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世界大学ランキング

国際比較でみる日本の大学

教育のグローバル化により、各国の大学は世界中から学生を集める時代となっている中、今年も世界大学ランキングが公表されました。 今回は最新の世界大学ランキング2022をもとに、日本の大学の現状を解説します。

執筆者: 公認会計士 中居紅美

 

世界大学ランキングの発表

教育のグローバル化により世界の留学生人数は増加傾向にあり、各大学が世界から優秀な学生を集めるために様々な取組を行っています。

そのような環境において、様々な機関が世界大学ランキングを公表していますが、今回はイギリスの高等教育情報誌「Times Higher Education」(以下、「THE」という)が2021年9月に発表した「World University Rankings 2022」を取り上げます。

THEの世界大学ランキングは以下の5分野を評価基準とし、これに基づくスコアを算出し、順位付けをしています。

 

【図1】THE世界大学ランキングの評価基準

分類と指標
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出典:THE世界大学ランキング日本版(外部サイト)をもとに執筆者が一部加工し作成

 

【参考】

  • THE (外部サイト)

 

 

SDGsと大学

世界大学ランキングのトップ10は米国及び英国の大学で占められています。そこで、まずはこれらの国と日本を比較してみましょう。

以下のグラフは、各国のトップ10の大学を各評価基準別に平均をとり、比較したものです。

日本の「産業界からの収入」のスコアは、米国並み、英国以上の評価となっています。

 

【図2】各国のトップ10の平均総合スコア(米国・英国との比較)

各国のトップ10の平均総合スコア
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出典:Times Higher Education(外部サイト)のデータをもとに執筆者が作成

 

 

次に、同じアジア圏である中国及び韓国と比較してみましょう。上記の米国及び英国と比べて、各評価基準のスコアが類似しています。また、中国は教育、研究及び論文引用のスコアが日本や韓国よりも高い水準となっています。

各国のトップ大学は、日本は東京大学の35位であり、中国はPeking University(北京大学)及びTsinghua University(清華大学)がともに16位、韓国はSeoul National University(ソウル大学校)の54位となっています。一方で、トップ以降の順位でみると、日本は400位までに6大学がランクインしているのに対し、中国及び韓国はそれぞれ10大学がランクインしています。その結果、各国のトップ10の大学のスコア平均を比較した場合には、日本が最も低くなっています。

また、日本は以前から国際性の低さが課題とされてきましたが、同じ非英語圏である中国や韓国の中でも低い水準となっています。

 

【図3】各国のトップ10の平均総合スコア(中国・韓国との比較)

各国のトップ10の平均総合スコア(中国・韓国との比較)
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出典:Times Higher Education(外部サイト)のデータをもとに執筆者が作成

 

 

中国、韓国における教育の国際化に向けた取組

中国は高等教育政策として、1990年前半から国際的に一定の影響力を持つこと等を目標とする211プロジェクトや世界一流の大学を目指す985プロジェクト等の重点政策に取組み、2017年には高等教育強国に向けた双一流大学計画を開始し、巨額の国家投資を行っています。また、THEのホームページには、世界の様々な大学の広告や求人情報が掲載されていますが、特に中国の大学の積極的な広報活動が目立ちます。

韓国では、2032年までに外国人留学生を20万人に増やす計画を行っており、奨励金の支給や学生ビザ申請の簡素化等に取組んでいます。また、韓国は英語で講義を行う大学が多く、世界大学ランキングにおいて韓国トップのソウル大学校やKorea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)もその一つです。

近年の少子化及び人口減少は日本だけでなく、中国や韓国でも同様に起こっています。これに伴い国内での大学志願者数の減少が予想され、今後はますます教育の国際競争が激しくなるでしょう。

 

 

日本における教育の国際化に向けた取組

日本においては、文部科学省を中心に大学の国際化のために様々な事業や取組がなされています。その中でも2014年度から開始した「スーパーグローバル大学創生支援事業」の成果が世界大学ランキングに効果として現れていると言われています。

「スーパーグローバル大学創生支援事業」は、世界大学ランキングトップ100を目指す力のある大学を対象とするタイプA(トップ型)と、これまでの実績をもとに更に先導的試行に挑戦し、日本社会のグローバル化を牽引する大学を対象とするタイプB(グローバル化牽引型)に分かれ、それぞれ13校、24校が採択されています。

以下の表は、日本の中で国際性が高い大学のトップ10を並べたものです。いずれの大学も、「スーパーグローバル大学創生支援事業」に採択されている大学です。

上述の通り、日本の国際性分野のスコアは比較的低いものの、これらのトップ10の大学をはじめとし、上昇傾向にあり一定の成果が出ています。

 

【図4】THE国際性スコアの日本のトップ10大学

THE国際性スコアの日本のトップ10大学
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出典:Times Higher Education(外部サイト)のデータをもとに執筆者が作成

 

 

【参考】

 

 

おわりに

日本学生の数は増えていくことが予想されます。

一方で、日本の学生の外国語能力の向上に伴い、例えば韓国のように英語で講義を行うこと等により、世界中からより多くの学生を集める大学に成長させることも可能と言えます。

今回取り上げた世界大学ランキングは特定の分野での評価であり、絶対的な価値を示すものではありませんが、世界大学ランキングを通じて大学力を強化し、アピールすることは一つの有効な手段と言えるでしょう。

当該記事は執筆者の私見であり、有限責任監査法人トーマツの公式見解ではありません。

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