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カジノ管理委員会の監督権限と背面調査 ~我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点(6)~

統合型リゾート(IR、Integrated Resort)

本稿では、「カジノ管理委員会の監督権限と背面調査」をテーマに、IR整備法の主要論点の解説を行います。カジノ管理委員会は世界最高水準のカジノ規制を行うために、カジノに関連する各種調査、監督権限等を有します。特に、カジノ事業者への免許付与の際には、カジノ管理委員会による厳格な背面調査が実施されるため、IRビジネス参入においては、将来の背面調査を見据えた事前対応が必要となります。

カジノ管理委員会には強力な監督権限等が定められており、詳細な内容はカジノ管理委員会規則に明記される

日本の統合型リゾート(Integrated Resort、以下「IR」という。)の議論においては、IR事業全体を規制・監督する機関として国土交通省が任命され、世界最高水準のカジノ規制を的確に執行するため、カジノに関連する各種調査等を担い、監督権限を持つカジノ管理委員会が設置されることとなりました。

IR整備法においては、カジノ管理委員会は、別途、カジノ管理委員会規則を制定することとされていますので(第230条)、ゲーミング施設の面積制限に関連する床面積の算定方法等の事業計画に影響を及ぼす可能性のある項目については、カジノ管理委員会規則の公表が待たれるところです。

IR整備法第11章 (カジノ管理委員会)においては、カジノ管理委員会に関する役割等が制定されています。主要な概要は以下の通りです。

1) 設置 (第213条):カジノ管理委員会は、内閣総理大臣の所轄に属すること

2) 任務 (第214条):カジノ管理委員会は、カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図ることを任務とすること

3) 所掌事務 (第215条):第214条の任務を達成するため、次に掲げる事務を行うこと

1. カジノ事業の監督

2. カジノ施設供用事業の監督

3. カジノ関連機器等製造業等の監督

4. カジノ施設の適正な利用

5. 上記1~4までに掲げる事務を行うために必要な調査及び研究

6. 所握事務に係る国際協力

7. 前各号に掲げるもののほか、法律に基づきカジノ管理委員会に属された事務

4) 職務行使の独立性 (第216条):カジノ管理委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行うこと 

5) 組織等 (第217条):カジノ管理委員会は、委員長及び委員4人をもって組織し、委員のうち2人は非常勤とすることができること

6) 任期等 (第218条):委員長及び委員の任期は、5年とし、再任されることができること

7) 調査の委託 (第229条):カジノ管理委員会は、必要があると認められる場合は、この法律の施行に必要な限度内で、カジノ事業の免許等に係る申請に対する審査又はカジノ事業者等の監督のために必要な調査の一部を、その調査を適切に行うことができるものとしてカジノ管理委員会規則で定める基準に適合する者に委託することができること

8) 規則の制定 (第230条):カジノ管理委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、カジノ管理委員会規則を制定できること

 

また、カジノ管理委員会は、カジノ事業者に対して、例えば以下のような監督権限を有しています。

  • カジノ事業者及びカジノ施設供用事業者の業務及び経理の監査 (第196条)
  • カジノ事業者等が行う業務等に関する報告の徴収等 (第197条)
  • カジノ事業者等に対する監督処分(第204条)

 

この点、カジノ事業者の認可主要株主等(例:5%以上の議決権を有する株主等)に対しても、例えば以下の通り、カジノ管理委員会が対策を講じることができるとされています。

よって、カジノ事業者のみならず、カジノ事業者の認可主要株主等も留意が必要となります。

  • カジノ事業者の認可主要株主等は、その役員を変更する場合には、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、カジノ管理委員会の承認を得る必要がある (第61条1項)。
  • カジノ事業者等の認可主要株主等に対し、監督上必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。そして、カジノ管理委員会は、カジノ事業者等の認可主要株主等がこの法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、認可を取り消すことができる(第205条)。

 

IRビジネス参入においては、将来の背面調査を見据えた事前対応が必要となる

IR事業者免許の申請を検討する事業者においては、将来のカジノ管理員会(又は外部委託先)が実施する背面調査に備え、模擬背面調査等の事前の準備をする必要があります。

カジノ管理委員会は、毎年、カジノ事業者及びカジノ施設供用事業者の業務及び経理の監査を実施する必要があり、カジノ事業者等からの報告徴収権限やカジノ事業者等への監督処分権限も有します。

また、カジノ事業者への免許付与の際には、カジノ管理委員会による背面調査が実施されます。

この背面調査にあたっては、ネバダ州等諸外国の法令等を参考に、極めて厳格な調査が実施されることが想定されています。

その調査範囲・調査項目等の事前検討を実施し、将来の背面調査をスムーズに対応するための事前準備が必要です。

なお、IR整備法第229条によると、「カジノ管理委員会は、必要があると認められる場合は、この法律の施行に必要な限度内で、カジノ事業の免許等に係る申請に対する審査又はカジノ事業者等の監督のために必要な調査の一部を、その調査を適切に行うことができるものとしてカジノ管理委員会規則で定める基準に適合する者に委託することができる」とされています。

今後、背面調査に関する業務等が、カジノ管理委員会から監査法人や弁護士法人等に外部委託される可能性があります。

 

デロイト トーマツ グループでは、背面調査に関連する以下のアドバイザリーサービスを提供します。

  • 我が国での議論及び諸外国の事例を踏まえた、役員、従業員及び地方自治体に向けた背面調査の解説
  • 企業に対するライセンス申請に向けた模擬調査
  • 個人に対するライセンス申請に向けた模擬調査 等


背面調査の海外での実施内容等については、統合型リゾート最新情報内の「IR事業者の参入規制と背面調査」に詳しく記載されていますので、ご覧下さい。

 

本稿に関して、より詳細な内容や関連資料等をご要望の場合は以下までお問い合わせください。
IR(統合型リゾート)ビジネスグループでは、Deloitteのグローバルネットワークを活用し、海外事例等を踏まえたIRビジネスに関連する幅広い調査・分析を行っています。

IR(統合型リゾート)ビジネスグループ

info-irbg@tohmatsu.co.jp

連載「我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点」のアーカイブ

本連載では、IR整備法のビジネス参入における留意点について、様々な視点からIRビジネスグループの知見を発信しています。

>>連載「我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点」のアーカイブページ<<

IR(統合型リゾート)ビジネスグループとは

IR(Integrated Resort:統合型リゾート)実施法の審議開始から免許交付までの間に、IRビジネスグループでは参入を目指す日本企業に対し、さまざまなアドバイザリーサービスを提供します。

また、カジノ施設の設置と運営にはさまざまな課題やリスクが指摘されています。そのため、IRビジネスグループでは、日本企業に対する事業支援サービスだけでなく、企業と自治体に対し、IR施設を設置・運営する上で懸念される課題と社会問題の解決に関するアドバイザリーサービスも提供します。

 

>>IRビジネスグループの紹介<<

IR(統合型リゾート)ビジネスグループの最新活動

下記IR(統合型リゾート、Integrated Resort)についての海外事例のナレッジを提供している、IRビジネスグループの最新の活動をご紹介いたします。

 

【IRビジネスグループの最新活動】

>新規コンテンツ「IR事業(カジノ事業)におけるファイナンス」追加
日本におけるカジノ事業を含む統合型リゾート(IR: Integrated Resort)の開発に関する投資資金の調達手段について、海外の事例を交えながら解説 

>新規コンテンツ「IR事業(カジノ事業)におけるMOU締結・JV組成とガバナンス」追加
IR事業(カジノ事業)におけるコンソーシアム形成とJV組成に関するガバナンスのあり方を解説 

>長崎県・佐世保市IR推進協議会主催「IRって何だろう? ~知ろう!考えよう!特定観光複合施設(IR)セミナー」への登壇
有限責任監査法人トーマツ パートナー、IR(Integrated Resort)ビジネスグループ リーダーである仁木一彦が、長崎県・佐世保市IR推進協議会主催「IRって何だろう? ~知ろう!考えよう!特定観光複合施設(IR)セミナー」に講師として参加

>経済産業省「平成29年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(国際博覧会の開催を契機とした持続可能なシステムの構築に向けた課題整理等の調査)」
一般競争入札の結果、経済産業省より受託 

>長崎県・佐世保市IR(統合型リゾート)推進協議会「IR基本構想策定等に係る支援業務」
長崎県・佐世保市IR(統合型リゾート)推進協議会「IR基本構想策定等に係る支援業務」を受託

>和歌山県におけるIR(統合型リゾート)基本構想策定のアドバイザリー業務委託
和歌山県におけるIR基本構想策定のアドバイザリー業務委託を受託

>大阪IR(統合型リゾート)基本構想(案)策定支援等業務
大阪IR基本構想(案)策定支援等業務を受託

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