カジノ施設への入場回数制限及びマイナンバーカード等を使った本人確認 ~我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点(5)~ ブックマークが追加されました
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カジノ施設への入場回数制限及びマイナンバーカード等を使った本人確認 ~我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点(5)~
統合型リゾート(IR、Integrated Resort)
本稿では、「カジノ施設への入場回数制限及びマイナンバーカード等を使った本人確認」をテーマに、IR整備法の主要論点の解説を行います。日本のIRでは、内国人がカジノ施設を利用する際には入場回数制限、マイナンバーカード等を使った本人確認及び入場回数の把握等の規制が講じられるため、IRビジネス参入においては、これらの入場規制等を考慮した上で、事業計画の検討が必要となります。
目次
- カジノ施設への入場回数制限及びマイナンバーカード等を使った本人確認措置が講じられる
- IRビジネス参入においては、入場規制等を考慮した上での事業計画の検討が必要となる
- ギャンブル依存症(賭博依存症)関連記事
- 連載「我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点」のアーカイブ
- IRビジネスグループとは
カジノ施設への入場回数制限及びマイナンバーカード等を使った本人確認措置が講じられる
日本人・日本居住者のカジノ施設利用には入場回数制限が設けられ、入場時にはマイナンバーカード等を使った本人確認及び入場回数の把握等が実施されます。
1. カジノ施設への入場回数制限に関して
IR整備法では、カジノ施設への入場回数制限として、連続する7日間での入場回数は3回まで、連続する28日間での入場回数は10回までとされています。
日本のIRの議論においては、ギャンブル依存症防止の観点から、カジノ施設へのアクセスが比較的容易である日本人及び国内居住の外国人に対して入場回数制限を設け、常態的にカジノ施設に入場できる環境をつくらないことが適切であると考えられています。
その結果、IR整備法第69条(入場規制)及び同176条(入場料の賦課等)では、以下のような規制が定められました。
(1)短期の回数制限として、連続する7日間での入場回数は3回までとする(同69条4項)
(2)長期の回数制限として、連続する28日間での入場回数は10回までとする(同69条5項)
(3)入場回数を数える際には、入場料を賦課する時点(入場する時点)を基準とし、それから24時間以内を1回と数えることとする(同176条)
2. マイナンバーカード等を使った本人確認・入場回数の把握に関して
IR整備法では、カジノ施設への入退場の際に、日本人及び国内居住の外国人にはマイナンバーカード等を使い、その他の人には旅券(パスポート)等を使って、本人確認及び入場回数の把握を実施するとされています。
日本のIRの議論においては、特にギャンブル依存症対策等の観点から、カジノ施設への入場者を適切に管理するために、以下の観点からマイナンバーカードを用いて本人確認を行うことが検討されてきました。
- 本人特定事項である氏名、住所、生年月日、顔写真が記載されていること
- 公的機関が発行する書面で、国民が容易に入手できること
- 特定の個人について一貫して最新の情報を確認することができること
その結果、IR整備法第70条(入退場時の本人確認等)では、以下のような規制が定められました。
(1)日本人及び国内居住の外国人に関しては、マイナンバーカード及びICチップに格納されている電子証明書を用いた公的個人認証等を用いて、入場者の本人特定事項や当該入場者が入場禁止対象者に該当するかどうか等を確認する(同70条1項)
(2)国内に居住しない外国人に関しては、旅券(パスポート)等を用いて、入場者の本人特定事項や当該入場者が入場禁止対象者に該当するかどうか等を確認する(同70条1項)
IRビジネス参入においては、入場規制等を考慮した上での事業計画の検討が必要となる
IR事業者においては、カジノ施設への入場回数制限やマイナンバーカードを利用した本人確認等の影響をIRの需要予測や事業計画、経済波及効果に適切に反映する必要があります。
IRに参入する企業にとって、日本人及び国内居住の外国人に対してカジノ施設への入場回数制限やマイナンバーカード等を利用した本人確認・入場回数の把握が設けられることは、IR施設の需要予測に大きな影響を及ぼすことになります。
例えば、マイナンバーカードの普及率は2019年7月段階で約12%となっています〔総務省HP マイナンバー制度とマイナンバーカード 「マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(平成30年7月1日現在)」参照〕ので、マイナンバーカードの普及率の状況についても、IRビジネスの事業計画策定や経済波及効果算定の際にその影響を適切に考慮し反映する必要があります。
また、マイナンバーカードを利用した入場管理は、海外のIR施設にはない新たなプロセスとして、カジノ業務オペレーションに大きな影響を及ぼし、IRビジネスの内部管理体制構築においても取得情報の管理等で慎重な検討が必要となります。
一方、地方自治体にとっても、IR導入に伴う、税収増加を含む経済波及効果を算定するためには、カジノ施設への入場回数制限やマイナンバーカード等を利用した本人確認がIRビジネスに及ぼす影響を適切に把握する必要があります。
デロイト トーマツ グループでは、カジノ施設への入場回数制限やマイナンバーカード等を利用した本人確認・入場回数の把握に伴う需要予測への影響等に関連する以下のアドバイザリーサービスを提供します。
<民間事業者様向け>
- 需要予測調査、経済波及効果の試算
- 事業効果最大化に向けた戦略策定
- IR事業の収支構造の理解
- 事業計画のモデリング実施
- ゲーミング収益、投資規模試算
- IR全体事業計画シミュレーション
- 各種パラメータの感応度分析
- カジノ業務のオペレーションに関する調査
- 最低限順守すべき内部統制の基準(MICS)対応
- 業務手続書、業務フロー検討準備
- オペレーションマニュアル整備
<自治体様向け>
- IR立地による効果の検討
- 税収、入場料、納付金、関連支出の試算、分析
本稿に関して、より詳細な内容や関連資料等をご要望の場合は以下までお問い合わせください。
IR(統合型リゾート)ビジネスグループでは、Deloitteのグローバルネットワークを活用し、海外事例等を踏まえたIRビジネスに関連する幅広い調査・分析を行っています。
IR(統合型リゾート)ビジネスグループ
info-irbg@tohmatsu.co.jp
連載「我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点」のアーカイブ
本連載では、IR整備法のビジネス参入における留意点について、様々な視点からIRビジネスグループの知見を発信しています。
>>連載「我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点」のアーカイブページ<<
IR(統合型リゾート)ビジネスグループとは
IR(Integrated Resort:統合型リゾート)実施法の審議開始から免許交付までの間に、IRビジネスグループでは参入を目指す日本企業に対し、さまざまなアドバイザリーサービスを提供します。
また、カジノ施設の設置と運営にはさまざまな課題やリスクが指摘されています。そのため、IRビジネスグループでは、日本企業に対する事業支援サービスだけでなく、企業と自治体に対し、IR施設を設置・運営する上で懸念される課題と社会問題の解決に関するアドバイザリーサービスも提供します。
>>IRビジネスグループの紹介<<
IR(統合型リゾート)ビジネスグループの最新活動
下記IR(統合型リゾート、Integrated Resort)についての海外事例のナレッジを提供している、IRビジネスグループの最新の活動をご紹介いたします。
【IRビジネスグループの最新活動】
>新規コンテンツ「IR事業(カジノ事業)におけるファイナンス」追加
日本におけるカジノ事業を含む統合型リゾート(IR: Integrated Resort)の開発に関する投資資金の調達手段について、海外の事例を交えながら解説
>新規コンテンツ「IR事業(カジノ事業)におけるMOU締結・JV組成とガバナンス」追加
IR事業(カジノ事業)におけるコンソーシアム形成とJV組成に関するガバナンスのあり方を解説
>長崎県・佐世保市IR(統合型リゾート)推進協議会「IR基本構想策定等に係る支援業務」
長崎県・佐世保市IR(統合型リゾート)推進協議会「IR基本構想策定等に係る支援業務」を受託
>和歌山県におけるIR(統合型リゾート)基本構想策定のアドバイザリー業務委託
和歌山県におけるIR基本構想策定のアドバイザリー業務委託を受託