5%


ケース1の場合、新税率では下記の計算のとおり、事業税が2,315,800円となります。旧税率では1,543,900円となり、負担変動により771,900円の増額となりますが、この差額に表2の割合1 ╱2 を掛けた386,000円を税額控除できることとなります。よって、税額控除後の事業税額は、2,315,800円から386,000円を控除した1,929,800円となります。

課税標準

新税率

税額

旧税率

税額

所得割

0

3.4% 

0

4.66%

0

付加価値割

98,000,000

0.756%

740,800

0.504%

493,900

資本割

500,000,000

0.315%

1,575,000

0.21%

1,050,000

事業税仮計

2,315,800
(T)

1,543,900
(U)

 

新税率での税額と旧税率での税率の差額(T)-(U)=771,900(V)
税額控除額→(V)×1╱ 2=386,000(W)
(百円未満切上げ)税額控除後事業税額は(T)-(W)1,929,8000円

PDF

こちらから記事の全文がダウンロードができます。

 

 

 

 

※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

(978KB, PDF)
お役に立ちましたか?