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事例紹介
連結会計基準等の改正によるSPE連結の事例分析
SPE連結は大手不動産会社に影響大、その他企業は限定的
2014年3月期から強制適用となった連結財務諸表に関する会計基準等の改正により、大手不動産会社やその他の会社ではどのような開示がなされているのかの事例分析を行っています。
1.会計基準等の改正(1/2)
平成23年(2011年)3月25日、企業会計基準委員会は、連結財務諸表におけるSPE(特別目的会社)の取扱いの見直しを行うため、以下の会計基準等(以下、連結会計基準等)を公表しました。
• 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下、連結会計基準)
• 企業会計基準適用指針第15号「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」
• 企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」
• 実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」
今回の改正は、SPEを利用した取引が拡大するとともに複雑化・多様化していることから、企業集団の状況に関する利害関係者の判断を誤らせるおそれがあること、また、国際的な会計基準とのコンバージェンスの一環として行われたものですが、そもそも議論の発端となったのは、平成10年10月に公表された「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」三において、一定の要件を満たす特別目的会社をその出資者及び資産の譲渡者の子会社に該当しないものと推定している、下記の取扱いです。
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特別目的会社(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第2項に規定する特定目的会社及び事業内容の変更が制限されているこれと同様の事業を営む事業体をいう。以下同じ。)については、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されているときは、当該特別目的会社に対する出資者及び当該特別目的会社に資産を譲渡した会社(以下「出資者等」という。)から独立しているものと認め、上記一にかかわらず、出資者等の子会社に該当しないものと推定する。
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1.会計基準等の改正(2/2)
上記取扱いの趣旨は、資産流動化法上の特定目的会社については、事業内容が限定されている等、当該特定目的会社は出資者等から独立しているものと判断することが適当と考えられていたことなどにあります。ただし、実際には、資産の譲渡に関連して開発された当初の同取扱いの趣旨を達成できていないのではないか等の指摘もあり、当面の対応として、企業会計基準委員会は、平成19年3月に、企業会計基準適用指針第15号「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」を公表しました。この結果、同取扱いによって子会社に該当しないものと推定された特別目的会社(開示対象特別目的会社)について、その概要や取引金額等の開示を行うことを求めることになり、同取扱いを広く適用してきた不動産会社を中心に開示が実施されてきました。
そして今般、さらに議論が進み、上記問題点の多くは、同取扱いの定めを資産の譲渡者のみに適用することで対処されると考えられることなどから、出資者に関する記述を削除する改正、並びにその他開示に関する連結会計基準等の改正が行われました。
<改正点の概略>
改正点概略 |
具体的内容 |
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連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い 三の改正(連結会計基準第7-2 項) |
上述の取扱いについて、当該特別目的会社に対して資産を譲渡しているものにのみ適用されることとし、出資者に関する記述を削除。 |
開示(連結会計基準第33 項(注11-2)及び第43 項(注16)) |
特別目的会社は、弁済原資が特定されている債務(ノンリコース債務)を有していることが多く、通常の借入金等の債務とは性格が異なることから、その内容をより明瞭に開示するために、連結貸借対照表上、他の項目と区別して記載するか、または、その金額を注記する(連結会計基準第33項(注11-2))。さらに、ノンリコース債務に対応する資産については、当該資産の科目及び金額を記載する(連結会計基準第43項(注16))。 |
連結の範囲に含まれる企業の明確化(実務対応報告第20 号Q1 のA3) |
営業者及び匿名組合が、いずれも匿名組合員の子会社に該当すると考えられ、当該匿名組合の事業を含む営業者の損益のほとんどすべてが匿名組合員に帰属するような場合には、営業者ではなく匿名組合自体を連結の範囲に含めることが適当と明記。 |
改正点の概略
改正後の連結会計基準等の適用初年度における連結の範囲の変更は、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うこととなりますが(連結会計基準第44-4項(6))、経過的な取扱いを設けており、適正な帳簿価額により評価する方法と、時価により評価する方法の2つの経過的な取扱いがあります。なお、当該注記においては、過年度遡及会計基準の原則的な方法にはよらず、例外的に、経過的な取扱いの適用による適用初年度の期首の利益剰余金に対する影響額を注記することになります(連結会計基準第44-4項(6))。
<適用初年度における経過的な取扱い>
経過的な取扱い |
連結上の資産及び負債の金額 |
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適正な帳簿価額により評価する方法 (連結会計基準第44-4項(3)) |
適用初年度の期首において、子会社に関する資産、負債及び少数株主持分を連結財務諸表上の適正な帳簿価額(過年度において平成23年改正連結会計基準が適用されていたのであれば、支配を獲得したものとみなされる日以降、当該子会社を連結に含めていたものとして算定した資産、負債及び少数株主持分の金額)により評価する。 |
時価により評価する方法 (連結会計基準第44-4項(4)) |
適用初年度の期首において、子会社の資産及び負債のすべてを時価により評価する。 |
2.大手不動産会社の事例
今回の連結会計基準等の改正については、大手不動産会社において、平成24年(2012年)3月期及び平成25年(2013年)3月期に早期適用を行っている事例があります。
適用時の開示例は以下の通りで、適用初年度における経過的な取扱いについては、2社が適正な帳簿価額により評価する方法(連結会計基準第44-4項(3))を、1社は時価により評価する方法(連結会計基準第44-4項(4))採用しています。また、いずれも、従来開示対象特別目的会社として扱っていた会社を連結の範囲に含めており、開示対象特別目的会社として注記対象となる会社は該当がなくなっています。
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大手不動産会社A社 |
大手不動産会社B社 |
大手不動産会社C社 |
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開示事例 |
平成25年(2013年)3月期有価証券報告書 |
平成25年(2013年)3月期有価証券報告書 |
平成24年(2012年)3月期有価証券報告書 |
【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】 1 連結の範囲に関する事項 (1)連結子会社 |
従来持分法非適用関連会社であった○○等、計6社は「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)等を当連結会計年度より適用したことにより、連結子会社に含めております |
当連結会計年度より「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)等を早期適用し、○○ほかSPC30社を連結の範囲に含めております。 |
当連結会計年度より「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)等を早期適用し、○○等の特定目的会社23社および1匿名組合を連結の範囲に含めております。 |
【会計方針の変更】 |
「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)、「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第15号 平成23年3月25日)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号 平成23年3月25日)および「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号 平成23年3月25日)が平成23年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当連結会計年度よりこれらの会計基準等を適用し、○○等、計6社を新たに連結子会社としました。 新たに連結子会社となる○○等への会計基準等の適用については、「連結財務諸表に関する会計基準」第44-4項(4)に定める経過的な取扱いに従っており、適用初年度の期首において○○等に関する資産及び負債の全てを時価により評価しております。 この結果、当連結会計年度の期首の利益剰余金が約900億円減少しております。 |
(SPC連結に関する会計方針の変更) 当連結会計年度より、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)、「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第15号 平成23年3月25日)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号 平成23年3月25日)および「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号 平成23年3月25日)を早期適用しております。 会計基準等の適用については、「連結財務諸表に関する会計基準」第44-4項(3)に定める経過的な取扱いに従っており、適用初年度の期首において○○等に関する資産及び負債の全てを時価により評価しております。 この結果、適用初年度の期首においてあらたな連結子会社に関する資産、負債及び少数株主持分を連結財務諸表上の適正な帳簿価額により評価しております。 この結果、当連結会計年度の期首の利益剰余金が約35億円減少しております。 |
(連結財務諸表に関する会計基準等の早期適用) 「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)、「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第15号 平成23年3月25日)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号 平成23年3月25日)および「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号 平成23年3月25日)が平成23年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当連結会計年度においてこれらの会計基準等を適用し、○○等の特定目的会社および1匿名組合を新たに連結子会社としました。 新たに連結子会社となる○○等への会計基準等の適用については、「連結財務諸表に関する会計基準」第44-4項(3)に定める経過的な取扱いに従っており、適用初年度の期首において○○等に関する資産及び負債を、連結財務諸表上過年度から当社と同一の会計方針を適用していたものとした場合に算定される適正な帳簿価額により評価しております。 この結果、当連結会計年度の期首の利益剰余金が約200億円減少しております。 |
【開示対象特別目的会社関係】 |
当連結会計年度より、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)等を早期適用しているため、当連結会計年度に開示の対象となる特別目的会社はありません。 |
当連結会計年度より、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)等の早期適用に伴い、連結の範囲に含まれることとなったため、該当する開示対象特別目的会社はありません。 |
当連結会計年度より、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)等の早期適用等により、連結の範囲に含まれることとなったため、該当する開示対象特別目的会社はありません。 |
【賃貸等不動産関係】 |
(注)にて、主な増減額は○○を連結したこと(約1,600億円)による増加等、としている。 <参考> ※賃貸等不動産時価総額 |
(注)にて、主な増減額は「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)等を早期適用したこと(約2,300億円)による増加等、としている。 <参考> ※賃貸等不動産時価総額 |
(注)にて、新規連結の増加として約6,300億円、としている。 <参考> ※賃貸等不動産時価総額
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【借入金等明細表】 |
■ノンリコース長期借入金 :約1,700億円 |
(注)にて、SPC連結に伴い、当期の期首残高は前期末残高より約1,900億円増加、としている。 ■ノンリコース短期借入金 ■ノンリコース長期借入金 |
■1年以内に返済予定のノンリコース長期借入金 ■ノンリコース長期借入金 |
3.平成26年(2014年)3月期に適用している会社の事例
強制適用となる平成25年4月1日以降開始事業年度(平成26年(2014年)3月期)の期首に適用している事例は以下の通りです。12月決算会社や2月決算会社等、強制適用前の会社は存在するものの、下記の通り、上記大手不動産会社への影響に比べると、各社への影響は総じて軽微となっていることから、今回の改正は、大手不動産会社への適用が大きなトピックスであったと考えられます。
会社名 |
適用初年度の会計処理 |
適用初年度の影響額 |
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銀行業A社 |
適正な帳簿価額により評価する方法((連結会計基準第44-4項(3)) |
期首剰余金が約2億円減少 |
証券業A社 |
適正な帳簿価額により評価する方法((連結会計基準第44-4項(3)) |
期首剰余金が約1千万円減少 |
銀行業B社 |
適正な帳簿価額により評価する方法((連結会計基準第44-4項(3)) |
期首剰余金に与える影響は軽微 |
銀行業C社 |
新たな子会社は発生したものの、重要性が乏しいことから非連結子会社 |
影響なし |
銀行業D社 |
新たな子会社は発生したものの、重要性が乏しいことから非連結子会社 |
影響なし |
陸運業A社 |
適正な帳簿価額により評価する方法((連結会計基準第44-4項(3)) |
期首剰余金に与える影響は軽微 |
建設業A社 |
適用した旨のみの記載 |
影響なし |
以上