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「英国EU離脱への備え」第11回 英中接近が加速の可能性

日経産業新聞 2016年9月26日掲載

英国のEU離脱は中国にも影響を与えます。短期的に見ればマイナスとなる懸念がありますが、長期的に見れば中国の経済および政治面での利益につながる可能性があります。中国への影響について解説します。

英中接近が加速の可能性

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英国のEU(欧州連合)離脱は中国にも影響を与える。短期的に見ればマイナスとなる懸念があるが、長期的にみれば中国の経済および政治面での利益につながる可能性がある。

為替レートをみると、英国のEU離脱後、ポンドが急落し、米ドルと日本円は高騰したが、米ドルと連動性の高い人民元は、むしろ元安と動いた。人民元の為替相場は「管理変動相場制」が適用されている。すなわち、政府の規制で人民元為替レートの基準値が毎日設定され、変動の上下値幅も決定される仕組みになっている。

景気対応や輸出刺激など諸説はあるが、昨年8月に中国人民銀行が対米ドルの基準値を引き下げてから、元安は続いてきた。英国のEU離脱による米ドル高に対し、人民元は英国での投票結果公表当日でも0.18%下落し、2週間で1.64%下落した。結果的に中国企業の輸出の競争力は上がり、日本企業にとっては価格競争の面で不利となる可能性が高い。

英国のEU離脱が人民元の国際化に及ぼす影響はどうか。海外での人民元の取引拠点としては、英国は香港に次いで2番目の地位である。ただ、英国での人民元市場の規模はさほど大きくない。ロンドンの欧州金融中心の地位がEU離脱で揺らいだとしても、影響は限定的と考えられる。

加えて、フランクフルトやルクセンブルク等の市場でも人民元の取引はある。人民元の国際化は、欧州で多角的に発展していく展望が期待できる。ただ、日本円と東京為替市場の存在感を低下させるリスクは続くため、人民元の行方は注視する必要があろう。

英国のEU離脱に対し、中国政府は「英国人民の選択を尊重する」と声明した。「英中接近」は加速する可能性が高いであろう。昨年、英国が米国の反対を押し切り中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟し、習近平主席が公式訪英した時も英中の蜜月ぶりを示した。

今月に20カ国・地域(G20)首脳会議に出席した英メイ首相も「英中関係は今、黄金時代にある」と強調した。仮に英国に続きEUの他の国が次々と離脱すれば、ユーロの地位が低下するのは避けられない。人民元の地位は相対的に高まり、国際社会での中国の影響力と発言権が高まる可能性も出てくる。

 

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