事例紹介

実践的なデジタル人材育成研修業務を実施

課題解決に直結する実践的なデジタル人材育成研修業務を実施

有限責任監査法人トーマツは、自治体DX推進につなげるため、課題解決に直結する実践的なデジタル人材育成研修を実施しました。本研修は神奈川県藤沢市から受託したもので、自治体職員が研修の中で現場の業務課題を解決するためのデジタルツールを開発することを通じて、デジタル人材として必要な課題解決に直結するDX知見・スキルを習得するという、実践的な研修として実施したものです。今後は自治体で求められるデジタル人材を育成するために効果的な研修スキームとして全国自治体へ展開していく予定です。

自治体DX人材育成・確保の課題と求められるデジタル人材像

少子高齢化や生産年齢人口の減少等を背景に、自治体のDXを推進し、行政サービスの効率化や市民の利便性向上等を図るため、DX人材育成・確保が必要とされています。

DX人材に必要とされるスキルは、DX戦略の策定やデジタルツールへの理解、データ利活用、ITプロジェクトマネジメントなど多岐に渡りますが、デロイト トーマツが考える自治体で求められるデジタル人材像は、課題に対して、デジタルを活用し解決に向けて熱量をもって変革を推進することができる人材です。

このような、自治体において求められるデジタル人材を育成・確保するためには、単なるDXスキルのインプットではなく、課題解決に直結する実践的DXスキルの習得が必要です。 

 

実践的デジタル人材育成研修サービスの紹介

このような、課題解決に直結する実践的なデジタル人材育成研修を実施するため、デロイト トーマツは藤沢市とのコラボレーションにより、実際の業務課題に対する解決策を検討するStage1、解決策を踏まえ課題解決に資するDXツールのプロトタイプを作成するStage2の2段階で構成される研修スキームを開発しました。

研修にあたっては自治体DXに知見を有するコンサルタントがメンターとして受講者の取り組みをフォローアップし、プロトタイプ作成、さらには研修の成果発表会まで伴走支援しました。

成果発表会はデロイト トーマツの施設と藤沢市役所をオンラインでつないで開催し、オンライン参加した市職員からも活発な意見や質問等をいただきました。

<藤沢市デジタル人材育成研修 成果発表会の様子>

 

藤沢市の取り組み

藤沢市とのコラボレーションにより実施した本研修では、建設部門や下水部門、健康福祉部門など、様々な行政分野で、課題整理とDXによる解決策立案、プロトタイプ作成を行いました。

建設部門の職員様で構成されたチームでは、道路や公園、河川などの管理に関して、市民からの苦情・要望受付処理が所属毎に異なっており、かつ印刷・押印などのアナログ処理が多く残っていたため、業務効率化に向けて課題を抱えていました。このため、市民からの苦情・要望受付はフォーマットを統一化したうえで単一の受付アプリを作成し、苦情・要望に対する処理状況等の登録については各課の業務要件にあわせた個別のアプリを作成しました。また、苦情等の処理についてアプリ上のワークフロー機能で決裁を行い、処理状況を一覧化して管理できる仕組みを構築しました。今後は、処理状況を市民が容易に把握できるような仕組みを検討していく予定です。

<建設部門チームが作成したアプリの構成>※成果発表資料を一部抜粋

 

※藤沢市建設部門チームの成果発表資料を一部加工

下水部門の職員様で構成されたチームでは、下水という重要なインフラを維持するための様々な設備・機器について、故障報告の共有や対応結果の記録等が紙媒体で行われており、業務上の非効率や、必要な情報の検索性等に課題を抱えていました。このため、約8,000点の設備・機器についてデータベース化するとともに、保守管理事業者等からの故障報告や、故障報告受付後の市側での対応記録を行うアプリを作成し、リアルタイムに的確に情報共有が行える仕組みを構築しました。今後、蓄積されていく故障報告等のデータをもとに、適切な保守管理業務に活かしていく方針です。

<藤沢市下水部門チームが作成したアプリの構成>※成果発表資料を一部抜粋

 

健康福祉部門の職員様で構成されたチームでは、生活保護関連業務について、膨大な量の申請書類等を紙媒体で管理しており、制度利用者からの電話による問い合わせ対応も業務負荷として課題となっておりました。このため、利用者からの申請をオンラインで受け付け、内部処理もデジタル化する仕組みを導入しました。オンラインでの手続きに際しては、利用者にとってわかりやすい形となるよう、フォーマットのデザイン等に配慮した設計としました。取り組みによって生まれた業務効率化効果を活かして、生活保護ケースワーカーの自己研鑽や利用者対応の充実等にリソースを振り向けていく方針です。

<藤沢市健康福祉部門チームが作成したアプリの構成>※成果発表資料を一部抜粋

 

受講者からは、「あるべき姿の実現に向けて、研修を受講したメンバー間で考えの相違等もあったが、実際にツールを動かして検証しながら進めることで課題解決に向けた道筋を見出すことができた」、「今回の取り組みで作成したプロトタイプを実際にユーザーに使ってみてもらい、有益な意見をたくさんもらったので、今後の改善につなげていきたい」、「できることから少しずつ取り組んでいくことが業務改善に繋がることが研修を通じて学ぶことができた」などの声が聞かれました。

デロイト トーマツと連携して本研修を企画した藤沢市のデジタル推進室担当者は、「本研修の受講者がデジタル人材として周囲への“巻き込み力”を発揮し、熱量を広げていってもらいたい。本研修を継続的な学習スキームとして組織全体の課題解決力を伸ばしていきたい」と話します。また、今回の取り組みを契機に、市が取り組みを進める市民ポータル“ふじまど”等、より大きなDXの取り組みにつなげていくことも視野に入れています。

※デロイト トーマツ グループが構築に関わった市民ポータル“ふじまど”の取り組みは以下をご参照ください。

藤沢市 市民ポータルサイト「ふじまど」 構築プロジェクト

まとめ ~あるべき自治体DX人材育成のかたち~

将来に渡って地域の行政サービスを持続可能なものとするため、自治体DXを進めるデジタル人材の育成・確保が急務となっています。

今回、藤沢市とのコラボレーションにより開発したデジタル人材育成のスキームは、単なるDXスキルのインプットではなく、実際の業務課題に対する解決策を考え、“動く”ツールを作り出すものであり、研修を通じて、受講者が個人・チームとして、変革に向けた熱量とケイパビリティを獲得できると考えられます。

今後も、デロイト トーマツは自治体の地域課題解決につながるデジタル人材育成を支援していきます。

※本ページの記載情報は記事公開時点(2025年3月)のものです。

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