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ストーリーから学ぶカルテル事例 第3回

米司法省との制裁金に関する交渉(2)

ある部品メーカーがカルテル事件に巻き込まれるなかで、さまざまな弁護士以外の外部専門家を活用しながら事件を終結するまでをストーリー仕立てで紹介する。第3回は前回に続き米司法省との制裁金に関する交渉についての物語である。

企業がカルテルの兆候を感知した場合、ビジネスがグローバル化している現在、世界各国の独占禁止法や競争法に違反する可能性があるため、当然に各国の独禁・競争法に精通した弁護士を雇うだろう。しかし、事件の解決のためには弁護士以外の外部専門家を活用することが事件終結までの期間と関連費用総額を抑えることに繋がることが多い。

本稿ではある部品メーカーがカルテル事件に巻き込まれるなかで、さまざまな弁護士以外の外部専門家を活用しながら事件を終結するまでをストーリー仕立てで紹介する。
 

背景

A社は機械メーカー向けの基幹部品を製造販売する日本企業である。A社の主要取引先はさまざまな機械メーカー(以下「OEM」という)であり、OEMの製品(機械完成品)は世界の市場で販売されている。A社は主にその製品(機械部品)を日本国内の工場と中国、米国子会社で製造し、複数のOEMの日本および米国の工場に供給している。あなたはこのA社に法務部長として勤務している。

ストーリー3

米司法省との制裁金に関する交渉(2)

<Ability to Pay>

制裁金額算定基礎額の合意はスムースに進んでいた。

しかしながら、合意した算定基礎額を基に米司法省が提示した制裁金の額は多額なものとなった。一方A社の業績はリーマンショックのあおりをうけ急速に悪化し、先行き見通しも芳しくない中、今後発生するであろうクラスアクションへの対応金額を考慮すると、制裁金の支払いをすれば財務的な困難が増大することは明らかであった。

米国においては、制裁金や罰金が支払い能力を超える場合にはこれを支払い能力の範囲まで引き下げることが認められる場合がある。A社は再び弁護士の助言により、A社の支払い能力を米司法省に示した上で、制裁金額の引き下げ申請を検討することにした。 そこで引き続きあなたはB社に対し、A社の支払い能力についての分析を依頼した。

監査法人系アドバイザリーB社の専門家は、A社の財務内容および将来の事業計画、資金繰り状況などを詳細に分析し、司法省が提示した制裁金額を支払った場合の影響を推定した。その結果、同金額を支払うこと自体は不可能ではないものの、支払った場合、市場における競争力を維持するための研究開発投資や設備投資などが不可能となり、また、財務内容の悪化に伴い信用格付の格下げなど資金調達能力が大幅に低下することが明らかとなった。また、市場環境に係わるストレステストの結果、一定の確率で資金繰りに窮するリスクもあることが判明した。B社はさらに、そのような事業継続についての重大な影響が生じないことを前提とした場合、支払い可能な最大額がどの程度となるかについても分析を行った。B社の専門家は支払い能力についての分析をまとめ、会社および弁護士と詳細な打ち合わせを行った。A社は分析の結果を検討し、司法省に対し、制裁金額の引き下げを申請することを決定した。

後日、B社の専門家は、米国オフィスの専門家とともに、司法省とのコミュニケーションについての方針策定についてA社および弁護士に助言を提供し、司法省向けのプレゼンテーション資料を作成した。そして、ワシントンDCの司法省においてA社の支払い能力についてのプレゼンテーションを行った。結果的に司法省はA社の主張を認め、B社の分析に基づく金額を受け入れた。 

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