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公営企業型地方独立行政法人の特徴

1.はじめに

昨今の公立病院の経営強化プランの策定が求められている中で、経営形態の見直しの選択肢として注目されている公営企業型地方独立行政法人の特徴に関して役立つ情報を紹介します。

地方独立行政法人法(以下、「法」と略します。)21条において、地方独立行政法人が実施できる業務は限定されています。一般的な公立病院を地方独立行政法人化する場合には、同条3号の病院事業を実施することとなるため、公営企業型地方独立行政法人になります。

地方独立行政法人のポイント解説として、以下では、公営企業型地方独立行政法人の特徴を紹介します。

2.公営企業型地方独立行政法人の特徴

公営企業型ではない地方独立行政法人では、一般的に利益の獲得を前提とせず、運営費交付金により運営されることが想定されています。しかし、公営企業型地方独立行政法人の場合は、その事業から自己収入の獲得が見込まれており、原則として独立採算でなければなりません(法85条2項)。ただし、完全な独立採算が求められているわけではなく、経費のうち以下のものについては、設立団体が負担することとされています(法85条1項)。

  • その性質上当該公営企業型地方独立行政法人の事業の経営に伴う収入をもって充てることが適当でない経費
  • 当該公営企業型地方独立行政法人の性質上能率的な経営を行ってもなおその事業の経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費

上記2つは、地方公営企業における、いわゆる1号経費・2号経費(地方公営企業法17条の2第1項)と同様の性質のものと考えられます。

3.公営企業型地方独立行政法人の特例

公営企業型地方独立行政法人では、業務の実施にあたり、住民の生活の安定や地域社会および地域経済の健全な発展に資するように努めるとともに、常に企業の経済性を発揮するように努めなければならないとされています(法81条)。公営企業型地方独立行政法については、その事業の特性を考慮して、以下の特例が定められています。

  1. 料金及び中期計画に関する特例
    公営企業型以外の地方独立行政法人では、事業に関して料金を徴収するときは、あらかじめその上限を定め、地方議会の議決を経て、設立団体の長の認可を受けなければなりません(法23条1項)。しかし、公営企業型地方独立行政法人では、料金に関する事項は中期計画において定めることとし、地方議会や設立団体の長による関与を当該中期計画の認可のみにとどめています(法83条2項) 。これは、公営企業型地方独立行政法人への自律性の確保の観点から、収益事業における料金の設定や変更に柔軟かつ機動的に対応できるよう配慮されたものと考えられます。
  2. 利益が生じた場合の経営努力認定に関する特例
    公営企業型以外の地方独立行政法人では、利益が生じた場合、前事業年度から繰り越した損失を埋めた残余は原則として積立金として整理する必要があり、設立団体の長の承認を条件として剰余金の使途に充当することができます(法4条2項)。しかし、公営企業型地方独立行政法人については、認可された中期計画で定める剰余金の使途に充てる場合には、設立団体の長の承認は不要とされています(法84条)。公営企業型地方独立行政法人では、その業務の実施にあたっては独立採算制の原則が採用されているため(法85条2項)、利益の処分について法人の意思によって行う余地を認めているものです。
  3. 債務負担に関する特例
    企業型以外の地方独立行政法人では、その業務に関して当該法人の設立前に設立団体が有する権利義務のうち、設立団体の長が定めるものについては地方独立行政法人に承継されますが、当該業務に関して起債した地方債は承継する義務の対象から除外されています(法66条1項)。
    しかし、公営企業型地方独立行政法人の場合は、地方債に相当する額の債務を承継し、負担することになります(法86条1項)。
    公営企業型地方独立行政法人においては、債権者保護の観点から、設立団体から法人に直接債務を承継させるわけではありませんが、地方債の償還義務は設立団体に残し、地方債相当額を間接的に債務として法人に負担させることで、実質的に地方公営企業と均衡を図っているものと考えられます。 

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