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総論 公会計情報を行政経営に活用する際のポイントは?

特集 公会計情報の活用の進め方

地方公会計において、統一的な基準に基づく財務書類作成の取組みは定着した一方、地方公会計活用の取組みは十分に進んでいない状況です。効果的な公会計情報の活用を行うためには、「目的を明確に」「全庁的に」「継続的に」取組みを進めることが重要です。

1. 公会計情報活用の現況

地方公共団体では、平成28年度決算から統一的な基準に基づく財務書類の作成が開始されています。制度開始より一定期間が経過し、直近の総務省「統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査(令和4年3月31日時点)」においては、令和4年3月31日時点において令和2年度決算に係る一般会計等財務書類を作成済であった団体は、90%超と回答されており、地方公会計制度が一定程度定着したことが認められます。

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他方、依然として財務書類等の活用が十分に進んでいない状況と見受けられ、どのように活用を行っていくかが課題であるといえます。

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本記事では、公会計情報を含む財務会計情報を行政経営に積極的に活用するために、どのような取組みをどのように進めればよいか、先進的な団体の事例を踏まえて、そのポイントを紹介します。

 

2. 公会計情報の活用を進める際のポイント

公会計情報の活用が進んでいる団体に共通している特徴として以下の3つの特徴が挙げられます。

1点目:明確な目的をもった取組みとすること
2点目:全庁的な取組みとすること
3点目:継続的な取組みとすること

 

(1)目的の明確化

「財務書類を作成すること」や「財務指標分析を実施し公表すること」自体が目的となりがちですが、それでは表面的な活用範囲にとどまってしまいます。

次の図は一例ですが、解決すべき課題とそのための実施事項を明確にすることで、必要な公会計情報が明確になります。また、実施事項の明確化により各部署からの協力も得やすくなり、全庁的な取組みにつながることにもなります。

【課題の明確化と公会計情報の活用】

総務省では、公会計情報の活用事例を収集・公表しています。他団体での公会計情報の活用事例を参考にして、自団体の抱える課題解決に活用できないかの検討推進が有用です。

【地方公会計の活用事例】

出典:総務省「地方公会計に関する取組事例集」をもとに作成(外部サイト)

 

(2)全庁的な取組み

事業や施設といったセグメント単位で公会計情報の活用を進める際には、事業や施設を所管する部署の協力が不可欠です。財務書類の作成所管部署(財政課や会計課など)だけではなく、庁内研修会等を通じて、公会計情報の活用を進めることに対して全庁的な協力を得ることが重要となります。公会計情報の活用を進めている団体では、次のように全庁的な取組みを進めています。

【A市の事例】

 

(3)継続的な取組み

公会計情報の活用を1回限りの取組みとはせずに、継続的に実施していくことが重要です。継続して取組みを進めることで経年での比較ができるようになり、財務会計情報が示している傾向をつかむことができ、より有意義な情報を得ることが可能となります。

例えば、公会計情報の活用が進んでいる団体では、セグメント情報を活用した行政評価シートをより活用しやすくなるように、様式に対する改善を継続して実施しています。

【町田市の事例】

出典:町田市「令和2年度 (年度) 町田市課別・事業別行政評価シート(主要な施策の成果に関する説明書)」をもとに作成(外部サイト)

 

 

 

3. 公会計情報の活用に向けた計画的なスケジューリング

公会計情報を活用するにあたっては、活用を進める際のスケジューリングも重要です。「地方公会計の推進に関する研究会報告書(平成30年度)」では、公会計情報の活用を進めるにあたって、以下のように財務会計システム更新や総合計画の見直しのタイミングに合わせて、財務書類の作成の効率化や公会計情報の活用を進めることが重要であることを示しています。

 「地方公会計の推進に関する研究会報告書(平成30年度)」

各地方公共団体においては、財務会計システムの入替え等のタイミングにあわせて、上記のような財務書類等の作成業務の効率化の方策について検討が行われることが期待される。
さらに、地方公会計の定着の観点からは、地方公会計の取組を日常的な行財政運営と連動させ、その効果を高めていく点に配慮することも重要である。例えば、総合計画の見直しのタイミングにあわせて、総合計画で示される政策体系に従って組織体制を整備し、その組織で遂行する予算体系を整合的に設定することにより、地方公会計で得られる情報が、政策・組織・予算と有機的に連携することにつながると考えられる。その上で、組織別や事業別のセグメント情報の分析を行うことにより、行政評価や政策・事業の進捗管理、翌年度の予算要求等に活用することが可能になると考えられる。

(注)下線は執筆者が付したものである

 

なお、財務会計システム更新や総合計画の見直しの際に検討するべきポイントは次の通りです。

【財務会計システム更新時のポイント】

 

【総合計画の見直しの際に検討するべきポイント】

なお、こうした地方公会計の活用推進に関して、トーマツでは「特別セミナー DX時代における地方公会計の推進」(令和4年8月4日)を開催しました。よろしければそちらもご覧ください。

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以上

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