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地方自治体の内部統制制度が監査委員監査に及ぼす影響
内部統制を前提とする監査委員監査
平成29年6月9日に公布された改正地方自治法を受けて、総務省では、「地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会」が設置され、監査委員監査の基準についての様々な議論が行われています。
①地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会の監査部会の動向
総務省に設置された地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会の監査部会において、平成29年12月25日から平成30年3月6日まで、すでに3回の議論が行われています。
この中では、平成32年度から導入される内部統制制度を前提として「監査委員監査は、何らかの不備を指摘するという観点だけではなく、内部統制が有効に機能しているかという観点から監査する方向にシフトしていくことが考えられるのではないか。」(※)という議論がされています。このため、今後の監査委員監査は「監査委員が自ら問題点を探す」から「誰かが問題を未然に防止、発見する仕組を確かめる」にシフトしていくことが想定されます。
※出典:総務省地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会監査部会 第1回(平成29年12月25日)の「資料監査指針について」のP6より抜粋
http://www.soumu.go.jp/main_content/000525361.pdf
②監査委員監査の手法の変化
平成26年4月30日に公表された地方公共団体における内部統制制度の導入に関する報告書の参考資料P85では、「内部統制体制を整備・運用することにより、財務監査において、これまで監査対象としていた部分の一部について、監査を省力化することが可能となり、特定の部分に重点化して、より質の高い監査を実施することが可能となるのではないか。」とされています。重点化とは、いわゆるリスクアプローチの観点から、問題が発生しやすい部分や問題が発生した場合に影響が大きい部分に関して重点的に監査を行うことです。具体的には、より個別的な事項について実際に現地に往査して監査をすることが想定されており、書面監査の割合が減少するとともに実地監査の割合が増えることが考えられます。実地監査は、書面監査と比較して移動の負担が生じるものの現場における実情を把握することができるメリットがあり、監査委員監査の効果向上が期待されるところです。
➂監査委員監査に求められるスキル
しかし、今後の監査委員監査は、内部統制が有効に機能している範囲は監査手続を省略化するとともに、個別具体的な事項を重点化することを想定しているため、監査委員監査では従来とは異なる非定型的な作業が増加することが見込まれます。
例えば、実地監査では、特定の文書に関して根拠証憑との突合を行う場合とは異なり、監査範囲や監査手続を監査対象に合わせて的確に決定することが必要です。また、想定と現場の実態が異なる場合には、必要に応じて現場で適時に変更する柔軟性も必要です。監査のスキルの多くは、監査経験の蓄積により培われることが多いため、経験豊富な職員を適時に確保できない場合には監査の水準がぶれるおそれが高まるのではないかと考えます。
④監査委員監査に対するご支援
トーマツでは、地方公共団体に対する様々なご支援の経験を活かし、監査委員監査を多角的にご支援しています。
- 監査委員及び監査委員事務局職員に対する研修
- 内部統制制度において求められる内部統制評価報告書審査への対応方法に関する助言
- 内部統制に依拠する監査手法(リスクアプローチ)の導入支援
- その他監査員監査一部に関する委託 等
また、このようなご支援は、地方公共団体に限らず、他の公的機関の内部監査においても同様に提供可能です。
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地方公共団体における内部統制の法制度化(その3)
内部統制制度の検討状況の紹介