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国際カルテルの経済的インパクト 第2回

民事プロセス-損害立証局面での実務とチーム構築

我が国企業がカルテルの容疑で米国や欧州の当局から近年摘発された事案の多くでは、行政・刑事プロセスから民事プロセスへと移行しつつある。今回は、民事プロセスにおける最大の論点の一つである損害額の立証に係る実務について解説する。(Business Law Journal 2016年9月号掲載)

行政・刑事プロセスから民事プロセスへ―。自動車部品、コンデンサ、海運等、我が国企業がカルテルの容疑で米国や欧州の当局から近年摘発された事案の多くでは、最近になって当局からの多額の制裁金処分が発表され、行政・刑事プロセスは終わりに近づきつつある。しかし、これらの事案の多くは、米国におけるクラスアクションや取引先との交渉など、次第に民事プロセスに移行しつつある。前回は行政・刑事プロセスにおける制裁金などの経済的論点について、当事者が留意すべき点を議論した。今回は民事プロセスにおける最大の論点の一つである損害額の立証に係る実務について、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーのプロフェッショナルが対談を行った。
 

カルテルの損害-米国訴訟における一般的な考え方

岸谷:米国のクラスアクションでカルテル行為を原因とする損害賠償請求が起きた場合、どのような損害の考え方が適用されるのでしょうか?

池谷:一般的な不法行為の損害は、いわゆる差額説の考え方が基礎となります。カルテル(正確には価格カルテル)とは定義上、供給者の合意により本来よりも価格を吊り上げることですから、カルテルがなかった場合に本来形成されていたであろう価格と、実際の価格の差が製品単位当たりの損害であり、対応する数量を乗じることで損害額が得られます。米国においてはクレイトン法4条に則ってカルテルによる損害が議論されますが、基本的にはこのような差額説が採用されています。

岸谷:具体的な算定手法としてはどのようなものがありますか?

池谷:米国で最も一般的な手法は、前後法と呼ばれるものです。時系列的なデータに基づき、カルテルのあった期間となかった期間の価格を比較し、その差を損害として推定します。コンセプトは非常に単純ですが、価格に影響を及ぼす要因はカルテルだけではなく、例えば原材料価格の高騰やインフレ、為替変動など様々であるため、カルテルだけの影響を特定できるような統計的な分析を行う場合があります。また、カルテルの前後で平均価格の差が生じているとしても、それが統計的に有意なものでない場合、損害の立証は困難となります。

岸谷:その他、損害を考えるうえで重要なポイントはありますか?

池谷:通常の市場において、原材料や部品の価格が上がった場合、最終製品の価格がその分上がるかというとそうではありません。ある程度は最終製品のメーカーや卸売業者などが値上げ分を吸収するからです。このような価格転嫁の程度は、市場の構造によって様々です。カルテルの損害は、本来、価格転嫁の影響を考慮する必要がありますが、米国では州によっては、間接的損害を認めないという法的な理由から、価格転嫁の議論が認められない場合もありますので、法的枠組みを検討する必要があります。
 

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(Business Law Journal 2016年9月号掲載)

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