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日米の事例にみる株式価値評価の主要論点

特集1 JCOM決定でどう変わる? ~【決定版】株式の公正価値評価

本稿では、株式買取請求事件において顕著である株式価値評価をめぐる係争について、近年の事例を紐解き、株式価値評価手法の選択や評価プロセスにおける各種の論点について概観する。また、わが国の事件とともに、株式価値評価に係る豊富な事例が蓄積されているデラウェア州の事件を比較検討して、株式価値評価をめぐる基本的な考え方の違いについてもその一部を紹介する。(ビジネス法務 2016年12月号掲載)

記事内容

I 合併価格の採用

株式買取請求事件においては、組織再編等において申立人が裁判所に対し公正な価格の決定を求めるが、結局のところ当事者間で合意された実際の取引価格(合併価格)が公正な価格として認められる場合が多い

最近の事例としては、本年7月、ジュピターテレコム事件の最高裁決定は、「一般に公正と認められる手続により公開買付けが行われた場合には、公開買付けに係る買付け等の価格は、多数株主等と少数株主の利害が適切に調整された結果が反映されたものと言うべきである」から、裁判所は、「上記株式の取得価格を上記公開買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当である」との判断を示した。

このような事例においては、利益相反関係を抑制するための一定の措置が講じられたうえで、第三者機関の株式評価をふまえるなど合理的な根拠に基づく交渉を経て価格が決定されていること、また、公開買付けの場合であれば、適切な情報開示が行われ、多数の応募を得て成立したものであることなどが、合併価格を公正と認める条件として設定されている。

一方、デラウェア州の衡平法裁判所においては、マーケットチェック(第三者評価機関による評価等)と適切な交渉を経たものであれば、独立第三者間の合併価格は実際の企業価値について強力な示唆を与えると考えられているものの、Golden Telecom, Inc. v. Global GT LP事件において、最高裁は、仮に取引プロセスが問題がなく、争点となっていない場合であっても、結論的あるいは推定的に合併価格を重視するよう求めることは、衡平法裁判所が独立的立場から公正な価値の評価を行うべきであるとするデラウェア州一般会社法262条⒣の考え方に反するとの判断を示した。
 

続きは添付ファイル[PDF]をご覧ください。

※本稿において意見に係わる部分は筆者の所属する組織とは関係がなく、筆者の個人的見解である。

 

脚注

池谷誠『論点詳解 係争事案における株式価値評価』(中央経済社,2016)。資料編1によれば,昨年前半までの約10年間
に決定された株式買取請求事件42事例のうち12事例において,合併価格が採用された。
最決平28.7.1。
Union Ill. 1995 Inv. Ltd. P'ship v. Union Fin. Group, Ltd., 847 A.2d 340, 343( Del. Ch. Jan. 5, 2004)
Golden Telecom, Inc. v. Global GT LP, C.A. No. 392, 2010( December 29, 2010)
 

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デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
池谷誠

 

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