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ストーリーから学ぶカルテル事例 第2回

米司法省との制裁金に関する交渉(1)

ある部品メーカーがカルテル事件に巻き込まれるなかで、さまざまな弁護士以外の外部専門家を活用しながら事件を終結するまでをストーリー仕立てで紹介する。第2回は米司法省との制裁金に関する交渉についての物語である。

企業がカルテルの兆候を感知した場合、ビジネスがグローバル化している現在、世界各国の独占禁止法や競争法に違反する可能性があるため、当然に各国の独禁・競争法に精通した弁護士を雇うだろう。しかし、事件の解決のためには弁護士以外の外部専門家を活用することが事件終結までの期間と関連費用総額を抑えることに繋がることが多い。

本稿ではある部品メーカーがカルテル事件に巻き込まれるなかで、さまざまな弁護士以外の外部専門家を活用しながら事件を終結するまでをストーリー仕立てで紹介する。
 

背景

A社は機械メーカー向けの基幹部品を製造販売する日本企業である。A社の主要取引先はさまざまな機械メーカー(以下「OEM」という)であり、OEMの製品(機械完成品)は世界の市場で販売されている。A社は主にその製品(機械部品)を日本国内の工場と中国、米国子会社で製造し、複数のOEMの日本および米国の工場に供給している。あなたはこのA社に法務部長として勤務している。

ストーリー2

米司法省との制裁金に関する交渉

<間接売上の推計>

あなたの会社は社内調査の結果、米司法省との間では、制裁金を支払った上で和解合意すると言う戦略をとることになった。

そこで司法省から求められたのは制裁金算定の基礎となるA社製品の米国での売上高だった(カルテル行為を行ったと認定された過去6年間分)。
A社および中国、米国の子会社から米国にあるOEMに直接販売された部品の特定とその売上高は容易に算出できたが、日本にあるOEMに販売し、OEMの機械完成品に組み込まれ米国に輸出された場合のA社部品とその売上額(間接売上)については、A社としては知りようがなかった。

A社にはなんらか役に立ちそうな公式、非公式なさまざまな情報、知見、そしてデータはあるものの、それらをどのように活用すれば米司法省が求めるものを提出できるか思案にくれた。そこで、あなたは弁護士の助言に従って、日米中に拠点を持ち、米国で司法省との交渉経験も豊かなグローバルな監査法人系アドバイザリーB社を活用することにした。同事務所はまた、複雑で種々雑多なデータの統合と分析の専門部門を有していた。

B社は早速A社および中国子会社のさまざまな部門の担当者にインタビューし、分析に利用可能な情報やデータを識別、評価した。それに加えOEMの機械製品分野に詳しい専門チームを通じて、米国市場での機械販売実績の外部詳細データを入手することができた。

B社は入手したStructuredと unstructured dataを統合し、まずはParts tracingを行った。つまり、どのA社パーツがどの各OEMの完成品機械に何点使われているか、それぞれのパーツのバージョン変更の履歴を含め特定し、市場データによる米国での完成品販売情報から、A社パーツの米国での年度ごとの間接販売数を推計した。さらに、A社の販売実績データから得られるそれぞれのパーツの販売単価履歴を算出、過去6年に亘るデータを整理した上で、米国での間接売上推計値を算出した。

推計結果は、A社営業部門が想定していた金額のレンジ内であったと同時に、この方法論と推計の第三者性も米司法省に評価され、制裁金額算定基礎額の合意がスムースに進んだ。

フォレンジックサービスについて

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