最新動向/市場予測

「教育」で達成するSDGs

~ESDによる特色ある学校づくり 豊橋市の事例~

2017年11月、愛知県豊橋市において「ユネスコスクール豊橋大会」が開催された。全国から関係者が集まり、豊橋市内の4校での公開授業、シンポジウム、講演会、ポスターセッションなど、ESDの実践を学び、教員同士が活発な意見交換のもとで学び合う、貴重なチャンスとなった。デロイト トーマツの教育セクターでは、豊橋市のこうしたSDGs / ESDの取り組みを応援していきたい。

1. ESDによる特色ある学校づくり

2017年11月、愛知県豊橋市において「ユネスコスクール大会」が開催された。全国から関係者が集まり、豊橋市内の4校での公開授業、シンポジウム、講演会、ポスターセッションなど、ESD (Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)活動の実践を学び、教員同士が活発な意見交換のもとで学び合う、貴重な機会となった。

豊橋市の市立小中学校全74校は全てユネスコスクールである。国内で最も大規模なユネスコスクール加盟都市である。ユネスコスクールへの全校加盟が実現したのは、2015年。豊橋市では、「学校の自主性・自立性の発揮」「地域ぐるみの教育システムの構築」を目指し、2000年より「特色ある学校づくり推進事業」に取り組んできた。そうした中で、2014年に愛知県で開催された「ESDに関するユネスコ世界会議」を受け、ユネスコスクールの趣旨やESDの理念に共感し、市内で行われている「特色ある学校づくり」を一層推進することができるとの認識に立ち、ユネスコスクールへの加盟を進めた。以下では、ESDを通じた「特色ある学校づくり」を進める豊橋市内の学校の取組みのうち、特徴的な事例を取り上げる。

2. ユネスコスクールでの取組み(老津(おいつ)小学校、章南(しょうなん)中学校の事例)

■豊橋市立老津小学校の取組み

豊橋市立老津小学校では、2010年より、「環境への意識を高め、地域への思いを深める子どもの育成~小中一貫環境カリキュラムを柱とする教育活動の工夫を通して~」というテーマで、隣接した小中学校と連携した環境教育に取り組んでいる。ここでの「環境」は、「子どもたちが暮らす地域」という意味で使われている。老津小学校での環境教育は、教科横断的かつ、計画的に進められている。表に、老津小学校の環境教育を通して学習段階で育んでいく姿と各学年で身に付ける力が示されている。表に記載のあるとおり、老津小学校では、発達段階に応じて、子どもたちが目的に沿った力を身に付けられるよう、各学年で、「環境カレンダー(ESDカレンダー)」を作成し、環境学習の柱としている。具体的な取組みには、例えば、2年生で行われる「野菜、だーい好き!」では、野菜作りが盛んな地域性を踏まえ、野菜好きになるよう、子ども一人ひとりが育てたい野菜を決め、栽培活動をスタートする。地域の農家の方々を「野菜博士」と仰ぎ、コツなどを教えていただきながら、おいしい野菜を育てるために熱心に取り組んでいる。作った野菜を収穫し、栄養士の方に野菜の栄養素等を教えていただき、保護者と一緒にカレーを作り、みんなで一緒に食す。こうした一連の取組みを通じて、多くの子どもたちの野菜への見方が変わり、野菜好きの子どもが増えるなどの効果が見られたとの報告があった。本取組みの特徴としては、地域の特性(野菜作りの盛んな地域)をうまく生かし、地域の方々に野菜博士として、子どもたちの活動に参加していただいたり、保護者と一緒に収穫した野菜を味わうなど、学びを地域や保護者等に開かれたものにしているところなどが挙げられる。

※画像をクリックすると拡大表示します

■豊橋市立章南中学校

章南中学校では、2010年度から、「環境への意識を高め、地域への思いを深める生徒の育成」を目標に掲げ、全学年の総合的な学習の時間に環境教育に取り組んでいる。具体的には、校区にある汐川干潟に関わる活動を中心にしたカリキュラムを編成し、実施している。汐川干潟は豊橋市と隣接する田原市にまたがる三河湾の干潟である。中部地方最大の干潟で、日本有数の渡り鳥の飛来地である。このような地域特性をうまく活用し、自分たちの住む地域に愛着を持つ、地域人材の育成を目指している。

章南中学校で行われている学習活動は、故郷の自然環境の素晴らしさに気づく活動(1年生)、干潟の価値を知る活動(1年生)、干潟を守る活動(2年生)、持続可能な干潟保全活動(3年生)に分けられる。これらの一連の活動では、実際に活動している地域の方に取材をしたり、自ら現地に足を運んで、自分の五感を使って理解することを重要視している。例えば、干潟の価値を知る活動の中で、生徒それぞれが干潟の課題(例えばゴミがたくさん落ちていることなど)に気づき、その課題を解決するために、干潟を守る活動の中で、自分たちにできることに主体的に取り組む。持続可能な干潟保全活動では、こうした生徒同士の活動を地域に広げていくためにはどうしたらよいか具体的に考え、協力者を募り、ともに実践する。そして、こうした一連の取組みを、自分たち自身で全国、全世界に発信し、開かれた学びとする工夫がされている。

3. 結びにかえて

本レポートでは、豊橋市におけるESDについて、主にユネスコスクールの取組みから紹介した。豊橋市では、地域の特色を生かしたESDの優れた実践が多く行われており、現在ESDに取り組んでいる、もしくはこれから取り組もうとしている他地域にとっても有意義な示唆を与えてくれると思われる。今後も、示唆に富んだ特色を生かしたESDの取組みを期待したい。

教育業界のアドバイザリーサービス・事例紹介等に関するお問い合わせはこちら

有限責任監査法人トーマツ
ガバメント&パブリックサービシーズ 教育セクター(Education)
シニアマネジャー:吉田 圭造 / スタッフ:吉村 典子
Email: education.advisory@tohmatsu.co.jp

お役に立ちましたか?