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「英国EU離脱への備え」第7回 4つの選択、企業は負担

日経産業新聞 2016年9月16日掲載

離脱後のEUとの関係で英国財務省が挙げる主な選択肢は、ノルウェー型、スイス型、カナダ型、WTO型の各オプションです。4つの選択肢について、現状の見立てを解説します。

4つの選択、企業は負担

デロイト トーマツ グループ ブレグジット レスポンス センター 羽生田 慶介

離脱後のEU(欧州連合)との関係で英国財務省が挙げる主な選択肢が、(1)欧州経済領域(EEA)への残留(ノルウェー型)(2)英・EU間の個別合意形成(スイス型)(3)英・EU自由貿易協定の締結(カナダ型)(4)特別な協定を締結しない(WTO型)――の各オプションだ。前者ほどEU残留の状態に近い。

経済的損失の回避の視点では「EEA残留」が望まれる。英国はEU単一市場へのアクセスを確保しつつ、EUの財政負担を一定程度削減できる。だが、英国・EU双方に根源的な拒否感がある。EEAの「EU単一市場へのアクセス」には「人の移動」の自由も含まれ、移民への不満が解消されない。

また、EEA協定の順守は離脱派が嫌忌する「EU法・規制に引き続き拘束される」のと同義だ。一方でEUの政策意思決定への参加権限は失われる。これが英国側の拒否の理由だ。EUとすれば、離脱の連鎖につながる「EUを離脱しても経済メリットを享受」する状態の看過はできない。 

双方の思惑を両立させるには、独自の二者間協定を締結するしかない。参考となる既存の対EU二者間協定のうち「スイス型」は、貿易について包括的な既存協定(欧州自由貿易連合=EFTA)に加盟しつつ、その他の分野を個別に交渉する。交渉次第で英国が満足する協定を設計できるが、EUは「いいとこ取り」を許容しないだろう。

現実的に可能性が高いのは、英国を完全な「域外国」として新たな協定を締結する「カナダ型」だ。EU財政負担や移民などの項目を含まない経済協定の設計が可能で、距離を置いたウィンウィンの関係が構築できる。
 
覚悟すべきはEU側の強硬な交渉だ。英国とEUの間の関税・非関税障壁は、一般に予想されているよりも大きく残されるリスクがある。いずれの選択肢にせよ、EU関税同盟からの脱退となれば、輸出入に際しこれまで必要なかった原産地証明書の作成など企業の負担は増える。 

 

*日本経済新聞社の許諾を得て掲載しています。断りなく複写・転載はご遠慮ください。

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