調査レポート

気候レジリエントな都市の構築

気候行動の5つのレンズを考察する

都市は気候変動に対して多次元的なアプローチを取っていかなければなりません。そこで当グループでは、私たちの調査から得られたインサイトに基づき、都市に対して「5つのレンズ」 - ガバナンス、イノベーション、リスク削減、行政運営上のサステナビリティ、気候衡平性 - を通して気候変動を見ることを推奨しています。

2021年に、デンマークの首都であるコペンハーゲンは2025年までに完全にカーボンニュートラルな都市になることを宣言しました。もし成功すれば、コペンハーゲンはこの目標に到達した世界初の首都になるだけでなく、他の主要都市に10年以上も差をつけて宣言を達成することになります1

この取り組みのカギは「Copenhagen 2025 Climate Plan(CPH 2025:コペンハーゲン2025気候変動変動適応計画)」です。気候変動に対するこの多次元的アプローチは、民間企業、学術機関および市民の代表者等200以上のステークホルダーが共同で策定しました。同計画には、4つの重要分野(エネルギー消費、エネルギー生産、モビリティ、市政)における具体的な目標とカーボン削減への取り組みの概要が示されています2

  • エネルギー生産と消費:コペンハーゲンはすでに62基の風力タービンを設置しており、総発電量は158MWに達します。これは、3万世帯以上の消費電力を完全に賄えるエネルギーに相当します3。 同市は2025年までに460MWまで増やすことを目指しており、また、ごみをエネルギーに変える発電所の新設を委託し、既存の廃棄物発電所を石炭発電所で使用される燃料を木質パレットに切り替えるなどの取り組みも行いました4。このような活動を通じて、コペンハーゲンは2005年水準比でカーボン排出量の42%削減と、熱消費の15%削減を達成しています5
  • モビリティ:コペンハーゲンは、市内の移動の75%を徒歩、自転車または公共交通機関で行うことを促進する新たな交通機関モデルの構築を目指しています。これを実現するため、自転車のインフラを増やしたり、公共交通機関の路線網を拡大したり、駐車料金の値上げ等により自家用車の使用を抑制する対策を取っています6。2019年時点で、コペンハーゲン市内の移動手段の約66%が自転車、徒歩、公共交通機関のいずれかを利用したものでした。
  • 市政:同市は 庁舎のエネルギー消費の40%削減や公用車の代替燃料への転換、庁舎への太陽光パネルの設置に注力することにより、行政運営や体制をより持続可能なものにすることを目指しています。古い建造物をグリーンテクノロジーで改築し、新しい建造物はよりサステナブルな設計にすることで、建物のエネルギー効率を上げています。また、Nordhavn(ノーハウ)という新しい地区に建物にセンサーを埋め込んだ「リビングラボ」を建設中で、研究者はエネルギー管理の新しいインサイトを構築するためにこのセンサーから得られたデータを使うことができます7

さらに、こうした素晴らしい成果は同市の経済成長を阻害することなく達成されました。気候変動適応計画のコストは高く(推定総額40億米ドル)、ビジネスモデルがシフトするにもかかわらず、2018年のコペンハーゲンのGDPは、2010年比で約31%成長しました8

コペンハーゲンの計画は、気候変動への取り組みにおける政府の役割の変化に関する見解を提示しています。それは単に意欲的な目標の設定だけでなく、気候変動におけるより大胆な行動と協調的なアプローチで目標達成を追求することを意味します。エネルギー消費とモビリティに関するコペンハーゲンの意欲的な目標は、さまざまなステークホルダーグループの連携や協力がなければ成功は不可能です。

従来、都市、または行政は緩和や適応といった観点から気候変動について考えてきました。これらは重要なコンセプトですが、都市はコペンハーゲン計画のように、気候変動のアプローチをより広範で、より包括的なものに進化させるべきです。都市はガバナンスや気候イノベーションのエコシステムを見直し、気候衡平性に一点集中して取り組む必要があります。

本稿では、世界の各都市の進捗を把握するために、気候行動の各重要分野を掘り下げていきます。推奨事項や所見はESI ThoughtLab とデロイトのグローバル都市調査に基づきます。(本調査の詳細は下記の「本調査について」をご参照ください。)

本調査について

ESI ThoughtLabは、デロイトを含む民間企業、自治体、学術機関のリーダーと協働で、世界の167都市を対象に、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みの進捗状況、パンデミックへの対処方法、パンデミック後に取り組みを加速させるためのデジタル技術やデータを始めとするイノベーションソリューションの活用状況を調査した。

本調査は、2020年8月から11月にかけて、さまざまな所得レベルや人口規模の82カ国の都市を対象に行われた。また、さまざまな都市区域における技術やデータの活用の進捗度および市民やステークホルダーの関与を促す能力に基づき、スマートシティの成熟度として3つのステージ(初級、中級、リーダー)に都市を分類した。本調査の結果により、都市の29%が初級、49%が中級、22%がスマートシティリーダーに分類された。

気候レジリエンスの構築には気候変動への新たなアプローチが必要です

気候変動に関する何年もの白熱した科学的・政治的議論を経て、科学界はようやく人類の役割についてほぼ全員の共通認識にたどり着きました。気候科学者の約97%が過去100年の気候温暖化の傾向は人間の活動が原因である可能性が高いという意見で一致したのです9。このことは、2020年にパンデミックによる経済停滞やロックダウンにより世界の排出量が2019年比で7%(二酸化炭素約24億二酸化炭素換算トン)減少したことで、その合理性が明確に示されました。しかし、経済活動が世界各地で再開されると、炭素排出量は通常レベル、またはそれ以上に戻ると予想されています10

パンデミック後は、気候変動が世界各地の都市の長期的最優先政策アジェンダになるでしょう。調査対象都市のトップの4分の1が、気候変動と環境脅威を最優先に取り組むべき外的破壊因子と捉えていると回答しました。さらに、調査対象都市の約半数が国連の気候行動に関するSDG「気候変動に具体的な対策を」に向けて大きく前進しています。しかし、地域差が大きいのも事実です。アジアや欧州の都市は当該目標に向かってそれぞれ67%と65%と、大幅な進展を見せています。欧州の成功の理由の1つには国民の支持の高さがあり、EUが行ったユーロバロメーター調査で、市民の約93%が気候変動は深刻な問題であると考えていることがわかりました11

北米は比較的遅れており、気候行動目標に対して大きな進展が見られたのは調査対象都市のわずか10%でした。この点に関して米国ではバイデン・ハリス政権が危機感をあらわにしています。同政権は攻めの姿勢を示して気候変動に関する一連の大統領令を発令し、政府一丸となったアプローチを取るよう命じました。これら命令には、エネルギーシステムの変革、ゼロエミッション輸送への支援、炭素回収等のクリーンエネルギー技術におけるイノベーションの促進といった取り組みも含まれます。また、これらの命令により、都市計画や行政運営はさまざまな影響を受けるでしょう12

気候変動とその影響が次の10年において重要な課題であり続けることは間違いありません。そして都市は、私たちが気候行動の5つのレンズと名付けたコンセプトのような、この課題に取り組むための新たなアプローチを生み出す必要があります。この5つのレンズは、都市のトップが行動の機会を見出せるよう、従来の緩和・適応アプローチをベースに展開します(図1)。

 

図1
都市の多次元的気候変動アプローチへのシフト

都市の多次元的気候変動アプローチへのシフト
※クリックで拡大

以降のセクションでは、都市による気候変動への取り組みを考察し、5つのレンズそれぞれの進捗状況をマッピングしていきます。また、地域差についても検討し、気候変動の取り組みが進んでいる地域を明らかにします。

>> 全文はこちら(PDF)をご覧ください。

 

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