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「英国EU離脱への備え」第14回 グローバル戦略の再考を

日経産業新聞 2016年9月29日掲載

日本企業が欧州戦略を再考するにあたってまず重要なポイントは、先行きの不透明さは当面変わらないことを前提に、自ら情勢分析をして起こりうる複数のシナリオを描くことです。

グローバル戦略の再考を

デロイト トーマツ グループ ブレグジット レスポンス センター 中島 正樹

9月2日、日本政府は「英国及びEU(欧州連合)への日本からのメッセージ」で離脱プロセスの明確化と日本企業への影響を最小化する具体的な要望を示し、英国政府を含む関係者の注目を集めた。ただ現時点では、英国が欧州理事会に離脱を正式に通告するタイミングが年明けになりそうだという以外、確からしいことは何もない。 

日本企業が欧州戦略を再考するにあたってまず重要なポイントは、先行きの不透明さは当面変わらないことを前提に、自ら情勢分析をして起こりうる複数のシナリオを描くことである。

来年にかけて欧州主要国で行われる選挙の結果次第では、英国に対するEUの強硬姿勢は大きく変わり得る。先行きを必要以上に悲観的に見たり、他社との横並びを気にしたりする受け身の姿勢では、動くべきタイミングで後手に回り、機会を逸することになる。

次のポイントは、離脱が自社の競争力に中長期で与える影響を複眼的におさえることである。関税と通関手続きによるコスト競争力の低下やEU市場と顧客へのアクセスへの影響に加え、EUの研究開発予算や共同研究の成果を享受できなくなることによる製品開発力への中長期的な影響等も把握する。

その一方、英国政府が企業への影響を相殺するために打ち出すとみられる施策、例えば法人税率の引き下げやEUへの「準加盟」的なステイタス確保の可能性も想定する。サプライチェーンの見直しや大陸への拠点の再配置は、この両方を複眼的ににらんで是非を検討する必要がある。

特に重要なのは、現在ロンドンに集積し、欧州から広く中東・アフリカもカバーする情報や技能を持つ人材の維持・確保である。いずれのシナリオの下でも、自社の中長期的な競争力の源泉となるコア人材へのグリップを緩めない策を講じなければならない。

最後のポイントは、英国との今後の新たな関係を想定してグローバル戦略を再考することである。離脱による国内経済の失速が確実視されるなか、英国は欧州外の主要国との新たな関係を模索している。

日本企業は苦手だが英国企業は強みとするグローバル経営やガバナンスの力を活用し、例えばアジアの戦略市場で影響力を高めるような新たなパートナーシップをグローバル戦略に加えたい。

 

*日本経済新聞社の許諾を得て掲載しています。断りなく複写・転載はご遠慮ください。

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