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「英国EU離脱への備え」第3回 経済的関係、割れる意見

日経産業新聞 2016年9月9日掲載

EU離脱が英国経済にもたらす影響は基本的には、今後英国がEUとの間で、どのような貿易・金融面での関係を構築していくのかに強く依存します。考えられる方式とは。

経済的関係、割れる意見

デロイト トーマツ グループ ブレグジット レスポンス センター 大山剛

EU(欧州連合)離脱が英国経済にもたらす影響は基本的には、今後英国がEUとの間で、どのような貿易・金融面での関係を構築していくのかに強く依存する。この点で国民投票後、最初に有力な選択肢として取り上げられたのが「ノルウェー・プラス」と呼ばれる方式である。

これは貿易・金融面で現在と同じような関係を維持しつつ(ノルウェー型)、移民の規制のみは例外的に認めてもらう(プラスの部分)というものだ。この方式は、英国経済への悪影響を相当程度抑えてくれるが、移民を制限するという「いいとこ取り」をEUが受け入れてくれるのかという疑問が残る。

さらにこの方式の場合には、EUが作成する規制に関して、作成過程で関与できないまま、完成品をそのまま導入することも義務付けられる。

これに異論を唱えてきたのが、英国の金融監督当局である。英国にとって、英国主導の金融規制はシティー(英金融街)の繁栄には不可欠であり、独仏が主導する規制をそのまま受け入れるわけにはいかないということだ。

こうした中、監督当局や英国の金融界は、個別の自由貿易協定で構成される「スイス型」に近いものを希望していると言われている。

このほかにも例えば、よりEUと距離を置き、貿易等経済的関係のみに焦点を当てた「カナダ型」を唱える声もある。このように英国内ではEUとの新しい経済的関係の姿に関して、意見が割れているのが実情であり、EU離脱にかかわる正式通告を遅らせている一因とも言われている。

メイ首相は就任時の演説の中で、生産性の改善やロンドンと地方との格差縮小を意識した地方経済の振興、そのための公共インフラ投資の拡大、さらに貧富の差の是正を意識した特権階級の負担増を約束した。こうした施策は今回のEU離脱を支持する英国民の投票行動が、実はロンドンと地方の格差拡大、あるいは中産階級の没落と貧富の差拡大に根付いたものだと分析すれば、合点がゆく。

ただ、比較優位な産業が栄えるグローバル経済の中で、製造業を中心とした地方経済振興と、資本や人をロンドンに引き寄せポンド高を招きやすい金融センター振興は、トレードオフ(相反)の関係にあると見るのが自然だ。

製造業に優しいノルウェー型、金融に優しいスイス型、あるいはカナダ型等その他のうち、どれに近いものを選ぶのかは、メイ首相が目指す今後の英国経済の姿にも強く依存するといえそうだ。

 

*日本経済新聞社の許諾を得て掲載しています。断りなく複写・転載はご遠慮ください。

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