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インド企業における不正リスクと防止策

企業リスク 第47号掲載記事

インドは、豊富な労働人口や購買力が増している国内マーケット等により、魅力的な投資先となっている。その一方で、過去10年間、企業の不正事件が増加してきた。本稿では、インド企業における不正事例を踏まえつつ、そのリスクと防止策について解説します。

執筆者

Deloitte Haskins & Sells LLP パートナー Neeta S. Potnis
Deloitte Touche Tohmatsu India Private Limited シニアマネジャー
デロイト トーマツ 企業リスク研究所 主任研究員 木村 秀偉
 

内容

1. インドと不正環境

2. インドにおける「不正」の考え方

3. インドにおける企業不正事件

i) インド最大級の粉飾決算事件  ii) スポーツウェア会社の資金流用事件 iii) 顧客担当マネージャーによる不正事件  iv) その他従業員による不正事件

4. インドにおける不正の類型

5. 不正の発生要因

6. 不正防止策の必要性

7. 不正防止に係る内部統制の確立

i) 統制環境  ii) リスク評価  iii) 統制活動  iv) 情報と伝達  v) モニタリング活動

8. 不正が疑われる事象の発生時の対応と事前準備

9. 終わりに

1. インドと不正環境

インドは、豊富な労働人口や購買力が増している国内マーケット等により、魅力的な投資先となっている。国土面積で世界第7位であり、民主主義国家としては最も人口が多い国である。その豊かな歴史は、インダス文明と歴史的な交易路まで遡ることができる。1947年に、150年間にわたる英国統治の終了によって独立を遂げたが、インドの教育、法制度、そして貿易は、依然として英国の強い影響を受けている。12億人を超える国民が29の州と7つの連邦直轄領にわたって居住しており(2011年の国勢調査による)、総人口の66%が35歳未満という、世界で最も若年人口の多い国である。また、インドは多様性の国でもある。言語と文化は密接に結びついているともいわれるが、ビジネスのコミュニケーションではヒンディー語と英語が使われているものの、インド各地では、主要なものだけでも20を超える言語が使われているといわれる。インド経済は、1991年の自由化以後、2桁成長を続けてきたが、この成長率は過去5年間で鈍化し、2013~2014年期の年間成長率は5.6%となっている。

このようなインドにおいて、過去10年間、企業の不正事件が増加してきた。インド政府の重大不正捜査局(SFIO:Serious Fraud Investigation Office)は、2011~2012年期から2014年6月までの約3年半の期間において、1,080億ルピー(約2,052億円)*1を超える企業不正が発生したと公表している。また、金融機関の規制当局であるインド準備銀行(RBI)に報告された銀行の不正事件の件数は、2009~2010年期からの4年間で46%減少したが、この期間に報告された不正の金額は、実に324%も増加し、2012~2013年期には864億ルピー(約1,642億円)に達した。さらに、国際的な非政府組織であるTransparency Internationalは、177の国と地域で公共部門腐敗の認識水準(CPI)について調査し、報告書を発表しているが、同組織の2014年のレポートによると、インドは第85位であった(最も腐敗が少ない国が第1位となる)。制度面に目を向けると、インドにおける企業活動の基本ルールを規定する法律として会社法があるが、従来の1956年会社法(旧法)には、企業の不正に関する包括的な規定が存在しなかった。しかし、近年の不正事件において、企業のガバナンスと内部統制プロセスの脆弱性が表面化したことから、2013年会社法(新法)では、企業における不正の定義とともに、企業不正に関する取締役等の責任が規定され、併せて内部統制システムや内部通報制度に関する事項も規定されている。

*1 本文中の円貨額は、1ルピー=1.9円、1ユーロ=145円で仮計算した場合の金額を示している。
 

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