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「英国EU離脱への備え」第12回 シナリオ別にリスク分析

日経産業新聞 2016年9月27日掲載

国民投票により英国のEU離脱方針が決定された後、英国ポンドが下落し、英国に拠点を有する日本企業や、英国に輸出する多くの日本企業が影響を受けました。企業が対応すべきリスク分析および影響分析について解説します。

シナリオ別にリスク分析

デロイト トーマツ グループ ブレグジット レスポンス センター 杉山 雅彦

英国の国民投票によってEU(欧州連合)離脱方針が決定された後、英国ポンドが下落し、英国に拠点を有する日本企業や、英国に輸出する多くの日本企業が影響を受けた。

ポンドは下落傾向が続き、国民投票前の水準に回復する見込みは立っていない。マクロ経済の観点からもEU離脱が下押し圧力を及ぼす可能性は高く、円高傾向がしばらくは続くだろう。

また、リスボン条約􈇓条に基づく正式な離脱宣言がなされない限り、英国は離脱宣言前のEU加盟国としての地位及び責任を継続する。離脱宣言がなされたとしても、2年間の猶予期間後にEUから離脱するため、実質的な影響は2年以上先と考え、時間的な余裕があると考える経営者も多いようだ。

一方で、ロンドンに拠点を置く金融機関、特に外資の動きは早かった。離脱方針の決定に備え、国民投票前から拠点を英国外に移動させる用意をしており、投票後にはいち早く拠点及び人員移動を進める金融機関が多かった。

では製造業の多い日本企業は何をすべきか。まず検討すべきは、選択肢として挙げられている離脱シナリオ(「ノルウェー型」「スイス型」「カナダ型」等)のそれぞれに応じて、自社がどのような影響を受けるのかをリスク分析することである。

例えば、英国は製造業としての一定のインフラを有している。このため、日本企業のいくつかは英国に製造拠点を持ち、現地工場で組み立てた製品を英国外のEU諸国に輸出している。離脱シナリオによっては英国からの輸出に関税が課され、追加的な原価上昇の要因となって、価格競争力が低下することが考えられる。

さらにこの場合、製造拠点を英国外に移動させるだけではなく、グローバルなサプライチェーンを見通したうえで、物流、税金、資金調達、人的リソース等を考慮して、何がリスク要因となるのかを分析し、競争力を維持するための最適解を検討していくことが必要となる。

離脱シナリオが確定しない段階ではあるものの、すでに欧米諸国に本社を有する企業の多くは、離脱シナリオ別の影響分析を始めている。それぞれのシナリオの蓋然性を常に注視しながら意思決定項目(戦略オプション)を選別し、必要に応じて先んじて対策を講じておくことは日本企業の競争力に大きく影響を及ぼす。

 

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