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ウズベキスタンに関する基礎情報と日本との関係

ウズベキスタンにおけるビジネス環境改善と日本企業の進出可能性 (1)

筆者は昨年から今年にかけて、国際協力機構(JICA)からの委託調査のためウズベキスタンを2度にわたり訪問し、ウズベキスタン国内のビジネス環境に関して情報収集を行う機会を得た。そこで、今回から3回に分けて、ウズベキスタンのビジネス環境と日本企業の事業機会や今後のウズベキスタン国内の政策動向の注目事項等について考察を行う。

【第1回】

はじめに

第1回目の今回は、ウズベキスタンに関する基礎情報と日本との関係について紹介する。

ウズベキスタンはユーラシア大陸のほぼ中央に位置し、独立国家共同体*1(Commonwealth of Independent States:CIS)の中で第5位(日本の約1.2倍)の面積を誇り、同地域最大規模の人口(約3,000万人)を擁する中央アジア地域の主要国の1つである。

*1 バルト3国を除く旧ソ連諸国12カ国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、アゼルバイジャン、アルメニア、モルドバ、トルクメニスタン、ウクライナ、ジョージア(旧グルジア))によって結成されたゆるやかな国家連合体(コモンウェルス)。2009年8月にジョージアが脱退し、現在の加盟国は11か国。


図 1 ウズベキスタンの地理的位置

図 1 ウズベキスタンの地理的位置
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地理上の最大の特徴は、世界でリヒテンシュタインとウズベキスタンの2カ国しか該当しない「二重内陸国(海へ出るために国を2つ越える必要がある国家)」という点である。国内に目を向けると、内陸国の河川流域という特性上、海へと直接つながる国内河川がなく、領土の10%にも満たない灌漑農業用地や河川流域のオアシスに似た土地で集中的に農業が行われており、残りの領土の大部分がキジルクム砂漠と険しい山々で占められている。経済面では2000年半ばから主要輸出品である綿花、銅、金、天然ガスの交易条件の改善を背景に高い経済成長を維持している。2015年も、ロシア等の主要貿易相手国の景気低迷の影響が懸念されたが、上期の経済成長率は8.1%と好調を維持しており、今後も7-8%の高い経済成長が続く見込みである*2。一方、経済成長の内実を見ると、輸出品の市場価格高騰によって得た収入を公共事業に投資したことで実現した部分が多く、経済成長の根幹となる経済インフラをはじめとする産業基盤は脆弱なままである。そのため、国際市場における天然資源の価格変動といった外部環境の変化に対して脆弱であり、ウズベキスタン政府が目標として掲げている2030年までの高中所得国入り*3のためには、市場化を通じた経済成長と経済成長の恩恵を社会・経済インフラの開発に活用することが必要である。また、2016年9月には、ソ連時代末期から約27年にわたって同国を統治してきたイスラム・カリモフ大統領が逝去し、大統領選挙でシャフカト・ミルジョエフ首相が大統領に選出されるなど、国としても新たな一歩を踏み出そうとしている。

 

日-ウズベキスタン関係

日本とウズベキスタンとの国家レベルの外交関係は、1992年の国交樹立を契機に開始された。しかし、実際の両国関係は、第二次世界大戦後のシベリア抑留において、多くの大日本帝国軍人がウズベキスタンを含む中央アジアへと連行され、旧ソビエト連邦軍によって強制労働を課せられたことに始まる。この時、中央アジアへ連行された旧日本兵は、タシュケントを含むウズベキスタンの各地域で劇場やダムなどの施設建設作業に従事した。実は、日本ではあまり知られていないが、ウズベキスタン国内では日本製品に対する信頼が非常に高い。これは、上記のシベリアから連行された日本兵が首都タシュケント市内に建設した「ナボイ劇場」が、1966年のタシケント大地震にあっても倒壊しなかったため、日本製品への信頼が高まったためである。上記のナボイ劇場以外にも、ファルハドダムなど、旧日本兵が建設に携わったインフラが現在でも利用されている。

また、ウズベキスタン国内には青の都サマルカンドや旧市街地が世界遺産に登録されているブハラなど、日本人観光客に人気の高い観光名所が多く存在するため、2001年4月にウズベキスタン航空による日本とウズベキスタンの定期便が関西国際空港に初めて就航し、2002年11月には成田国際空港から週1回の定期便の運航が開始されている。また、2016年12月に署名された大統領令により、2017年4月1日より、ウズベキスタン入国時に必要となっていた観光査証(ビザ)が免除されることが決定された*4。こうした歴史的な関係に加え、2002年7月には来日したカリモフ大統領と小泉純一郎内閣総理大臣(当時)との会談時に、橋本龍太郎元首相に提案されたシルクロード外交を発展させる「日本とウズベキスタンとの間の友好、戦略的パートナーシップ、協力に関する共同声明」の発表と署名が行われた。この両国のパートナーシップ構築を契機に、2006年6月には日本-ウズベキスタン技術協力協定、2008年8月には日本-ウズベキスタン投資協定が締結され、経済・外交関係の緊密化が進んでいる。

*2 世界銀行による分析(http://www.worldbank.org/en/country/uzbekistan/overview
*3 世界銀行グループ、UNDP、ウズベキスタン政府の3者による共同イニシアティブ(https://ieg.worldbankgroup.org/Data/reports/clr_uzbekistan_2016.pdf
*4 新たなビザ免除国は15カ国。30日間までの滞在はビザが不要になる。日本以外では英独伊やオーストリア、デンマーク、スペイン、ルクセンブルク、オランダ、フィンランド、スイスの欧州10カ国に加え、オーストラリア、韓国、シンガポール、カナダが対象となる。一方、米仏中などからの観光客は55歳以上に限りビザを免除する。(時事通信2016年12月7日)
 

執筆者
有限責任監査法人トーマツ
アドバイザリー事業本部ODAインフラチーム 原田 幸憲

ウズベキスタンにおけるビジネス環境改善と日本企業の進出可能性(全3回)

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