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ストーリーから学ぶカルテル事例 第4回(最終回)

クラスアクション損害賠償額見積

ある部品メーカーがカルテル事件に巻き込まれるなかで、さまざまな弁護士以外の外部専門家を活用しながら事件を終結するまでをストーリー仕立てで紹介する。第4回はクラスアクション損害賠償額見積についての物語である。

企業がカルテルの兆候を感知した場合、ビジネスがグローバル化している現在、世界各国の独占禁止法や競争法に違反する可能性があるため、当然に各国の独禁・競争法に精通した弁護士を雇うだろう。しかし、事件の解決のためには弁護士以外の外部専門家を活用することが事件終結までの期間と関連費用総額を抑えることに繋がることが多い。

本稿ではある部品メーカーがカルテル事件に巻き込まれるなかで、さまざまな弁護士以外の外部専門家を活用しながら事件を終結するまでをストーリー仕立てで紹介する。
 

背景

A社は機械メーカー向けの基幹部品を製造販売する日本企業である。A社の主要取引先はさまざまな機械メーカー(以下「OEM」という)であり、OEMの製品(機械完成品)は世界の市場で販売されている。A社は主にその製品(機械部品)を日本国内の工場と中国、米国子会社で製造し、複数のOEMの日本および米国の工場に供給している。あなたはこのA社に法務部長として勤務している。
 

ストーリー4

クラスアクション損害賠償額見積

米司法省との和解合意でほっとしたのもつかの間、あなたにはもうひとつの頭の痛い事項が残っていた。あなたの勤めるA社のカルテル行為によって損害を蒙ったと主張する原告団からの訴訟の解決だ。判決まで持ち込まず和解で解決する方針ではあるものの、どのような条件で和解するのが妥当であるかを検討する必要がある。交渉事ではあるものの、和解のターゲットとするレベル、絶対譲れない線というのは決めておかなければならない。また、早期解決を図って必要以上に高い額の和解金で合意したのではないかとの株主からの疑問への説明責任を果たす必要もあり、また、そのような株主からの代表訴訟への備えという意味からも、第三者に損害額として妥当な金額の算定を依頼することとした。 訴訟に耐えうるレベルの客観性、中立性、精密性を有している必要はないと判断し、専門家へ簡易的な経済分析を依頼することとした。簡易的とはいえ、この手の分析はかなり複雑であり、この領域での経験、知見を十分有していなければできない業務ではある。A社はすでに上記2事項の算定を実施したことで事案内容およびA社の情報、データソースに精通した監査法人系アドバイザリーB社の専門チームに引き続き本分析も依頼することとした。

損害額は原則として、カルテルがなかったら(“ナカリセバ”または“but for”)請求していたであろう金額(推定値)と実際の請求金額(実績値)の差額として計算される。B社は、入手可能な内部、外部情報やデータ、本件カルテル行為の影響の様態などを考慮して、米国の訴訟でよく使われるYardstick法とBefore and after法のうち、Before and after法を採用することを決めた。米司法省が認定したカルテル開始時期以前の一定期間をナカリセバ(But for)の基礎とし、その期間のA社の製品群(さまざまな切り口で)ごとの粗利率、原材料価格変化の製品価格への転嫁率などさまざまな要素の回帰分析などを行った。分析結果(つまり、カルテルがなかったら実現していたであろう粗利率や原材料価格の製品価格への転嫁率など)とカルテル期間中の製品販売実績数を基に、カルテル期間中のbut for 販売金額推計値を算出し、同期間の販売金額実績と比較することで損害賠償額の算定を行った。

A社はこの分析結果およびその他の和解条件を考慮に入れながら、弁護士の助言を受けながら損害賠償訴訟の原告団と和解に至った。

 

事案の終結

米司法省からの通知を受け取ってから損害賠償訴訟の和解による終結まで、4年を要した。この間、この分野に精通した米国および日本の弁護士の助言を受けることはもちろん、それに加え、その他の外部専門家を活用することで、結果的に事件終結までの期間と関連費用総額を抑えることができたとあなたは評価している。

フォレンジックサービスについて

企業が事業活動を遂行するにあたり、不適切な会計処理、資産横領、贈収賄、情報漏洩、不正アクセス、知的財産の侵害等の不正リスクが存在しますが、潜在的な不正リスクは広範囲に及びます。また、近年、企業間の紛争は増加傾向かつ複雑化しており、企業は係争・訴訟に関するスキルや経験が求められ、弁護士以外の財務やデータ収集の専門家の活用のニーズが着実に増加しています。デロイト トーマツ グループは、不正リスクに対してガバナンス、リスク評価、予防、発見、調査、再発防止の総合的なアプローチで企業の不正対応を支援します。

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