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「英国EU離脱への備え」第10回 高まる地政学リスク

日経産業新聞 2016年9月23日掲載

地政学リスクには地域・国家間紛争の他、大規模な暴動・テロ事件等も含まれるとされますが、共通するのが民族・宗教の問題です。英国のEU離脱を決める国民投票の結果は、英国内に外国人流入の拡大に対する不満がくすぶっていることを示しました。

高まる地政学リスク

デロイト トーマツ グループ ブレグジット レスポンス センター 茂木 寿

英国は第2次大戦後に空前の経済不振に陥ったが、1979年のサッチャー政権の誕生以降、国有企業の民営化、金融サービスを中心としたサービス立国化の政策で経済的な回復を図ることができた。一方、世界では1990年代以降、旧ソ連の崩壊を契機に各地で民族・宗教問題が噴出し、地域紛争が頻発するようになり、テロ組織等による過激な活動も活発化した。

現状の世界は政治、経済、社会の全ての面で流動化している状況となっている。地政学リスクという言葉が頻繁に登場するようになったのも、これらの状況を映し出していると言える。

地政学リスクには地域・国家間紛争の他、大規模な暴動・テロ事件等も含まれるとされるが、共通するのが民族・宗教の問題である。例えば、英国の2011年の宗教構成(米中央情報局調べ)はキリスト教59.5%、イスラム教徒4.4%、ヒンズー教徒1.3%、その他34.8%となっている。

2011年以降、イスラム教徒、ヒンズー教徒は増加を続け、イスラム教徒は現状では約300万人が居住し、全人口の4.8%を占めているとされている。ヒンズー教徒の増加も続いており、2020年には全人口の1.6%を占め、100万人を突破するとの予測もある。

英国のEU離脱を決める国民投票の結果は、英国内に外国人流入の拡大に対する不満がくすぶっていることを示した。昨今、欧州全体で移民・難民等の外国人流入が拡大しているが、その多くの国で外国人排斥を標榜する勢力(極右政党等)の支持が拡大している。それに伴い、失業率の上昇が移民増加に起因しているとの考えが広がり、移民排斥の動きが先鋭化している面も見られる。

一方、これに反発する移民等による暴動等も頻発している。更にはテロ等も発生しており、社会が不安定化している兆候も見られる。今回の投票結果は、英国内でも同じような事態が発生する可能性があるとの懸念が示されているとも言える。 

 

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