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基礎からのフォレンジック講座 第4回

不正防止・発見と通報制度

企業の不正リスクや係争・訴訟に関するスキルなど、フォレンジックに関して基礎からわかりやすく解説する講座方式の連載記事。 第4回は、企業の効果的な不正の予防・発見について考えてみたい。

業務監査で不正の端緒を発見するのは困難

いわゆる通常の業務監査で不正の端緒を発見するのは難しく、発見対象とする手口を想定しその発見を目的とした手続きが必要となる。では、不正発見の有効な手段はあるのだろうか。

通報制度は不正発見の有効な手段

デロイト トーマツ フィナンシャルアドバイザリーでは定期的に企業の不正リスク実態調査を実施している。最新の調査結果によると、不正が発覚したルートとしては、多い順に通報による発覚が3割程度(内部、外部通報の合計)、次いで業務プロセス上の統制活動からが約2割となっており、通報制度が不正発見の有効な手段であることを示している(下記、図表参照)。

一方で海外での同様の調査結果をみると、英米豪からアジア各国まで、どの地域をみても不正のおよそ5割が通報によって発見されている。この差は何を物語っているのだろうか。

通報制度に関するグローバル会議での議論や日本での実務経験から、この差は国や地域の文化に根ざしたものではなく、通報制度活性化の努力の度合いによるものであるといえる。通報で命が危険にさらされる国でも長年の努力で通報が活発になっている事実もあり、また、歴史ある日本企業でもトップダウンでのコンプライアンス重視と通報活性化施策により通報制度が有効に機能している例がある。まだ日本の各企業では通報活性化の努力の余地があるだろう。

不正発覚ルート(複数回答)

出典:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

通報制度はトップの強いコミットメントが必要

具体的には、まず、トップが本気で通報(情報提供)を求めていること、通報は不正の芽を小さなうちに摘むことで一緒に働く仲間を救う手段でもあること、通報によって情報提供者が万が一不利益な扱いを受けたらトップ自らが情報提供者を守ること、などを繰り返し伝えて行くことが必要だ。また、通報窓口で受け付けられた情報は、その後どのようなルールでどのように取り扱われるのかについて透明にすることや、窓口の担当者(情報提供者との接点)の十分なトレーニングなども重要である。


本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。


デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 
フォレンジックサービス 
パートナー 麻生 裕貴

執筆者

フォレンジックサービスについて

あらゆる企業不祥事の調査を専門とするスペシャルチームである。不正・不祥事が発覚した企業に対しては、弁護士や企業担当者と連携し最短かつ効果的な事実解明や解決策の提供し、信頼性ある調査結果を提供するばかりでなく、再発防止策の策定や不正実行者の責任追及等、調査後も企業価値の回復に向けて継続的な支援を行っている。 

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