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「英国EU離脱への備え」第15回 M&A、長期の影響限定的

日経産業新聞 2016年9月30日掲載

英国は整備された法制度や国際金融センターとしての地位、英語が堪能で国際色豊かな人材の多さなどを背景に、歴史的に欧州におけるM&A取引の中心であり続けています。EU離脱が英国のM&A市場に与えた影響は現時点で様々です。

M&A、長期の影響限定的

デロイト トーマツ グループ ブレグジット レスポンス センター サイモン ジェームス メイザー

英国は整備された法制度や国際金融センターとしての地位、英語が堪能で国際色豊かな人材の多さなどを背景に、歴史的に欧州におけるM&A(合併・買収)取引の中心であり続けている。

EU(欧州連合)の「単一市場」としての強みを生かし、資本、貿易、労働者をひき付け、M&Aによる投資を日本だけではなく、グローバル全体の市場参加者から呼び込んだ帰結であるとも考えられる。実際、2015年における欧州域内のM&A取引額の約40%(金額で4940億ドル)を英国が占めた。

EU離脱が英国のM&A市場に与えた影響については現時点で様々である。まず、EU離脱の国民投票以前より、M&A取引件数は減少しており、2016年第1四半期は前年同期比で18・7%減っていた。しかしながら、2016年第2四半期は大型案件があったほか、前の期の反動もあって取引件数は増加している。

デロイトUKの調査では、企業の最高財務責任社(CFO)の73%が会社の将来に何らかの不安を覚えると回答するなど、英国内で事業活動をすることに悲観的であるとの結果が出た。一方で、EU離脱を原因としたポンド安や英国株価市場の低迷で、特に中国をはじめとした海外市場参加者の英国企業買収のハードルが低くなりつつある。

3〜5年後の影響はどうだろうか。イングランド銀行は、インフレ率の上昇に起因する実質所得の減少および経済成長への抑制が見込まれることから、EU離脱以前の経済成長予測と比較し、今後3年間で成長が2・5%減退すると予測している。

また、一つの国で営業の許可を得た金融機関が域内のほかの加盟国でも自由に営業できる「パスポート制度」による優越的地位を失う。このためEUのほかの国々が、国際金融センター及びヨーロッパ圏内のM&Aの中心地をロンドンから移転させる動きもある。

EU離脱は「離婚」に例えることができ、ヨーロッパ各諸国の結束を弱め、経済的にも何らかの影響をもたらすと想定される。それでもなお、高い内需とグローバルでの各国のつながりで支えられる英国は、今後ともヨーロッパ圏でのM&A取引の中心地であり続け、英国M&A市場への長期的な影響は限定的になると予想される。

 

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