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インドネシア・ジャカルタにおける経営課題の変化を概観する:ジャカルタ出張を振り返って
APリスクアドバイザリー ニュースレター(2022年6月28日)
渡航制限・規制緩和を受け、筆者が2017年より4年半過ごしたジャカルタを約1年ぶりに訪問しました。ジャカルタ⇔シンガポール間の往来は急速に増加しており、搭乗した便もほぼ満席に近い状況であり、徐々にCOVID-19への対応が緩和されていることを実感しました。
また、ジャカルタ名物とも言える交通渋滞にも巻き込まれ懐かしさも覚えた一方、多くの「変化」を感じることができました。本コラムでは、当該出張を通じて感じられたジャカルタの変化をご紹介したいと思います。
■急速な「決済手段の変化」・「デジタルの普及」
タクシーや飲食店などにおいて、以前は現金決済が主流でしたが、キャッシュレス決済の普及がかなり進んでおり、滞在中はキャッシュレス決済を利用する機会が多くありました。ライドシェアアプリの利便性も向上しており、以前はピックアップ場所をチャットや電話を通じてドライバーに説明する必要がありましたが、アプリ上で指定・選択できるようになり、地理に明るくない方やインドネシア語がわからない方も利用しやすい環境が整っています。
デジタルバンクの広告宣伝を目にする機会も多くあり、どのようにマネタイズしていこうとしているのか、また、金融サービスにアクセスしていない層にどうリーチしていこうとしているのかを調べてみる価値があるように思われます。
デジタルを用いたサービスの増加など、テクノロジーの普及が今後も進んでいくだろうと感じられます。しかし一方で、利用者数やダウンロード数の増加・サービス基盤の整備のために積極的に資金を投下してきたスタートアップにおいても、財務面の改善に向けて人員削減を開始するといった話も耳にしました。
このような観点から、業界の垣根を超えた動きも含めて自社の経営環境の変化を注視していただきたいとアンテナを張る必要があると思われます。
■「セキュリティ」・「ESG」への関心の高まり
COVID-19感染拡大期は、感染防止・事業継続の確保に向けた取り組みを進めることが企業の関心の中心でしたが、一定の落ち着きがみられてきている昨今の環境下においては、不正アクセスの被害の増加も受け、サイバーセキュリティへの対応に移りつつあると感じられています。
例えば、ウィルス対策ソフトの導入や情報セキュリティ方針の整備といった基礎的な対応だけでは不十分と感じ、不正アクセスの検知に向けたツールの導入やインシデント発生時の対応能力の強化といった、従来の対応からさらに一段踏み込んだ対応のニーズが高まっているようです。
デロイトのインドネシア事務所に所属するプロフェッショナルによると、「インドネシア企業や多国籍企業においても、脆弱性診断やその結果に基づく対応策の導入支援など、同様のニーズが増えている」との声が挙がっています。
■組織の「高齢化」・「空洞化」
今回、特に印象に残っているのは、多くの企業で「組織の高齢化・空洞化」という課題を耳にしたことです。具体的には、以下のような課題が挙げられています:
- これまでの成長を支えてきたベテラン社員の高齢化が進んでいる一方で、若手社員の育成が進んでおらず、優秀なマネジャー候補人材が退職してしまい、世代交代が進まない。
- 世代交代できないため、定年を迎えたベテラン社員に契約延長して業務に取り組んでもらっているものの、業務改善や新たな取り組みを推進していく意欲がなく、旧態依然のやり方に固執している。
- ベテラン社員の存在は、若手社員からはガラスの天井や新しいことにチャレンジしていく障害と見え、将来性がないと感じて、退職してしまう。
COVID-19感染拡大期において組織の見直しなどには着手することが難しく、現状維持を続けた結果、課題の先送りとなったという認識があるようです。組織の高齢化・空洞化、それに伴う業務の属人化・ブラックボックス化を優先課題である、と企業も多い状況であり、若手社員を中心とした業務変革プロジェクト・デジタル導入プロジェクトに着手しようと考えている声が印象的でした。
COVID-19感染拡大の収束が見えてきた中で、経営環境の変化に応じて、リスクへの対応や組織変革が急務であると改めて感じました。デロイト トーマツ グループでは、企業が抱える経営課題の解決に向けた支援を行っています。ぜひお役に立てることがありましたら、お気軽にお声がけいただけますと幸いです。
著者:蓑和 秀夫
※本ニュースレターは、2022年6月28日に投稿された内容です。
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