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公認不正検査士協会による不正実態調査報告(2016年版)の解説
企業リスク 第53号掲載記事
職業上の不正に関する情報源の一つとして、公認不正検査士協会(ACFE)による不正調査報告があげられる。ACFEは公認不正検査士が回答したアンケートに基づく不正の発生動向の分析として、「REPORT TO THE NATIONS ON OCCUPATIONAL FRAUD AND ABUSE – 2016 GLOBAL FRAUD STUDY」を公表した。本稿では、本調査の主要な項目を筆者が仮訳し、紹介する。
執筆者
デロイト トーマツ 企業リスク研究所
主任研究員 幹 伊津美
研究員 仲 宏太/三橋 桃子
内容
1. 不正による損害額
2. 不正の概要
2-1 不正の類型 2-2 資産の横領のサブスキーム 2-3 不正の継続期間 2-4 不正の隠蔽
3. 不正の発見
3-1 不正発見のルート 3-2 不正発見ルート別の損失中央値及び不正発見までの平均期間
4. 被害組織
4-1 組織の種類 4-2 組織の規模 4-3 小規模組織における不正の手口 4-4 不正事例の業界別割合 4-5 被害組織における不正対策 4-6 小規模組織における不正対策 4-7 不正対策実施の動向 4-8 不正対策の有効性 4-9 不正を誘発した内部統制の脆弱性
5. 犯行者について
5-1 犯行者の職位 5-2 犯行者の所属部署 5-3 共謀の影響 5-4 犯行者が示す行動面における不正の兆候 5-5 不正の犯行者の犯罪歴
6. 事例の結末
6-1 刑事訴追 6-2 民事訴訟 6-3 被害者組織に対する罰金
7. まとめ
1. 不正による損害額
本調査によると、不正事例の損失総額は63億ドルを上回り、これを一件あたりに割り戻すと、損失の平均金額は
2.7百万ドルに上った。また、不正による損失額の中央値(以下、損失中央値)は15万ドルであり、そのうち23.2%
では1百万ドル以上の損失が生じていた(図表1)。標準的な組織は毎年その収益の5%を不正行為で逸失していると考えられる。
2. 不正の概要
2-1 不正の類型
ACFEは不正の類型を、資産の横領(Asset Misappropriation)、汚職(Corruption)、財務諸表不正(Financial Statement Fraud)の3つに分類している。本調査の不正事例全体における発生件数の割合はそれぞれ83.5%、35.4%、9.6%であり、資産の横領が最も高い割合を占めた(図表2)。(複数の類型にまたがる不正も各々の類型にカウントしている。) 一方、損失中央値は、それぞれ12.5万ドル、20万ドル、97.5万ドルと財務諸表不正が最も損害が大きかった。
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不正リスク関連 『企業リスク』掲載記事一覧
デロイト トーマツ 企業リスク研究所発行の季刊誌 『企業リスク』 に掲載された、不正リスク関連の記事をご紹介します。
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