ナレッジ

カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除 ~我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点(7)~

統合型リゾート(IR、Integrated Resort)

本稿では、「カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除」をテーマに、IR整備法の主要論点の解説を行います。IRビジネス参入においては、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響に対するリスクマネジメントが必要となります。特に、ギャンブル依存症やAMLに起因した問題が生じた場合、社会的な問題となるだけでなく、カジノライセンスのはく奪に繋がる可能性があるため、万全の内部統制の整備を行う必要があります。

カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響を排除するための対応が必要である

日本の統合型リゾート(Integrated Resort、以下「IR」という。)の議論においては、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響〔依存症、マネー・ローンダリング(Anti-Money Laundering:以下、「AML」という。)等〕への対応につき、世界最高水準のカジノ規制を導入することで、万全を期すことがIR推進本部会合にて安倍内閣総理大臣によって発表されました。
 

1. IR整備法における社会的影響への対応要請

IR整備法においては、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響(依存症、AML等)への対応方針を区域整備計画等に織り込む必要があるとされており、具体的に、以下の通り規定されております。

(1)基本方針 (第5条2項6号):
基本方針では、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うために必要な施策に関する基本的な事項を定める必要がある。

(2)実施方針 (第6条2項7号): 
実施方針では、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うために必要な施策及び措置に関する事項を定める必要がある。

(3)区域整備計画 (第9条2項7号、第9条11項3号ホ):
区域整備計画では、国土交通省令で定めるところにより、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うために必要な施策及び措置に関する事項を定める必要がある。また、「設置運営事業者等がカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うために必要な措置を講ずると認められるものである」ことが、国土交通省による区域認定時の選定基準の一つとされている。

(4)実施協定(第13条1項4号):
認定都道府県等及び認定設置運営事業者等は、実施協定を締結する際に、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うために必要な施策及び措置に関する事項を盛り込む必要がある。
 

2. カジノ事業者が実施すべき対策

カジノ事業者が実施すべきカジノ行為に対する依存防止のための措置及び入場規制として、第68条~72条(依存の防止のための措置及び入場規制等)において、以下の通り規定されています。

条文番号

内容

第68条1項(カジノ行為に対する依存の防止のための措置)

カジノ事業者は、カジノ行為に対する依存を防止するため、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、依存防止規程に従って、以下に掲げる、カジノ施設を利用させることが不適切であると認められる者のカジノ施設の利用を制限する措置を講じる必要がある。
1. カジノ入場者又はその家族その他の関係者の申出により当該入場者のカジノ施設の利用を制限する措置
2. カジノ行為に対する依存による悪影響を防止する観点から、カジノ施設を利用させることが不適切であると認められる者のカジノ施設の利用を制限する措置
3. カジノ施設の利用に関する入場者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他のカジノ施設の利用に関する入場者の適切な判断を助けるための措置
4. その他、カジノ行為に対する依存による悪影響を防止する観点から必要なものとしてカジノ管理委員会規則で定める措置

第69条1項
(入場規制)

カジノ事業者は、政令で定める場合を除き、20歳未満の者、暴力団員又は暴力団員で無くなった日から起算して5年を経過しない者等をカジノ施設に入場させ、又は滞在させてはならない。

第70条1項
(入退場時の本人確認等)

カジノ事業者は、入場者について、当該入場者がカジノ行為区画に入場しようとする時及びカジノ行為区画から退場しようとする時ごとにマイナンバーカードを利用した方法その他カジノ管理委員会規則で定める特定の方法で入退場管理を行う必要がある。

第71条1項
(入場禁止対象者によるカジノ施設の利用の防止のための措置)

カジノ施設の適正な利用を確保するため、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、カジノ施設において入場禁止対象者を発見するために必要な措置、カジノ施設において入場禁止対象者を発見した場合においてこれをカジノ施設から退去させる措置その他入場禁止対象者によるカジノ施設の利用を防止するために必要な措置を講じなければならない。

第72条1項
(入場規制等に係る規定の遵守のための措置)

カジノ事業者は、次に掲げる措置を講じなければならない。
・従業者に対する教育訓練の実施
・規定の遵守のための行為準則の作成
・規定の遵守のために必要な業務を統括管理する者及び当該業務を監査する者の選任
・その他、カジノ管理委員会規則で定める措置


上記に加え、免許申請を行うIR事業者はカジノ管理委員会に第55条1項の依存防止規程及び第56条1項犯罪収益移転防止規程を提出しなければなりません(第40条2項)。

また、カジノ事業に関するその他の措置として、IR整備法において規定されている関連規定は以下の通りです。

条文番号

概要

第103条

カジノ事業者による取引時確認等の措置等の適切な実施のための措置
(犯罪による収益の移転防止のための措置)

第104条

カジノ事業者によるチップの譲渡等の防止のための措置
(犯罪による収益の移転防止のための措置)

第105条

カジノ事業者によるチップの譲渡等の禁止の表示義務
(犯罪による収益の移転防止のための措置)

第106条

広告及び勧誘の規制

第107条

カジノ管理委員会による広告又は勧誘の中止命令等

第108条

カジノ事業者その他の事業者によるカジノ行為関連景品類の規制

第109条

カジノ事業者による一定の取引に関する届出規制

第110条

カジノ事業者によるカジノ施設及びその周辺における秩序の維持のための措置

第111条

カジノ事業者による苦情の処理のための措置

第112条

カジノ事業者による入場禁止対象者等の利用禁止等の表示義務

第113条

カジノ事業者間の連携協力



IRビジネス参入においては、有害な影響に対するリスクマネジメントが必須となる

既にIRが先行導入されている諸外国での適用事例等を参考にして、有害な影響に対する万全の内部統制を構築する必要があります。

また、IRに参入する企業にとって、IR導入に伴う負の要素を十分に排除/軽減するためのリスクマネジメントが、RFP及び区域認定時の重要な評価ポイントの一つになることが想定されます。

過去、シンガポールにおいては、2010年にマリーナベイサンズ及びリゾートワールドセントーサの2つのIRが開業しましたが、カジノ合法化の閣議決定を行う段階で、カジノ導入により危惧される社会問題に対し専門の行政機関を設立して対策を講じる旨を発表しました。

各カジノ事業者も、カジノ入場者に対する自己及び家族申請に基づく入場制限措置等の各種対策を行っています。

IR整備法においては、シンガポールと同様にカジノ行為に対する依存の防止のための厳格な措置等が要求されることになります。

また、カジノ事業者に対して、AML対策として、万全の内部統制の整備を例外なく義務付けるべきであるという方向性が「IR推進会議取りまとめ」において示されました。

IR整備法においては、「犯罪による収益の移転防止のための措置」として、カジノ事業者による取引時確認等の措置等を適切に実施するための措置等が要求されています。

ギャンブル依存症やAMLに起因した問題が生じた場合、社会的な問題となるだけでなく、IR整備法を遵守していないという理由でカジノ管理委員会から付与されたカジノライセンスのはく奪に繋がる可能性もあります。

IR事業への参入を検討する企業においては、社会的な問題への対応に加えて事業継続の観点から、有害な影響に対する適切なリスクマネジメントを講じる必要があります。

 

デロイト トーマツ グループでは、IR導入に対するリスクを排除/軽減するための対策として、以下のアドバイザリーサービスを提供いたします。

リスク管理体制の構築

  • リスクの識別と評価
  • リスクマネジメント手法の検討
  • リスク管理体制の構築
     

AML(資金洗浄対策)規制対応

  • AMLプログラム評価、改善コンサルティング
  • AMLリスクアセスメントプログラムの評価改善
  • KYCプログラムの評価、改善
  • KYCに関するコンサルティング
  • 顧客デューデリジェンス(CDD)
  • 取引監視システムに関するコンサルティング
  • 疑わしい取引検出、監視、分析体制構築


ギャンブル依存症対策

  • ギャンブル依存症対策規制対応
  • 自己排除プログラムの策定
  • レスポンシブル、ギャンブリングチームの設定

 

なお、IR設置に伴う弊害防止対策については、「統合型リゾート最新情報~IR法(カジノ法)、海外事例など」ページ内の「5.世界最高水準の規制(2):弊害防止対策」に詳しく記載されていますので、ご覧下さい。

 

本稿に関して、より詳細な内容や関連資料等をご要望の場合は以下までお問い合わせください。
IR(統合型リゾート)ビジネスグループでは、Deloitteのグローバルネットワークを活用し、海外事例等を踏まえたIRビジネスに関連する幅広い調査・分析を行っています。

IR(統合型リゾート)ビジネスグループ

info-irbg@tohmatsu.co.jp

連載「我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点」のアーカイブ

本連載では、IR整備法のビジネス参入における留意点について、様々な視点からIRビジネスグループの知見を発信しています。

>>連載「我が国のIRビジネス参入における法制度上の留意点」のアーカイブページ<<

IR(統合型リゾート)ビジネスグループとは

IR(Integrated Resort:統合型リゾート)実施法の審議開始から免許交付までの間に、IRビジネスグループでは参入を目指す日本企業に対し、さまざまなアドバイザリーサービスを提供します。

また、カジノ施設の設置と運営にはさまざまな課題やリスクが指摘されています。そのため、IRビジネスグループでは、日本企業に対する事業支援サービスだけでなく、企業と自治体に対し、IR施設を設置・運営する上で懸念される課題と社会問題の解決に関するアドバイザリーサービスも提供します。

 

>>IRビジネスグループの紹介<<

IR(統合型リゾート)ビジネスグループの最新活動

下記IR(統合型リゾート、Integrated Resort)についての海外事例のナレッジを提供している、IRビジネスグループの最新の活動をご紹介いたします。

 

【IRビジネスグループの最新活動】

>新規コンテンツ「IR事業(カジノ事業)におけるファイナンス」追加
日本におけるカジノ事業を含む統合型リゾート(IR: Integrated Resort)の開発に関する投資資金の調達手段について、海外の事例を交えながら解説 

>新規コンテンツ「IR事業(カジノ事業)におけるMOU締結・JV組成とガバナンス」追加
IR事業(カジノ事業)におけるコンソーシアム形成とJV組成に関するガバナンスのあり方を解説 

>長崎県・佐世保市IR推進協議会主催「IRって何だろう? ~知ろう!考えよう!特定観光複合施設(IR)セミナー」への登壇
有限責任監査法人トーマツ パートナー、IR(Integrated Resort)ビジネスグループ リーダーである仁木一彦が、長崎県・佐世保市IR推進協議会主催「IRって何だろう? ~知ろう!考えよう!特定観光複合施設(IR)セミナー」に講師として参加

>経済産業省「平成29年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(国際博覧会の開催を契機とした持続可能なシステムの構築に向けた課題整理等の調査)」
一般競争入札の結果、経済産業省より受託 

>長崎県・佐世保市IR(統合型リゾート)推進協議会「IR基本構想策定等に係る支援業務」
長崎県・佐世保市IR(統合型リゾート)推進協議会「IR基本構想策定等に係る支援業務」を受託

>和歌山県におけるIR(統合型リゾート)基本構想策定のアドバイザリー業務委託
和歌山県におけるIR基本構想策定のアドバイザリー業務委託を受託

>大阪IR(統合型リゾート)基本構想(案)策定支援等業務
大阪IR基本構想(案)策定支援等業務を受託

お役に立ちましたか?