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「英国EU離脱への備え」第8回 英への輸出、コスト増に

日経産業新聞 2016年9月20日掲載

EUとFTA(自由貿易協定)を締結済みの国、EUとの交渉を終えFTA発効を待つ国、EUとFTAを交渉中の国。英国のEU離脱による各国の通商に与える影響を解説します。

英への輸出、コスト増

デロイト トーマツ グループ ブレグジット レスポンス センター 羽生田 慶介

EU(欧州連合)とFTA(自由貿易協定)を締結済みの国には、英国のEU離脱は漠然とした環境変化ではなく、コスト増という明確なインパクトとなる。

そのうち、日系企業に関連する生産拠点が多いのがメキシコと韓国だ。メキシコから英国には電機・機械を中心に年間2200億円の輸出があり、韓国からは自動車分野など年間6600億円の輸出がある。

両国に工場を持つ日系企業は英国との貿易でFTAを活用してきたが、この前提が狂う。デロイト トーマツの分析では、英国と新たな協定を締結できなければ、メキシコは年間63億円、韓国は同310億円の対英国の輸出コスト増となる。

EUとの交渉を終え、FTA発効を待っていたカナダやベトナムにも大きな動揺が走る。メキシコやベトナムはTPP(環太平洋経済連携協定)を梃子(てこ)にした産業誘致をもとに、欧州への輸出を拡大させようとしていた矢先の状況変化となってしまった。

日本や米国などEUとFTA・EPA(経済連携協定)交渉中だった国は、EUと英国それぞれとの協定づくりが必要となる。この場合、米オバマ大統領が4月に「英国は列の後ろに並ぶ」と明言したように、各国はEUとの交渉を優先する。

EUとしても求心力維持のために域外の主要経済圏との交渉を急ぎたい。だが交渉相手国からすれば、EU第2のGDP(国内総生産)を持つ英国の離脱で交渉の前提は大きく狂う。いずれの交渉も一時中断となり、攻守の方針を再検討する必要がある。

EU・カナダのFTAの場合、2009年の交渉開始から2014年の最終合意まで約5年、発効(2017年の場合)まで合計約8年を費やした。スイスとの交渉も同様だ。これら交渉の主体はあくまでEUであり、英国は過去40年以上も独自にFTA交渉を経験していない。

EUとして結んでいた60を超える国とのFTAの締結し直しに加え、対日・米を含む新たな交渉を完遂するには膨大なリソースの投入が必要となる。英国の貿易の半分を占めるEU域外との通商条件は、中長期的に厳しい条件になる可能性が高い。 

 

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