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ストーリーから学ぶカルテル事例 第1回

社内調査の開始と証拠提出

本稿ではある部品メーカーがカルテル事件に巻き込まれるなかで、さまざまな弁護士以外の外部専門家を活用しながら事件を終結するまでをストーリー仕立てで紹介する。

企業がカルテルの兆候を感知した場合、ビジネスがグローバル化している現在、世界各国の独占禁止法や競争法に違反する可能性があるため、当然に各国の独禁・競争法に精通した弁護士を雇うだろう。しかし、事件の解決のためには弁護士以外の外部専門家を活用することが事件終結までの期間と関連費用総額を抑えることに繋がることが多い。

本稿ではある部品メーカーがカルテル事件に巻き込まれるなかで、さまざまな弁護士以外の外部専門家を活用しながら事件を終結するまでをストーリー仕立てで紹介する。
 

背景

A社は機械メーカー向けの基幹部品を製造販売する日本企業である。A社の主要取引先はさまざまな機械メーカー(以下「OEM」という)であり、OEMの製品(機械完成品)は世界の市場で販売されている。A社は主にその製品(機械部品)を日本国内の工場と中国、米国子会社で製造し、複数のOEMの日本および米国の工場に供給している。あなたはこのA社に法務部長として勤務している。

ストーリー1

社内調査の開始と証拠提出

ある日、あなたの勤めるA社の米国子会社は米国司法省から召喚状を受け取った。その召喚状は質問事項への回答と指示された書類の提出の命令であった。その内容から推測すると、競合他社がリニエンシー制度を利用してA社を含むカルテル行為の申告を行ったものと思われた。あなたはすぐにカルテル事案の経験の多い米国の大手弁護士事務所と、米国独禁法に明るい日本の弁護士を雇った。

米国の弁護士は早速来日すると、A社、日本人弁護士とともにキックオフミーティングを実施。すぐにLitigation hold命令を出すようにA社に指示した。そして、社内の関係者のインタビューを開始するとともに、電子データの保全、解析、レビューを実施する外部専門会社の選定に取り掛かるようあなたに依頼した。

保全対象データが日米中3ヵ国に存在することがわかったため、あなたは外部専門会社選定の基準は、1)この3ヵ国に拠点を有し、各国のデータはそれぞれの国で保全、解析、データホスティングができること、2)3拠点とも同一のレビューツールを有して、レビューアーがどの国にいてもどの国のデータでも閲覧ができること、であった。もちろん、価格も重要な要素ではあったが、各国に十分なリソースを有して迅速に対応ができ、またサービスの品質も信頼できることがより重要であった。あなたと弁護士は、グローバル展開する大手のeDiscovery専門業者およびグローバル監査法人系アドバイザリーを選定対象として、その中から1社を選んだ。

あなたは弁護士のインタビュー状況と案件内容を整理して、カストディアン(対象者および対象事象)の選定を実施。これらカストディアンに関連する情報が社内のどこに存在し運用されているかを把握する「データマッピング」の作成を行った。法務部長であるあなたは、社内の情報システム運用状況や、情報セキュリティポリシーに基づいた紙文書の保管ルールや物理的場所等、平時から意識して可視化共有をしておらず、保全作業に向けた「データマッピング」作成には想定以上の時間と工数がかかってしまった。

それぞれ各国拠点の保全が無事に実施された事を確認したあなたは、委託先の外部専門会社に、保全されたデータは各国内でのデータセンターで強固なセキュリティ下で、データベース運用を徹底するよう指示を行った。
あなたは米国弁護士、日本弁護士そして外部専門会社コンサルタントと詳細かつ綿密な情報整理を行い、保全された膨大な電子データから、必要情報を抽出する為のキーワードを選定し検索を実行。結果50万ファイルの検索ヒットがあり、更なる絞り込み調査のレビュー対象データがファイルとして残った。
限られた調査期間、費用を考慮したあなたは、TAR(Technology Assisted Review)という、総ファイルの中から(このケースではヒットした50万ファイル)、一部サンプルを弁護士がレビューを実施、サンプル結果で文書傾向のパターンを作成し、残りのファイルに人工知能とテキスト読み込み機能が組み込まれたデータベースで機械的にレビューを実施させる手法を検討した。しかし、日本語と中国語での実績が乏しく、再現性の完全性がどこまで担保出来るか証明が難しい、といった弁護士の懸念などから、今回のケースでのTAR利用は断念した。

米国5万、中国10万、日本35万のヒットファイルは、それぞれの言語においてネイティブクラスの弁護士やリーガルバックグラウンドを持つドキュメントレビューアーらで、精査され、『重要』や『関連有り』と仕分けされたファイル群を、あなたを含めた法務部門メンバーと主要弁護士メンバーで最終的なクオリティチェックを実施。

各拠点において提出すべき必要最低限の証拠を、専門会社に提出時に必要なファイル形式で指示し、米国担当弁護士が受領。当局との対応を今後どのように進めていくか検討するべき重要な証拠として社内調査結果の検証を平行して行った。

フォレンジックサービスについて

企業が事業活動を遂行するにあたり、不適切な会計処理、資産横領、贈収賄、情報漏洩、不正アクセス、知的財産の侵害等の不正リスクが存在しますが、潜在的な不正リスクは広範囲に及びます。また、近年、企業間の紛争は増加傾向かつ複雑化しており、企業は係争・訴訟に関するスキルや経験が求められ、弁護士以外の財務やデータ収集の専門家の活用のニーズが着実に増加しています。デロイト トーマツ グループは、不正リスクに対してガバナンス、リスク評価、予防、発見、調査、再発防止の総合的なアプローチで企業の不正対応を支援します。

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